ジミチに歩む知道(ちどう)出版より
こんにちは。私どもは知道(チドウ)出版と申します。
小社は、この「知道」という名称で30数年やっておりますが、なかには「ジミチ」と読まれる方も少なからずおられるようで、なぜか「あのー、ジ(チ)ミチ出版さんですか?」と電話でお尋ねになることもしばしばです。読者の方ならいざ知らず書店さんに間違われることもあり、いささか閉口しています。
それにしても「知道出版とはまた変わった名前ですね
と、ときどき言われますが、その名の由来は、創業者の郷土愛からきています。茨城県は水戸の出身で、旧制水戸高校を卒業し、母校のOB会の名を借用しました。それが「知道会」。当然、愛校心、結束力が強くてプライドも高い、それに負けん気も……いわゆる水戸っ子です。
この創業者がリタイアしてすでに13年がたちました。一応、「書道書」の出版社としてそれなりに歩んできましたが、最近は書道の分野以外の刊行図書が増えてきました。やはり書道を取り巻く環境が変わってきて、かつてのように書道書だけではなかなか厳しくなってきたからです。
近頃では自費出版も含めて健康医療や占い、スピリチュアル、美術書などの分野が増えてきました。それにしてもときどき不思議なご縁で刊行の運びとなる本もあります。
たとえば夏に刊行した『大野一雄最期の四年―横川美智子素描日記』(著者:横川美智子・本体2400円)
は、世界的に有名な舞踏家である大野一雄さんの最期の4年間を、病室に通って素描した画家の横川美智子さんの日記風の素描記録です。
この本は紆余曲折を経て私どもから刊行の運びとなったのですが、狛江市にある一面識もないお寺の住職さんが全くのボランティアで走り回って下さり、私どもと著者を繋いで下ったのです。後でお寺を訪問したところ、山門の入り口にある石塔の文字は、私どもの書道の著者が揮毫したものだったことがわかりました。住職も後で知って驚いたそうです。「きっと亡くなられたこの書道の著者がご縁を作ってくれたのではないでしょうか
と、笑いながら話してくれました。
また、昨年春に限定刊行した『香道賤家梅(全十五巻別冊付録付)』(こうどうしずがやのうめ・牧文龍識書・)は、寛延元(1748)年刊行の当時の総合的な香道全書の復刻本です。私どもがお世話になっている税理士さんの依頼で、急逝された中央大学の先生のご自宅の蔵書の整理中に、なんとゴミの山中から見つかった原書の復刻本なのです。
貴重な香道の本があると聞いていましたが、まさかゴミの山中から見つかるとは、とみな驚いていました。見つけたのは現社長の加藤恭三。原書は大変貴重なものですので、ご遺族が東京国立博物館へ寄贈されましたが、どうしても復刻本を残したいとのご希望でしたので、100部限定で復刻して刊行しました。
このような不思議なご縁で刊行になるケースを喜びながら、日々「ジミチ」に活動をしているわけですが、うちなる問題としては、いささか高齢化が進み、ネットなどの日々進化する環境に戸惑うことも多くなり、頭の柔軟な若い人たちの力が必要だと感じています。
しかしながら、なかなか若い出版関係者との交流がなく、常なる業務に日々追われるばかりです。もの好きな方で、神保町にお寄りの際には、ぜひとも小社に足を運んでいただけたらと願っています。一筮をもっておもてなしさせていただきます。