相変わらず…
以前、3本目の「版元日誌」を寄稿したのは2011年5月だから、5年以上昔の話。その時「女房と二人だけの会社だし、まあ、出すべきものだけを出していくだけで、モトがとれるとはモトから思っていない、わけでもないけれど、こういうかたちでいつまでつづけられるかな」と書いた状態は依然としてそのままです。
昨年刊行できた書籍は3点。もっとも別に『季刊Collegio』という、口の悪い向きには「得体の知れない」小冊子を発行しているから2カ月に1点くらいは出したという勘定か。それもみなごく「少部数」出版に限られます。だから「会社」は実質休眠で個人事業。「事業」というのもおこがましい態。それも「気づけばいつの間にか高齢者」には相応しいと言えるでしょう。
「ミニマルライフ」や「断捨離」が流行語となるご時世です。現実としてこれ以上モノを詰め込む隙間のないスペースに棲息する身としては、モノを増やす仕事に携わること自体が矛盾ですね。もっともスペース以前に時間もお金もないので、まずテレビは棄てる。つい買ってしまうから本屋(新刊書店・古書店とも)にも足を向けない。
出版界ともお付き合いは稀ですから、本は青空文庫か図書館本以外は読まないことを原則としている版元主がどれくらい存在するかわかりませんが、こういうのはやはり糾弾の対象でしょうね。
ただし2年前から大学で学生相手に、どうやったら本に気持ち向けてもらえるか、「読む」ことの楽しさに気づいてもらえるか、試行錯誤、悪戦苦闘してきたし、それはまだつづくから、多少の罪滅ぼしにはなっている、のかな。
ところで、前回も書きましたが〈フィールド・スタディ文庫〉というシリーズのうち
「川の地図辞典」は『江戸・東京/23区編』と『多摩東部編』の2点出していて、前者は三訂版、後者は補訂版まで既刊ですが、「江戸・東京/23区編」は返品待ちの品切れ状態が長くつづいているにもかかわらず、いまだ注文が絶えない。けれども四訂版までつくれる見込みは立たない。先だっては利用者からリクエストがあったらしく、新宿区中央図書館から電話注文がありましたが、担当者に「こういう本は地域公
共図書館の基本図書です。発刊時に即購入しておくべきでしょう」とつい嫌味を言ってしまいました。本体3800円が、アマゾンの中古本では4000円から14000円の値付けがなされている。
だからせめて電子本にして、とも思うのですが、組版データを握っている印刷所とは話合いがつかない。もっとも「辞典」であると同時に「地図」だから、電子化といえども訂正にかかる費用は半端ではない。もっともこういった情報は、いまさら電子本でもなく、ネット化すべきなのでしょうが、そちらは全く不案内。課題は多く、悩みは深いのです。