電子図書のゆくえ
上の娘が言った。
「電子図書は、失敗したね」
え?・・・
彼女は家業であるウチの出版を手伝っている。私より若い分だけ、いく分、インターネットにもパソコンにも強いので、これから付き合いが増えるに違いない電子図書関連については、ぜひ担当してもらいたい、と思っているところに、この発言である。
外に勤めに出ている下の娘も、
「紙の本で手に入らないときしか読まないものね」
またもや、え?・・・
そうなの? だって、あなたたち、パソコンばっかり見てるじゃない? 紙の本より、圧倒的に・・・と思ったが、彼女たち曰く、こと本に関しては、やはり実体のある本の方がいいのだそうだ。現段階においては電子図書は読者にとってリアル本を越える魅力は持ち得ていないのだと言う。
確かに、ウチの本も、絶版になった本や、絶版になりそうだがその時増刷は難しいだろうと思われる本など、何冊か電子書籍化しているが、成果をあげているとは言い難い。コツコツと売れていき近々在庫切れになりそうな本など、すでに電子書籍化し、その方がもちろん価格が安いにもかかわらず、やっぱりリアル本の増刷になりそうだ。
電子図書の時代がやってくる、紙の本は、いずれ電子図書にとって替わられるだろう-。そう言われ出して久しいが、今のところ、まだその時代とはなっていないようだ。アナログ人間でネット社会への苦手意識の強い私としては、少しほっとしてしまった娘達の言葉だった。
とはいえ、いつまでも紙の本が優位を保っていられるとは思っていない。目下のところは、移行途上の試行錯誤の時代、というところだろうか。
電子図書の登場が言われ出した頃にイメージされた、ハイパーリンクや動画などを駆使した立体的書籍は、おそらく私たち紙の出版を扱っている分野とは違ったところからも新しい媒体商品としてどんどん登場するだろうし、今、読者にとっても版元にとっても紙の本を越える魅力を発揮し得ていない電子図書も、さらにネット環境が整っていけば、新しい仕組みもでき、広まっていくことだろ
う。その進行が、身構えていたほどには早くない、というだけの話。
しかし、私たち版元は、将来どういう形(立ち位置)になっていくのだろう。
今の電子書籍の延長線上にないのかもしれないとすれば、仕事の形態もろとも一度頭の中を白紙にして、これからを考えなければならないのかもしれない。
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