この不況に出版社やるなんてさ、業界に風穴をあけようとか思ってんの?
逆旅出版(げきりょしゅっぱん)の中馬さりの(ちゅうまんさりの)です。
「逆旅」というのは「宿」を意味する古語。
旅人にとっての宿のように人生の分岐点や目的地になり得る本を作っていきたい――という思いを込めて2022年4月に創業しました。
といいつつも、2年経った今ようやく「逆旅らしさ」を考える余裕ができたぐらいで、全くの未経験者が始めたひとり出版社。
創業時は、
・どんなスケジュールで本を作っていくのか
・どこで印刷してもらうのか
・どこに卸してもらうのか
・倉庫は借りるのか、借りるとしたらどこに依頼するのか
などなど「出版社を始めるなら知っていて当然の知識・揃っていて当然の常識」が何一つなく、とにかく周りの人の力を借りて、手探りでやってきました。
試行錯誤の1つとしてあげられるのが、「クラウドファンディングによる出版のイベント化」です。
創業前、私が主軸にしていたのはWebライティングやWebメディアの運営代行といったWeb業界でした。
前日に取材した内容を翌日に公開し、1日限りのランキングで評価が決まり、来週には非表示になっていることも少なくないWeb業界。半年から1年をかけて作り、数年にわたって売り続ける出版業界がキラキラして見える一方、「在庫リスク」と「キャッシュアウト」がとにかく怖く感じました。
刊行の経験数が圧倒的に少ないうちは、どれだけ売れるかの検討もつきませんし、いつ入金されるかの知識もありません。
そこで、Web業界ではポピュラーだったクラウドファンディングを使って、刊行前に「買いたい」と言ってくれる方々を募りました。
クラウドファンディングは好きな時期に開催できるため、そこでの受注数を見て初版部数を変動させています。また、クラウドファンディング終了後の翌月辺りには入金があるため、印刷費用や印税に当てることができ、キャッシュアウトのリスクを大幅におさえられました。
なにより大きかったのが「出版のイベント化」です。
クラウドファンディングで支援をしてくださった方々には、活動報告と評して、制作の様子をメールなどでお知らせできます。本を作る過程って珍しいですし、ワクワクする部分が沢山あります!それをシェアすると自分事のように喜んでいただけて、作っている側も嬉しくなりました。
また書籍だけをお渡しするのも寂しいですから、刊行イベントをクラウドファンディング開催時に設定して、「参加チケット+書籍で○○○○円」という形でお知らせしました。せっかくだからと遠方から足を運んでくださる方もいて、出版そのものを著者や読者と皆で楽しめています。
また、まだまだ模索段階なのですが、今後は各種SNSでの発信にも力を入れていきたいと思っています。
逆旅出版のInstagram
逆旅出版のX
逆旅出版のFacebook
また個人的に私は「一人旅」がとても好きで、女一人旅をテーマにしたYouTubeをずっとしていまして……。
この版元日誌を書かせていただいたことをきっかけに、ずっとやりたいと思っていたひとり出版社の奮闘記のチャンネルも開始しました!
逆旅出版のYouTube
さり【アラサーひとり出版社の奮闘記】逆旅出版
時間の捻出が課題なのですが、なんとか動画を編集している段階です。
ぜひ応援などしていただけますと幸いです。
出版社同士での対談などをして、より作り手を読者の方々に身近に思ってもらえればとも考えていますので、出演OKという方からのご連絡があればとても嬉しいです!
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ところで、タイトルの
「この不況に出版社やるなんてさ、業界に風穴をあけようとか思ってんの?」
というのは、創業当初にアドバイスをくださった複数人からいただいた言葉です(笑)。
今回初めて「版元日誌」を書かせていただいたので、ちょっと刺激的なタイトルの方が見てもらえるかなと、そのままタイトルに使わせていただきました。
この言葉をかけていただいたときは想像すらしない発想で、
「ええぇ~~! その既存の業界が作った本に育ててもらって今があるのに??!」
と心の底から驚き、今も記憶にこびりついています(笑)。
ですが3期目を迎える今になって、上記でお話させていただいたようにそこそこ試行錯誤をしてはいるつもりだけれど、「風穴なんてとんでもない!」と思うならまだまだで、もっと新しい発想や時代にあった作戦を取り入れていくべきなのかも……などとも考えられるようになりました。
まだまだ伸びしろばかりの逆旅出版。
これからも創意工夫していきたいと思います!