ジグという名前の版元です。
こんにちは、出版舎ジグの代表社員の十時由紀子です。
通算で29年間、出版社の会社員として書籍や辞書や雑誌の編集部で勤務し、希望退職に手を挙げて退職後2年ほどをハローワークに通いつつ試行錯誤ののち、「ひとり出版社」の開業にたどりついたのが2018年12月。
「ひとりで出版社をやってもいいらしい」と、おそるおそる、決して有能な編集者などでなかった会社員時代の「なにがダメだったんだろう」「どうしてできなかったんだろう」を振り返りつつ、足を踏み出したような形でした。
本をばんばん作っていけるとは思えなかったこともあり、本の種になりネットワークになるようなサイトをきちんとつくっていくことにしています。立ち上げ直後の「日記」(のろのろですが)は、ほんの一年前なのに今読むと自分でも苦笑します。ジグって何ときかれる、その理由もこちら。
「ジグ日記」ジグとロゴ(2019年1月10日)
「ダメ」と他から言われることなく、「できない」と思い込むことなく、本を作って売ってみる、ということがとにかくやりたくて、それが生業としてどの程度で成立するのかは、1年2年のうちに自分で納得できればいいや、という一歩でした。有名人でもない書き手、取り立てて今のタイミングで売れ筋でもないテーマ、でもこの人の見ていること・見てきたこと、その言葉を本の形にしたい、本にできる、と思ったら動きたい。「動きたい」と思う自分のアンテナに根拠があると思える間は、今後もそれしか方針はないだろうと思っています。
完全分業体制だったかつての勤務先とちがい、もちろん役員が自分なので部数も定価も、原価率も営業計画も自分で「これくらいなら、とんでもなくは、ないかな」というラインで線を引き、デザイナーにはめいっぱいお力をお借りし、やっと1年で2冊を刊行しました。
最初の本は、アイルランドの小さな村に暮らし、音楽や衣食住がローカルな根っこを持っている、そのようなコミュニティに分け入って根を下ろして日々を重ねている、女性の現在進行形の記録。
『見飽きるほどの虹』
もう一冊は、迷いに迷いながら農的暮らしをスタートし、さらに悩んで南北アメリカをひとりで自転車縦断した女性の旅日記。まさに満身創痍の七転八倒、初々しくもけなげでもあり、無敵に真面目。
『なないろペダル』
これらが最初の2冊だということが、光栄です。
じつは会社立ち上げ初年度の後半は、本作りより受験勉強をしていました。出版となんの関係があるの、とこれまた怒られそうですが、社会福祉士の資格が欲しくて、通信で2年勉強して受験資格をとり、2月2日にやっと試験終了。合格発表は3月なので宙づり状態ですが。
とにかく、本を作るためにも、自分の根のありかを、どうしてももっともっと見つめ直したかった。
学者先生やジャーナリストの言葉だけでは物足りなくて、ソーシャルワークの領域に足を突っ込みたいのです。だから、これからの本作りには、音楽や旅にくわえて、縮小社会日本のリアリティをぐっとこめてまいります。
版元ドットコム諸先輩の皆様、今後ともよろしくお願いします。
サイトも、ときどき覗いてください。