“遺す本“を作りたい。
長年勤めた情報誌系の出版社を3年ほど前、50過ぎで退社しました。
やめるきっかけは色々。
子どもが社会人になったこと、編集部が縮小され続けていること、
納品売上に頼る出版計画になってきたこと、などなど。
その上で本来もつ本の魅力をもっと広めたい気持ちもひろがり
少し前に亡くなった父のことも含めて何かできないかと考えるようになりました。
父は昭和一桁台の人で、戦地にはいかずとも徴兵された経験がありました。
その時のエピソードや、戦前戦後を生き抜いた人としての経験談は今も心にあります。
ただ写真や記録などは一切ありません。戦争ですべて残されていませんでした。
なので話を聞いた私や、私の子どもたちくらいしか、もうその記憶が残っていないのです。
話は変わりますが、これまで長年制作に携わってきた本は情報誌が多く、週刊誌もあれば
月刊誌、MOOKなどで、それらの本は言うまでもなく情報の有効期間が終わると廃棄されます。
もちろんそれが正しい取り扱いで、記念にアーカイブしてくれている人もいますが
ほぼ資源廃棄です。
作っているときはあまり感じなかったのですが、今、これまで関わったそれこそ数百に近い本は、ほぼこの世に存在しないのです。その現実です。
ただ、ちょっとしたきっかけで作った一冊の”絵本エッセイ“。
その本だけは未だに、目にすることがあります。
息の長い本になっているようで、本の持つ意義の一つを考えるきっかけになりました。
話は戻りますが、そこで思ったのが、父の記憶を残す手立て、といつまでも置いてもらえる本の存在、その両面を生かした出版を事業化できないか、と考えて立ち上げたのが小さな出版社、ルアナパブリッシングなのです。
編集の仕事は好きです。校正等は苦手ですが…
本の力で、自分の軌跡、親の思い出など人生の歴史を、残したい、伝えたい。
一方的で自己満足な自伝などではなく、生きた証をきちんと伝える本を作っていきたい。
そしてすべての世代に本の魅力をもっともっといろんな形で広めたいと思っています。
その手段として、絵本エッセイを中心に考えて企画しています。
そして、本を作ったり配ったり紹介したりするだけではなく、本に込めた”想い”をコンテンツとして残し、“継ぐ“”広げる“”遺す“ことも考えていきたいと思っています。
本の魅力の一つはビデオや音声と違って、機器がなくてもすぐに読めること。
部屋に置いて読みたいときにすぐ手に取れます。インテリアにもなること。
そんな魅力も訴えつつ、「遺す本」を作っています。
個人のお客さんからの依頼、法人様からの打診、そして自社出版物も、そんなコンセプトで
発刊しています。
その一つがこの絵本エッセイです。
あるちょっとした特徴のある方の気持ちを遺したいと、素敵な絵と文で一冊にしました。
それがこの一冊です。
「ふつうとか みんなとか。」
イラストエッセイ B6スクエア 4Ⅽ 48p
ふつうって何ですか?考えたことありますか?ふつうは平均?はみ出さないこと?変でないこと?夫々が感じるふつうとみんなについてのエッセイです。
機会があれば是非読んでみてください。
まだまだこれからの会社です。
ライターさんやイラストレーターさん、同じ出版を行っている人ともっとつながって広げていければいいなと考えています。よろしくお願いいたします。