ひとりだけど、ひとりじゃない
今年1月に起業した”ひとり出版社”「仙波書房」代表の神谷利一と申します。
「仙波書房」は川越市仙波町に約30年住んでいたことから「仙波」の名をとり、命名しました。
それと、地元では仙波の名の由来となったある僧侶が拡げた袈裟が陸地になって、今の仙波の地になったという話が残っています。
それにあやかり本を通して、知識や情報が拡がり、その知識や情報を介して、結果的に人々の役に立つようになれば、という想いもあります。
仙波書房は企画、取材、編集、組版、営業、管理業務といった出版に関わる全業務をひとりで行う”ひとり出版社”で、出身地である川越の近代建築を紹介する『川越の建物 近代建築編』という本を5月末に発行しました。
『川越の建物 近代建築編』は、川越市内にある近代建築21箇所を紹介する建物本です。
建物に興味がある人は限られるため、幅広い層に支持してもらえるよう建物紹介ページの扉絵を写真ではなくイラストにしました。
このイラストも一般的な水彩画、ペン画ではなく、アニメーション制作会社によるプロの背景画を多数配置しました。
これは川越を舞台にしたアニメーション『月がきれい』の映像美に感動し、制作会社「feel.」に相談をしたところから、企画がスタートしました。
老舗背景制作会社「プロダクション アイ」を紹介いただき、提供されたイラストはタッチ、空気感と素晴らしく、魅力的なイラストです。
是非、本を片手に川越の街歩きを楽しんでほしいと思います。
さて、取次、書店をまわり、新聞に広告掲載して…というのが出版社における一般的な営業、告知の方法ですが、仙波書房は”ひとり出版社” 代表ひとりなので、営業力、発信力が限られています。
優先順位を付けて動くにしても限界があり、正直諦めムードもありました。
「できないのではなく、どうしたらできるのかを考える。それも本気で。」
これは出版社勤務時代にM&Aがあり、親会社からの新しい上長が語っていた言葉です。
どうやったら商品を認知してもらい、多くの人に届き、それが販売に繋がるのか。
その流れをつくることは運でなく、仕掛けが必要と考えます。
どうすれば自分の想いが多くの人に伝わるのか、本気で考えることにしました。
そこで、仙波書房では従来の書店・取次営業だけでなく、本の舞台となった川越のコミニュティラジオ局にゲスト出演し、本の宣伝を行いました。
ちょうど本の発行3ヶ月前に開局したラジオ局で、様々な番組内にゲスト出演し、本と地元「川越」の魅力を伝えまくりました。
パーソナリティ、リスナーなど人との縁もあり、ラジオへの出演回数は10回を超え、ラジオ川越の最多ゲスト出演者になり、NHKさいたま放送局 他、多くの番組に出演し、紹介を行うことで、多くの方に本の魅力を伝えることができました。
また、ラジオ放送に合わせ、Twitterと連動し、情報の拡散を行いました。
そのことが起因したのか、ブックファースト ルミネ川越店では書店レジ前に『川越の建物 近代建築編』が山積みされることになりました。
出版社としてデビューしての1冊目は普通認知度が低く、棚差し1冊が考えられるところ、店長の粋な計らいで、映画化された某大人気のコミックスを横にスライドさせ、レジ前に5面平積みの大きな山を築くことができました。
「ブックファースト ルミネ川越店」ではレジ前に多面平積みに…
画像は在庫補充前の山が低い状況
初速も良く、発行3日で初期納品の30冊が完売しました。
販売実績としても良好だったことから書店の入るルミネビルの協力があり、ビル内の壁面を利用したイラスト原画展(『川越の建物 近代建築編』扉絵のイラスト)を開催する他、別フロアのロフトでは扉絵のイラストを用いたポストカード、クリアファイルの販売に繋げることができました。
書店だけではなく、ビル全体の協力・応援の甲斐もあり、本はその後も追加納品を重ね、現在まで累計250冊を納品し、書店一店舗だけで約200冊の販売に繋がっています。
一時的、一店舗での集計にはなりますが、ブックファースト ルミネ川越店 総合ランキングでは1位になることができました。
ラジオとSNSとの相乗効果と、販売実績からの波及効果を強く感じています。
ちなみに多面陳列の面数の多さだと、「紀伊國屋書店 川越店」の平積み8面+面陳3面=計11面陳列を達成しました…
これは出版社での営業経験上初のことで、大変嬉しく感じております。
「紀伊國屋書店 川越店」では平積み+面陳で計11面陳列!
さらに新聞4紙(読売、東京、朝日、埼玉新聞 掲載順)に掲載され、それがラジオ、SNSとは異なる客層にも届きました。
「埼玉新聞」 ( 2021年7月10日掲載)
結果、本の販売の他、それを見た企業からのブログ記事掲載依頼が多数と、イベントタイアップにも繋がっています。
イベントは川越駅前「川越マイン」にて、本のイラストを用いた原画展を開催中です。(今年11月末まで)
川越マイン展示 (イラスト原画と川越の情景模型作品)
さて、私は趣味で模型作家としての活動も行っています。
作品には川越の建物をテーマにした情景作品もあり、川越を代表する「時の鐘」や、川越市内に残る近代建築を手のひらサイズの情景作品に仕上げています。
作品はイベントでの展示の他、箱根にあるドールハウス美術館でも半年間展示されました。今回は川越マインでの原画展開催に合わせ、川越の情景模型作品展示も同時開催しています。
模型作品の展示や、情報を発信するのは模型雑誌の出版社以外はないかもしれませんが、仙波書房では本のコンテンツ以外にも複合的な情報の発信を行っています。
川越の情景模型作品
時の鐘(左上) おびつ玩具店第二売場(右上) 川越スカラ座(左下) 第八十五国立銀行 本店(現 埼玉りそな銀行 蔵の街出張所)建築風景(右下)
その他、特撮イベントの後援企業として招かれ、イベント冒頭の挨拶や、審査員など担当する機会がありました。
それから、10月には本を利用した街歩きイベントや、カフェでのイベント開催に併せ、講演も予定もしております。
これらのイベントはコロナ禍のため、オンライン開催が中心になりますが、本を片手に街歩きを楽しむ様子が映像から少しでも伝われば、と思います。
このように仙波書房は自ら考え、発信し、そこから繋がった様々な方の応援、協力があり、”ひとり出版社”とは思えない、活動になりました。
「仙波書房はひとりだけど、ひとりじゃない」
出版社勤務時代には想像できなかった営業、告知方法を用いて、常識にとらわれない出版社活動は楽しく、出版社起業の喜びも感じます。
『川越の建物 近代建築編』が予想以上に好評なので、近代建築編の続編本、川越市内に存在する蔵造りを紹介する建物本、それと様々な時代の地図で川越を巡る古地図本など、新企画を準備中です。
出版社としてのメディア掲載や、イベント参加につきましてはリンク先を掲載しますので、よかったらご覧ください。
会員の皆様、今後とも仙波書房をよろしくお願いします。
■仙波書房 ラインナップ
- 『川越の建物 近代建築編』 (好評発売中)
- 『川越の建物 近代建築編 其ノ弐』 (2022年発行予定)
- 『川越の古地図 歴訪散策編』 (2022年発行予定)
- 『川越の建物 蔵造り編』 (2023年発行予定)
川越の情景模型作品(上段)と『川越の建物 近代建築編』扉絵イラスト(下段)