誤植発見! そのとき読者は……
誤植を見つけたとき、あるいは本を読んでいて疑問に思ったとき、どうしますか。また、問い合わせをもらった版元は、どんな対応をするとよいのでしょうか。
今回は、私が実際に読者として経験したことと、版元として経験したことをもとに、そんなことを考えてみます。
1.「誤植のない本はない」と言うけれど
最近、資料として購入した書籍に、誤植かなと思うものを見つけました。
編集者・校閲者は誤植のないように細心の注意を払って書籍を作っているものですが、それでも「誤植のない本はない」と言われてしまうくらい、やはり生じてしまう可能性の高いものです。その書籍は大手出版社から刊行されており、大ヒットしたアニメ映画について書かれたファンブックでした。何人もの目でチェックされているはずですが、年代など総合的に考えると、そこにある文字は間違っているはずでした。
さて、ここでふと、手っ取り早くこの部分を写真にとってSNSに投稿し、「どなたか詳細知りませんか〜?」と呼びかけることを思いつきました。
最近たまに見かけますよね。誤植への疑問を投稿して、版元や担当者のアカウントからの反応、あるいはフォロワーなどから答えをもらおうとするもの。しかし、もし不確定な私のこの疑問の投稿がいつの間にか事実として回ってしまったら、誤植でなかった場合、その版元に迷惑をかけてしまいます。また、リプライをくれた方が間違っている可能性も否めません。そんなリスキーな投稿をするより、出版社に尋ねてしまった方がよほど確実だと思い直しました。
2.版元の対応は?
さて、誤植かもしれない部分はどこに尋ねたらいいか、まずは奥付で版元を確認。そこのHPを見ると問い合わせ先が書いてあったので、そちらに指摘部分の詳細と、誤植ではないかと思う理由を載せてメールしました。もし担当編集者がわからなくても、著者に確認を取っていただければわかることです。
そして約一週間後。お返事に書いてあった回答は、「刊行から年数が経っており、担当者がいないので、お答えできません。」……ズコーッ。そんな対応パターンが……大手さんは人事異動なども頻繁ですものね。それでも自分のところで刊行している書籍。刊行から年数が経っていると言っても10年も経っていません。いまだ多くのファンがいるアニメ映画についての本で、読者もそれなりにいるはず。いくら担当がいなかったとしても、アニメ映画の大元に確認をとるなど、何かしら手段があるのではないかしら。情報として怪しい部分は徹底的に確認して頂きたかったというのが、読者としての本音でした。そして自分だったらどうするかと、今度は出版社の人間として考えました。
3.それでもまずは版元へ
私は版元の人間だからまだしも、読者としてこんな経験をしてしまうと、だったらSNSで聞いてしまった方が早いのではないか、明確な答えが得られるのではないかと思ってしまうかもしれません。
しかしながら版元側に立つと、読者の皆様にはSNSに投稿する前に、やはり一度は出版社へ問い合わせてほしいと思います。もちろん、読者からご指摘を受ける時は、胃が痛い。その指摘が正しければ、買ってくださった読者の皆様や、著者にも申し訳ないです。
それでも、読者が真っ先にSNSに投稿することには先程書いたようなリスクもありますし、直接をご指摘いただければ、こちらとしても貴重なご指摘を次につなげる機会になります。
本は作って終わりではないと言われてきました。書籍を刊行した版元として、できる限り読者の皆様にご納得いただけるような対応をすることも編集者としての仕事、出版社の仕事、本を出す側の責任だと思っています。
できるだけ誠実に対応し、こうした指摘などの問い合わせから読者と版元の距離が縮まることも祈っています。SNSの方が気軽さは優ってしまいますが、確実性は版元への問い合わせであるということが、読者の皆様に通じるようになったらいいなと思います。そしてできる限り、誤植のない本を目指して、本づくりを精進していくつもりです。