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滋賀の素敵を伝える『淡海文庫』創刊20年

 サンライズ出版は、1930年、謄写版の印刷からスタートし、長年、いわゆる軽印刷という分野で、自治体をおもな得意先として歩んできた。ちょうどダイレクト製版機が登場した頃、同じくシルバー産業などという言葉も登場し、高齢者向けの商品需要が現れたのと期を一にしている。この頃、手書き原稿をダイレクト製版機や軽オフセット印刷機を使って文集づくりを始め、制作に必要な、専用原稿用紙やマニュアル、カット集まで整えて受注をしていったのである。
 卒業アルバムを受注していた地元の写真屋との共同作業で、仕事が集中するのは、1月の閑散期だったのも大きな魅力であった。そしてこの文集づくりの流れの中で自費出版の受注を展開することとなり、工場新設に伴い独立したプリントショップは、自費出版受付窓口と変貌してきたのであった。
 その後、ぼつぼつ、地域誌や自分史などの自費出版が増加し、2003年にはついに社名もサンライズ出版に変更した。本格的な出版は、1994年に創刊した「淡海文庫」から始まった。

 「全国には各地に独自の地域文化の特色に焦点を絞ったシリーズ本が発刊されている。滋賀県には古来より奥深い歴史や文化の蓄積があるにもかかわらず、どうして、この手の出版社がないのだ。」「京都に『オンブに抱っこ』状態からの脱皮が必要だ。」「自費出版もいいが、近江の歴史や文化に特化した出版をはじめるべきだ。」などなど。
 周辺の熱い期待を背負って、自らの力不足をも顧みず「出版を始める」と決意したものだった。
 そして本年淡海文庫創刊20周年を迎え、6月に発売する『織田信長 その虚像と実像』で53冊の淡海文庫が揃った。1年に3冊発行し、当面は100冊を目標とし、できる限りこだわったテーマで、近江の百科事典を目指したのであった。
 創刊当時はテーマ選定に悩みつつも、執筆陣からは郷土史家や城郭研究者などに大きく飛躍した方があり、作家への道を歩み始めた人も出てきたことは嬉しいことである。さらに、シリーズ刊行を続ける中で、自社が狙うべきテーマも確立してきた。サンライズの特徴的な書籍として、城郭本、郷土の食文化、近江商人、街道本などは淡海文庫刊行の中から生まれてきたのであった。
 一方で、販売はかなり苦戦している。ロングセラーは何点かあるものの、発行部数は減少するばかり。なんせ、滋賀県人は、本は図書館で借りるものと思っている。滋賀県の一人あたりの図書館貸出率は全国でもトップクラスである。反面、書籍販売高は全国のなかでも40位ぐらいというありさま。これまで滋賀県ものの出版を誰もが手を出さなかったはずである。
 とはいえ、もう走りだしたからには、前を向いて歩くしかない。創刊当時に組織した購読者組織「淡海文化を育てる会」の会員のみなさんの温かいご支援に応えるためにも、まだまだ先であろうが100冊を目指していきたい。

51号からは装丁をリニューアルし、統一感を出すようにした。

 
 
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