【仮説社】のEncyclopedia(Uncyclopedia?)
こんにちは,仮説社・営業部の伊丹といいます。
ひとよりも長い大学生活を送り,教員採用試験に落ちること●回,紆余曲折を経て,昨年4月より仮説社で働かせていただくようになった新人です。
何でも気楽に書かせていただけるということで,軽い気持ちのまま版元日誌の原稿を引き受けたのですが,過去の日誌を見ると,営業・出版に携わる各版元の方々の情報交換の場,といった印象で,正直たじろいでいます。
営業に移ってまだ一月足らずの私に出来ることと言えば,……自社の宣伝くらい。
開き直って,まだまだ知名度の低いであろう「仮説社」という会社について,紹介させていただきます。
●採用の条件は「皿回し」
仮説社はヘンな出版社です。
何がヘンかと言いますと,書店フェアをやっていただくと,売り場の3分の2が雑多な教具・おもちゃの棚になります。他の出版社のフェアでは,こんな光景を見かけません。でも本業は出版です。
さらにヘンなのは採用の条件です。
まったくの異業種から応募してきた私のような人間をアルバイト経験もなしに正規採用してしまう――これだけで十分ヘンだと思うのですが,ウソかマコトか,試用期間中に課された正式採用のための条件はなんと……「〈皿回し〉をマスターすること」でした。
試用期間も終わりに近づいた頃,私はなんとか皿回しを習得することができ,コトなきをえたのですが,仮説社の社員は全員皿を回すことができるので,この話はあながち冗談ではなかったのかもしれません。
●「?」な出版物
出版物もヘンなのが多いです。例を挙げると,
(1)『煮干しの解剖教室』(小林眞理子著,本体1500円+税)
解剖に使うのは料理に使用する魚の煮干し。小さくて干からびていても,脳,心臓,腸などの内臓がしっかりと観察できるのがおどろきです。しかも,解剖したあとはおいしくいただいてしまうので,〈学習意欲〉と〈食欲〉をいっしょに満たすことができます(欲求の階層理論を唱えたマズローも真っ青でしょう)。これまでの教育書の盲点をついた画期的な作品と言えるかもしれません。ちなみに著者の小林眞理子さんは,今春タモリ倶楽部に出演されました。
(2)『気分はアルキメデス』(萠出浩著,本体1900円+税)
表紙には衣服を着たまま浴槽に浸かる男性の姿――この方は〈お楽しみ科学実験出前屋〉というアヤシゲな職業(が職業として成り立つか実験している最中)の萠出浩(もだしひろし)さんです。何をしているのかというと,自宅の浴槽に80kgの塩を溶かし,イスラエルの死海のようにプカプカと浮かぶことができるのか実験しているのだそうです。また,表紙の下の方の画像にはなにやら大きな望遠鏡のようなものが写っています。なんとこれ,望遠鏡ではなくて,エジソンが制作したという直径80㎝,長さ約2mのメガホンを再現したものです。3㎞離れたところの音もキャッチできるというからおどろきです(ただし見通しのきく直線の場合だけ)。
この本は,科学実験をトコトン楽しもうとする萠出さんの破天荒なエピソードが満載です。「なんだかわけがわからないけれど,ともかく元気が出てくる」――そういうスピリチュアルな力を秘めた本だと思っています。
……変わり種の2冊を紹介させていただきました。
●新刊も出ます
さて,最後になりましたが,新刊の情報もお知らせさせてください。
8月中になんと3冊出ます。
(1)『特別支援教育はたのしい授業で』(山本俊樹・藤沢千之編著,本体1300円+税)
(2)『忍者えのぐであそぼう ー見えない紫外線をつかまえて環境学習』(村上規代著,本体1600円+税)
(3)『ドライアイスであそぼう』(板倉聖宣・藤沢千之著,本体2200円+税)
偶然にも,今回は『~であそぼう』というタイトルのものが2つあるのですが,これは(私の妄想でなければ)仮説社が「おもしろくてワクワクすること/自分自身が感動して人に伝えたくてしょうがないこと」を本づくりの基本的なスタンスにしているためです。だから,まったくの偶然というわけではありません。
『特別支援教育は~』この本は,長年特別支援教育に携わってきた数人の先生方の実践記録です。特別支援学校に在籍している子どもたちは,障害の程度や実態,必要とする支援もさまざま……。が,こうした子どもたちみんなに受け入れてもらえる授業であってこそ,ほんとうの意味で〈たのしい授業〉と言えるでしょう。本書は,ごまかしの通用しない場で試され,好評だった授業プランを紹介しています。
『忍者えのぐで~』は,目に見えない紫外線を,紫外線に反応して発色する絵の具(=忍者えのぐ)を使って目に見えるようにし,子どもたちに遊びを通じて紫外線の存在を身近に感じられる工夫や実験を紹介しています。〈見えないものを見えるようにする〉ーこの工夫一つで,環境学習への関心もぐっと身近なものに変えられるのです。
『ドライアイスで~』は,以前国土社から出されていたものの新版で,2012年の「講談社出版文化賞・さしえ賞」を受賞された丹下京子さんをイラストレーターに迎えました。モクモク,モクモクとすごい勢いで煙の出てくるドライアイスは,子どもたちが日常生活の中で最初に出会う「〈科学のニオイ〉のするもの」です。このドライアイスを使った,学校でも家庭でも安全に楽しめる実験を紹介しています。みんなでワイワイガヤガヤしながら楽しんでみてください。
楽しいことは,「おぼえなくちゃ」なんて無理しなくても,自然と記憶に残ります。新旧問わず,仮説社の本が,教わる側のこどもにも,教える側の先生にも,「勉強って楽しいな」と感じてもらうことのきっかけになればと思っています。
なんだか書きたいように書き散らしてしまいました。ここまで読んでくださった方,そういう方がおられましたら,お付き合いくださり,ありがとうございます。