この世界はどうなっていくのか……?
この夏、「闇の子どもたち」と言う映画をみました。衝撃的な映画だったがとても良いものでした。内容は、タイの臓器売買と幼児買春の話でした。まるでドキュメンタリーのような子どもたちの演技が、とても印象的で今でも出演した子どもの顔が目に浮かびます。
幼児売春に売られた子どもがエイズになり、やがてゴミと一緒に捨てられてしまい何とか自力で逃げ出し親元に帰っても貧しい親たちは、病院に連れて行けないまま死んでしまいます。その子の妹は、日本人の子どもへの心臓提供者として売られ、生きたまま心臓を取り出されてしまう。その子の演技とは思えない暗い目が今も消えません。
出版社に入って10年以上たって初めて書店営業をするようになりました。大型書店さんを回って担当者の方に声をかけ営業するたびにドキドキして、ちゃんとした営業が出来たのかどうかかなり心配です。
最初に営業した書籍が『歴史の交差点に立って』、チラシを作りPOPを作ってお願いして回りました。
次は『戦争サービス業』。
内容は、民間軍事会社の実態を明らかにした本です。世界の戦場では、正規軍兵士は影が薄くなり、民間軍事会社の兵士が紛争地域などで戦っています。かつては彼らのことを傭兵と呼んでいたが、今では彼らは会社職員でブルースカイとかジェンリックとかロジコンなどと、およそ軍事会社とも思えないような名前の会社の社員です。そんな彼らが紛争地では、民間人を誤爆に巻き込むような戦闘をしているのが世界の現状のようです。民間軍事会社の職員は、実際の戦闘を担う兵士ばかりではありません。職員のなかには兵器に精通したエンジニアやコンピュータの専門家、翻訳者などさまざまな技能を持った人たちが働いているのです。このような会社は、戦争の技と軍事紛争に関連するあらゆる活動を「サービス」として提供し、国家や団体がこれらの「サービス」にお金を払うということのようです。
アフガニスタンでは結婚式への誤爆などが問題になっていますが、民間軍事会社が戦闘を担う時にはこの責任はいったいどこが責任を負うのでしょうか?
世界は、これまで戦争によるさまざまな犠牲を反省し、各国が批准した条約がたくさんあります。戦争犯罪に対するこれらの条約を守る義務は、民間軍事会社には課されていません。こうした条約や条約を基礎とした国内法を民間軍事会社が守る義務はないのです。だとするとどのような恐ろしいことが起きるのか想像すると背筋が寒くなる思いです。
ぜひこの本を多くの方に読んでほしいと願っています。
戦争サービス業 -民間軍事会社が民主主義を蝕む-
ロルフ・ユッセラー著/下村由一訳
四六判上製 302頁 定価(本体2800円+税)
一番最新の書籍は、『失墜するアメリカ経済』。小社の本では珍しくどこの書店さんでも平積みにしていただいて大変嬉しく思っています。
サブプライムに始まったアメリカの経済危機は、いまや世界的な金融不安へと広がっていることもあり、書店にはこの系統の本が多く並んでいます。この本は、クリントン時代からブッシュまでのアメリカの経済政策をしっかりと分析し、この危機が何に起因しているのかを分析し代替策を提案しています。
日本経済もアメリカの危機の影響をうけ冷え込んでいます。先行きの不安感は、中小零細企業や貧困層に大きくのしかかってきています。このような状況は、小泉政権の下「小さな政府」をうたい文句にしたアメリカ型の「構造改革」を行ってきたことの結果としていま現れてきているように思えます。アメリカの危機は、日本にとっても死活問題となりつつあります。
失墜するアメリカ経済 -ネオリベラル政策とその代替策
ロバート・ポーリン著/佐藤良一・芳賀健一訳
四六判上製 349頁 定価(本体3400円+税)