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この世界はどうなっていくのか……?

この夏、「闇の子どもたち」と言う映画をみました。衝撃的な映画だったがとても良いものでした。内容は、タイの臓器売買と幼児買春の話でした。まるでドキュメンタリーのような子どもたちの演技が、とても印象的で今でも出演した子どもの顔が目に浮かびます。 (さらに…)

韓国映画を見て

韓国映画「ロスト・メモリーズ」を見た。前宣伝の時にSFアクションものだと言うのであまり興味を持たなかったが、娘の借りてきたビデオはなかなか面白かった。
 〈もし伊藤博文が安重根に暗殺されていなかったら〉世界はどうなっていたか? これがテーマ。
 原爆はベルリンに落とされ日本は、アメリカと手を組み戦勝国となった。朝鮮半島は、日本の領土となり人々は朝鮮系日本人として日本の支配のもとに組み込まれている。もちろん朝鮮独立を目指す人々は、地下活動を行い塗り替えられた歴史を元に戻すために戦う。
 SFとはいえ朝鮮系日本人として表現されている人々は、そのまま実際の在日韓国・朝鮮人の状況と通ずるところがあるように思われる。
 韓流ブームの中、年末・年始の海外旅行は韓国がハワイを抜いて1位になっているそうだ。韓国へ行く人たちがどれほど日韓の歴史を認識し、日本社会に住む韓国・朝鮮人の生活状況を把握しているのだろうか? 「未来志向」を目指すことを否定しはしないが、未来を志向するときに過去の歴史認識をしっかりしないと誤った未来になりかねないことを肝に銘じなければならないと思う。
 
 同時代史学会の第3回研究大会が開催され、今回のテーマは「朝鮮半島と日本の同時代史」−東アジア地域共生を展望して−だった。興味ある内容で私も書籍販売員として参加させてもらった。研究会そのものは直接聞けなかったがレジュメを見ると「植民地支配責任」「朝鮮戦争と在日朝鮮人−義勇兵派遣の問題を中心に」等、私としてとても関心のある課題だった。
 小社ではこの「同時代史学会」の年次報告を書籍として出版している。つい先日、昨年の第2回研究大会の報告が刊行された。ぜひご一読を。

同時代史学会 編
占領とデモクラシーの同時代史
四六判上製 244頁 定価(本体2700円+税)
【執 筆 者】福永文夫/大串潤児/荒木田岳/荒敬/深川美奈/雨宮昭一/古矢旬/加藤 典洋/豊下楢彦/安田浩/安田常雄/井川充雄/戸邉秀明

戦争の記憶が消えない

 もう一昨年になるが84歳になる父が、交通事故で頭を打ち一ヶ月間意識不明だった。
その後意識を回復しリハビリの甲斐あってどうにか日常生活を送れるようになった。しかしこれまで80代とは思えないほど元気だった父が、一気に年をとり84歳の老人になってしまった。
 年末年始に久しぶりに父の顔をみると、浮かない顔だ。夏に会ったときには、もっと明るく元気だったがどうしたことだろう。
 食事時や、じっと椅子に座っているときも拝むように手を合わせている。「どうしたの」と聞くと「みんな死んでしまった。」と訳の分からないことを言う。母は、「ニュースでイラクの戦争の事ばっかり言うからこのところ毎日こんな風よ。」
 そういえば、半年かかってやっと退院して家に帰った後も「オレは、地獄に行く」と言い続け家族をこまらせた。「どうして地獄なの」と聞くと「人を殺したから」と言う。戦争で人を殺したことを言っているようだ。正常な脳の働きを失ってから若いときの戦争の記憶ばかりが鮮明に思い出されるようだ。
 農家の5男だった父は、小学校を出てすぐに炭坑で働き、徴兵検査のあとすぐに海軍に徴兵された。そして戦場で何度となく死にかけ、やっとの思いで帰国した。家族には、すでに戦死の知らせが来ていたようで葬儀もされていたとのこと。
 戦後も炭坑で働き、石炭需要が減るなかで炭坑は閉山になり、新たな仕事を求めて鉄工所に勤務した。定年まで勤勉に働き、やっとのんびりと老後をおくれるようになった。年令よりも健康で、趣味もゲートボールや写真、日曜大工と多彩だった。
 戦争の話はほとんどしなかった父が、ここにきて戦時中のことをいろいろ話す。記憶の中で消すに消せない生々しいもののようだ。
 イラク戦争の開始と自衛隊の派遣。戦争をくぐってきた世代が、まだ痛みも消えないうちにまた同じ道を繰り返そうとしている。父にとって戦争は、過去ではなく現在と繋がることのようだ。加害者である父が、未だ忘れることの出来ない戦争。であれば被害を受けた人たちは、より一層忘れることの出来ない歴史であろう。自衛隊の「出兵」を アジアの人たちは、どれほどの不安を抱えながら注目しているのだろう。
 正月そうそう小泉首相の靖国参拝が報じられ、10日には自衛隊のイラク派遣が決定した。いつかきた道をみるようで父でなくても空恐ろしくなってくる。

