本の話
2009年の東京国際ブックフェアに、お試し会員として版元ドットコムさんのブースに出展いたしまして、それを機に会員となりました。本をいかに読者に届けるか、版元ドットコム会員社のみなさまのアイデアに日々、刺激を受けつつまたはげみとしてやっていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて東京国際ブックフェアには今年も参加しました。今年のドットコム企画の「書店さんへ行こう」キャンペーンでもらった図書カードは、子どもにあげたのですが、この子、もらった図書カードはため込むばかりでいっこうに使わない。すでに5000円ぐらいたまっている。もったいない、代わりにいくらでも使ってあげるのに。親の教育が悪いのでしょうか。
この子、小学校4年生になるのだが、星新一さんのNHKアニメ版に触発されて、氏の小説を読みはじめたこと(学校の図書館からはやたら借りてくるのが、またなんとも)に影響されたのでしょう、私も先日、最相葉月著『あのころの未来 星新一の預言』(新潮文庫)を手に入れて読みはじめました。この本は星新一のショートショートを題材にして、最相さんが思うところを語るという構成になっており、彼女による星新一入門ともいうべき本になっております。
この本に星新一の「ホンを求めて」(『さまざまな迷路』新潮文庫所収)という2ページほどのショートショートが引かれています。本を必要としなくなった人類の未来が描かれたものなのですが、これが最相さんがいうように実におそろしい。出版業界に身を置くものはとくにコワイのではないだろうか。2ページなのでネタばれせずに説明することができないので、ただ読んでほしいとしか言えないのが残念です。ぜひ読んでみてください。
なにが怖いのかというと、おそらく「理由なく、いつの間にか」というところだと思います。このコワさ、一度経験している。記憶をたどると『ペヨトル興亡史—ボクが出版をやめたわけ』(今野裕一書・冬弓舎)を読んだときではなかったか。なぜだか分からないうちに本が売れなくなって、というくだりが妙におそろしいんですね。なんとなくってそれはあまりに無策なんじゃないのか、と営業マンとしては思ったのですが。
劇的な変化というのはじつは、なんという理由もなく、いつの間にかすでにおきている──この出版社社員の実存の危機に打ち勝つために、結論としては、やはり本を買うことしかないのではなかろうか。いっしょに本屋さんへいって、子どもにあの図書カードを使わせよう。早く使わないと、期限が切れちゃうよ、とでも言いながら。