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電子書籍出版における選択肢とは

2019年12月にフリードゲート社を立ち上げ三年が経とうとしています。
異業種参入として事業を開始した際、第一に着手したのは電子書籍の販路獲得でした。

一般文芸のジャンルで電子書店といえばアマゾンKindle一強体制ですが、我が社が手掛けるライトノベルやコミック分野では、アマゾンさえも「主要書店の一つ」という立ち位置で、複数の強力な電子書店同士が激しい競争を繰り広げており、群雄割拠の戦国時代を彷彿とさせる状態です。(一方で小さな電子書店も数多くあり、新規参入も増え続けています)

「電子書店」とひとまとめに言いますが、それぞれに強いジャンルがあり、会員層、販売方針、支払条件、施策案件についても多種多様。さらに書店だけでなく、出版社と書店をつなぐ電子取次会社も、メディアドゥやMBJといった大手はもちろん、制作系取次や配信代行会社などが多数存在し、ある意味混沌としています。

電子出版業という新しい業態であればこそ、混沌とした前途の中にキラキラした宝石の欠片のようなチャンスが落ちている――それが、事業を開始した時の第一印象でした。
明らかな商習慣やマニュアルが存在しないがゆえに、自分自身で一つ一つ選びとっていく過程はとても楽しく、振り返ってみると本当にあっという間の三年でした。

そこで今回は、弊社の事業基盤の一つとなっている「電子書籍出版」に関してお話してみたいと思います。

皆さんが「電子書籍を販売したい」と思われた時、販売方法の選択肢は大きく分けて三つあります。
1. 直接販売
2. 取次会社を通しての配信
3. 配信代行会社の利用
この三つの販路にはそれぞれメリット、デメリットがあるので、企業として(あるいは個人として)「何を目的とし、何を優先事項とするのか」によって選ぶべき選択肢が変わってきます。

それぞれの内容について簡単に説明すると、
1. 個別契約が結べる電子書店と契約して販売する方法
Kindle(アマゾン)、Kobo(楽天)、GooglePlayブックス(グーグル)、iBook(アップル)など

【メリット】出版社に入る手取りが高い。
【デメリット】販売できる書店が限定される。販売方法に制限があり、キャンペーンなどの実施も限定的。グーグルやアップルは手続きが煩雑なうえにレスポンスが悪い。(「連絡が取れない」と言っても過言ではない)

2. メディアドゥ、MBJ、制作系取次などを通して販売する方法

・メディアドゥおよびMBJの場合
【メリット】国内のほぼすべての電子書店で販売が可能になる。キャンペーンの実施、バナーでの露出などの施策展開が可能になる。
【デメリット】出版社に入る手取りが低い。

・制作系など中小取次の場合
【メリット】出版社に入る手取りが高い。
【デメリット】配信可能な電子書店が少ない。キャンペーンの実施やバナーでの露出ができない。販売方法などに制限がある。取次に支払う会費や手数料が発生したり、書籍制作の委託が条件になったりする。

3. 配信代行会社経由で販売する方法
【メリット】出版社に入る手取りが高い。配信可能な電子書店が多い。取引基準が緩い(契約締結しやすい)。
【デメリット】キャンペーンの実施やバナーでの露出ができない。販売方法などに制限がある。会社によっては出版社の手取りが低い場合もあり。

実は我が社は、1・2・3の全ルートを試してきました。
もちろん最初から全てにチャレンジするつもりだったわけではなく、いろいろ試しているうちに結果としてコンプリートとしていた、ということなのですが、おかげで見えてきたものがたくさんありました。

取次や配信代行会社に関してはこれまで5社と取引してきましたが(現在は2社)、電子書店ごとの特徴や販売戦略、支払条件等の差異について、1社だけと取引していたら把握できなかったような様々な内容を知ることができました。
ある意味、遠回りし紆余曲折したといえる過程なのですが、それゆえに得た知見は非常に重要なものだったと思っています。
とくに書店からの戻し料率は、取次や配信代行会社によって様々なので注意が必要です。
「取次A社はX書店の料率が高く、取次B社はY書店の料率が高い」といった事は当たり前で、取次によって大手書店の料率になんと2倍(!)の差があった、というのも経験済みです。
何も知らないまま最初に契約した会社でだけ取引していたら――と考えると怖いものがあります。

そして、電子書籍を配信する販路が決まったら、次に書籍の制作が待っています。
小説であればEPUB(フリロー型)という規格で作品を作ることになりますが、ここでも分かれ道が存在します。それは、
1. 制作会社に委託する
2. 自社で制作する
という二つの選択肢です。

1の場合は、なるべく安い価格で質のいいサービスを提供してくれる会社を探すことが大事ですし、2の場合は、自社で制作するために最適な環境(ソフトの購入や企業との提携など)を準備することが重要になってきます。
基本的には、出版する作品が多いほど「2」を選ぶべきではありますが、会社ごとに状況は様々ですので、費用対効果や制作に割ける時間なども考慮しつつ、どちらを選ぶか検討されるとよいでしょう。

ここまで電子書籍を出版するために必要な最初の2ステップについて書いてきましたが、これらのハードルを越えた後も、さらに幾つもの分岐点が存在し、取捨選択すべき内容が待ち受けています。

どんな事業も、人生も、ある意味こうした選択の連続なのだと思いますが、同じ「出版」という世界に身を置くものとして、これから皆様が選んでいかれる道程がやりがいに満ち、多くの喜びに出会える前途であることを願っています。
そして、我が社が経験した当プロセスが少しでも皆様のお役に立てれば嬉しい限りです。

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