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地域土着ヒーロー、やまとマンは不滅です!

お世話になっております。商業界の三浦と申します。
版元ドットコムでは、書店FAXをはじめ、メーリングリストや入門講座でも
いろいろと学ばせていただき、とても助かっています。
エクセルのピボットテーブルも使えるようになり重宝しています。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、「版元日誌」を書く機会をいただき、ありがとうございます。
何を書こうか迷いましたが、ありがたく新刊の紹介をさせていただきます。

小林 久・著 『こうして店は潰れた 地域土着スーパー「やまと」の教訓

著者は、山梨県韮崎市にあった「スーパーやまと」の元社長、小林久さん。
大正元年に魚屋として創業し、小林さんは三代目でした。

2017年12月6日早朝、倒産劇は一本の電話から始まりました。

「やまとが今日倒産するという話が市場で出ている!本当なのか?」
「社長、今日納品予定の商品が入ってきません!」
「社長、魚屋からも納品がありません!」
「米問屋が売場から商品を引き揚げています!」

年末のかき入れ時にもかかわらず、突然の全店営業停止。
業績も4年ぶりの経常黒字で推移していました。それなのに、突然の倒産。

スーパーやまとの信条は、“地域土着”です。

高齢者の暮らしを支えるために採算が取れなくても移動スーパーを走らせ、
頼まれればシャッター街にも出店。経営が立ちいかなくなった他店があれば、
従業員の雇用も含めて引き継ぎました。

「頼まれたら、選挙以外は断らない」という小林さんは、
家庭の生ゴミをポイント付与で買い取って堆肥化したり、レジ袋有料化に先鞭をつけたり、
ホームレスを雇用したり、山梨県の教育委員長になったり、
ヴァンフォーレ甲府のスポンサーになったり・・・、
ここでは書き切れないぐらい、地域のためにいろんなことをやってきました。

そうやって地域に愛されつづけたスーパーやまとが、
なぜ倒産しなければならなかったのか。

帯には、全店営業停止の当日に取材に訪れた、地元新聞の記者の言葉をお借りしました。

――――
女性記者がいった。
「私はやまとさんが閉店してしまうことが悔しいです。
これまでお年寄りをはじめ地域のために
頑張ってきた会社が潰れてしまうなんて悲しいです」
彼女の目から涙がポロポロこぼれていた。 (本文より)
――――

この方が感じたような「悔しさ」や「悲しさ」を、
大切にする世の中であってほしいと願わずにはいられません。

本書の発売にあわせて、なんと閉鎖されたスーパーやまと富士見店の店頭で、
小林さんみずから本書の即売会を行なってくださいました!

立ち会った編集担当の笹井によれば、地主さん、お客さん、元従業員、競合企業に
お勤めの方など、小林さんを慕う方々が引きも切らず訪れました。
本を買うのは理由の一つで、小林さんの元気な姿が見たくて訪れているようでした。
購入特典として用意したのは、やまとの買物かご、スタッフジャンパー、タオル。
2日間で400冊が完売し、収益はすべて債権者への返済に充てられるそうです。

地域に困った人がいれば、すぐに手を差しのべる――。
そんな小林さんに付けられた愛称は、「やまとマン」。

スーパーマンのコスチュームに似ていますが、
やまとマンはどちらかといえばアンパンマンだと思います。
お腹を空かせた子どもに顔を食べさせて、フラフラになっているアンパンマン。
溺れている誰かを池から救い上げ、「顔がぬれて力が出ない…」と膝をつくアンパンマン。

アンパンマンにはジャムおじさんやバタコさんがいて、新しい顔を作ってくれます。
やまとマンにも、やまとマンを応援し、再起を願うたくさんの方々がいらっしゃいます。
倒産直後にツイッターなどで上がった声を本書から引用します。

「やまと、これまでありがとう! どこもよいところなかったけど大好きだった!」
「子どもの頃から親しんだやまとがなくなるなんて寂し過ぎ。お母さん朝から泣いている」
「山梨県民にとって、ヴァンフォーレ甲府がJ2に降格したのと同じくらいショック!」
「移動販売車に命をつないでもらっている高齢者はどうする? 行政なんとかしろ!」
「あのチャラい社長のことが心配、大丈夫かな(泣)」

写真は、やまとのジャンパーを広げる小林さん(左)と債権者でもある地主さん。
債権者ですが、やまとマンの大ファンだそうです(笑)。
みんなの呼ぶ声に応えて、やまとマンが再び大空を駆ける日はそう遠くありません。

地域土着ヒーロー、やまとマンは不滅です!!

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