「梓会出版文化賞特別賞」を受賞しました!
皆さま、明けましておめでとうございます。
しかし、3・11からまだ2年―大震災・原発大被災の厳しい状況を想いますと、新年を心から祝うのはまだ早いかもしれません。被災地が一日も早く復興することを皆さまとともに願っています。
一昨年から小社は、この3・11後の時代状況に向き合うべく、『フクシマ・ゴーストタウン』『見捨てられた命を救え』『復興支援ボランティア、もう終わりですか?』などの被災地関連の本を刊行してきましたが、上の3冊が「梓会出版文化賞特別賞」を受賞いたしました。この賞は「すぐれた出版を行っている版元を顕彰する」ということのようです(1月17日、日本出版クラブ会館で授賞式開催)。
出版界のなかでは、すぐれた著作を表彰するものはたくさんありますが、出版社自体を表彰するものはこの梓会の「出版文化賞」が唯一のようです。
*一般社団法人出版梓会(「出版界と読書文化の復興を目標」に専門書出版を中心とする会員社111 社[2012年11月現在]を擁する団体)
これら受賞作3冊のなかで、やはり編集者としての思い入れがあるのは、『フクシマ・ゴーストタウン』『見捨てられた命を救え』のフクシマの2冊です。
実はこの2冊は、3・11後、メディアがフクシマの警戒区域内に入らず、政府による報道管制が敷かれるなかで、その警戒区域内に果敢に立ち入り、内部の実態を詳しく記録したのがこれらの本です(それぞれ写真数百枚を掲載し、エッセイで綴る)。
このフクシマ警戒区域内の実状は、現在では次第に明らかになっていますが、建物が崩れたままで瓦礫が散乱し、人っ子一人いない、まさにゴーストタウンのような状況でした。
そして、この警戒区域内でなされたのが、数十万頭に及ぶ牛・豚などの家畜の「殺処分」でした。また、この区域内には、「数日で還ってくるから」と言い残し、これも数万の犬・猫などのペットたちが置きさりにされました(政府の家畜等の持ち出し禁止措置)。
この3・11後、置きさりにされ、餓死した動物たち(数万のペット)―また、飢えと渇きの中で助けを待つ動物たちの救出に起ち上がったのが、この本の著者らのボランティア・レスキューでした。
メディアがほとんど報道せず隠したのは、このフクシマ被災地の動物たちの悲惨な実態だけではありません。このボランティア・レスキューたちは、頻繁に警戒区域内に入って救出活動を続けるのですが、「違法行為」として数十人が逮捕・拘束されたことも、まったく報じられていないのです(全員が逮捕拘束後、すぐに釈放)。
つまり、このアニマルレスキューのすべての問題は、フクシマ原発被災が生じさせた「もう一つのフクシマ」の現実です。これは、3・11から2年が経過しつつある今も続いています。
この3・11後、2年目のアニマルレスキューの状況を、近々小社は『見捨てられた命を救え(part2)―3・11後、2年目のアニマルレスキュー』として発行します(2013年2月中旬発売)。ここには、未だ警戒区域内に取り残され、極限の飢えと渇きのなかで助けを待つ、数千の犬・猫たちの救出活動の記録が描かれています。
小社は設立以来、今年で23年になります。少部数発行の小さい出版社ですが、設立以来ずっと続けているポリシーがあります。それは、「時代に向き合う出版」ということです。言い換えれば、ジャーナリズム精神をもって出版を行うということでしょうか。
3・11後特にそうですが、政府・官僚・専門家の信頼崩壊とともに、新聞・テレビなどのマスメディアの信頼も一段と崩れ去っています。この原因は明らかにメディアが、政府・電力業界との癒着―「原発安全神話」を垂れ流し続けたことです。しかし、書籍出版は、このような制約を何ら受けず、社会問題に切り込むことができる、唯一といってもいい媒体です。何らの制約も受けないという意味では、インターネットも同様ですが、ネットは「情報」という意味では広いですが、深く切り込むという意味では、本に勝るものはありません。
このような書籍出版の意味をしっかり噛みしめながら、今後の出版活動を続けたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
●「梓会出版文化賞特別賞」の作品
『フクシマ・ゴーストタウン―全町・全村避難で誰もいなくなった放射能汚染地帯』(根津進司著)
『見捨てられた命を救え―3・11アニマルレスキューの記録』(星 広志著)
『復興支援ボランティア、もう終わりですか?―大震災の中で見た被災地の矛盾と再興』(中原健一郎 著)