一人の作家を追って
昨年5月に入会いたしました澪標です。文芸書を中心に大阪で出版活動をしています。法人としては今期8期目に入りました。
8月12日(月)お盆休み直前、森岡久元著『深夜音楽』が印刷所より届く。著者12冊目となる小説集。
思えば1999年6月発行の『南畝の恋―享和三年江戸のあけくれ』が最初の本だった。その後『崎陽忘じがたく―長崎の大田南畝』『花に背いて眠る―大田南畝と二世蜀山人』と大田南畝関連の小説が続く。しかし同人誌に発表した「尾道渡船場かいわい」が2000年第7回神戸ナビール文学賞を受賞したことから、同年11月に同名のタイトルを冠した『尾道渡船場かいわい』を上梓。以降、いわゆる尾道物が『尾道物語・純情篇』『尾道物語・幻想編』と続いていくことになる。またその姉妹篇として、頼山陽の十八歳の日記に秘められた真実を竹原と尾道の地を通して探求する『十八歳の旅日記』があり、そして昨年8月には『尾道物語・旅愁篇』を出版。
8月23日(金)東尾道にある啓文社本社を営業訪問。著者ゆかりの地である。啓文社では、とりわけ尾道シリーズは各店舗に常設していただいている。今回の『深夜音楽』はタイトルに尾道の名が入っていないが、「森岡久元といえば尾道の人と誰もが知っていますよ」と店売本部長兼商品部部長の児玉憲宗さん。児玉部長は書評家としてもその名を知られ、FB上ではとりわけ地元出身作家を熱く紹介、応援されている。
この日の夜、社に戻ると啓文社から早速注文のFAXが届いていた。児玉部長の尽力あってのことと深謝。
8月27日(火)版元ドットコムのFAXDMを利用させていただく。夜には早くも2件の注文が届く。これからに期待。
ところで、『深夜音楽』の帯文は福山市在住の毛利和雄氏(元NHK解説委員)に書いていただいた。その毛利さんからお手紙をいただいた。「森岡さんには、少・青年期物、大人向エンターテイメント、それに江戸歴史物の三つのジャンルがあり、今後は歴史物で勝負されることが作家としての円熟の道と強くお薦めしています。とはいえ、エンターテイメントも作品としては面白いので、双方を含め今後に期待しております」とあった。森岡作品に精通した毛利氏ならではのご指摘。
作家・森岡久元さんとの知遇を得てから15年、この間12冊もの作品集を手がけさせていただいたが、森岡文学はさらなる進化を遂げて行くように思われる。
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