新刊案内
もうひとつの世界は可能だ
世界社会フォーラムとグローバル化への民衆のオルタナティブ
ウィリアム・F.フィッシャー/トーマス・ポニア編著
監修 加藤哲郎
監訳 大屋定晴/山口響/白井聡/木下ちがや
もはや世界はひとつではない
《多様な運動体によるひとつの運動》
《多様なネットワークによるひとつのネットワーク》
国際投機、福祉・環境、反戦、差別、暴力などさまざまな問題に世界の民衆が立ち上がった。
序文●ネグリ=ハート

衝突の向こうに見えるものは……。

衝突の向こうに見えるものは……。

一冊の写真集を偶然手にした。1960年代の大阪生野区『猪飼野』の風景。人。
パラパラめくると懐かしさと暖かさが胸にこみ上げてくる。
この地は、在日韓国・朝鮮人が多く住む場所。モノクロの写真のなかで、子供たちの顔。ハルモニ(おばあさん)たちの顔があり、凛とした逞しさが映し出されている。決して楽ではない生活。民族差別の厳しいなかで生きる逞しさが笑顔にきざまれている。この笑顔に心うたれる。

9.11以後の世界は、これまで培ってきた世界秩序が一気に変わりつつある。大量破壊兵器の保有、テロ国家と言った「認定」戦争が開始され、『正義』の名の下に多くの罪なき人々が家を奪われ、生命を奪われる。
テレビニュースや新聞は、奪われる側ではなく、奪う側の「正義」を強調する。正しい情報は、新聞やテレビだけでは決して得られない。図書館にブッシュやイラク戦争がらみの書籍をリクエストするとすでに貸し出されている。何人もの人が後に続く。アフガニスタンの戦争の時にも、中村哲医師の講演会に多くの人が、アフガニスタンの本当の状況を知りたいとつめかけた。イラク戦争開始の時も世界中の人が攻撃反対のデモに参加した。
いまだに続くアフガニスタン、イラクの戦争状況の渦中に私たち自身がいることを考えざるを得ない。
世界の人々はこの状況をどのように見ているのか? 日本はどこに行くのか?
さまざまな意見を聞き、自ら考えて行かなければただ流されてしまいそうだ。

衝突を超えて』 −9.11後の世界秩序− 本体3000円
ケン・ブース/ティム・ダン編 寺島隆吉監訳 塚田幸三・寺島美紀子訳 四六判上製
9.11の衝撃を経て「テロとの戦争」が 、ここ数年の世界的課題になりつつある。本書はさまざまな国の学者・有識者32名が執筆。テロ問題、軍事、法律、倫理、国際秩序などの専門家たちである。
内容的は、たとえば、イスラム原理主義による政治支配を「イスラム−ファシズム」と名づけ、アフガニスタンへの報復攻撃を正しいものとし明確に米国政府の肩をもつフランシス・フクヤマの論考。「歴史と9.11」、米国こそが世界最大のテロリストだと主張するノーム・チョムスキーの論考「誰がグローバル・テロリストか」といった論考が多数収録されている。