“小商い”に通じる、直取引出版社の営業事務
はじめまして、ミシマ社の星野と申します。
2年ほど前に入社し、主に営業事務と編集を担当しています。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、ミシマ社は2007年6月より、取次会社を通さない「直取引」をメインとして出版活動をしています。直取引というと、事務が煩雑というイメージがあり、出版社を立ち上げようと考えている方などから、「大変ではないですか?」というご質問をいただくこともあります。私自身は、2年間この仕事をやってみて、実際に大変な部分もあれば、そうでもない部分もあり、また直取引ならではの良さもあるように思っています。今回は直取引にご興味のある方々やご検討されている方々に向けて、そのあたりをできるだけ具体的に書いてみたいと思います。
営業事務をする上で、取次を通す場合との大きな違いは、
①書店への納品は、新刊時を含め、すべて対面営業や電話、FAXなどで受注した分を直接お送りするので、その分の納品伝票を個別に起票する
②毎月、全取引書店に対して請求書を作成し、送付する
③全取引書店からの入金の入力など、金銭授受の管理をする
といった作業を、自社で行なうところだと思います。
最初に業務の仕組みや流れをつくるまでには、ある程度の時間と慣れが必要になりますが、一度それができてからの実際の業務量は、ミシマ社の場合、だいたい下記のような感じです。
①日々の受注分の起票、倉庫とのやり取りなど:毎日1時間半程度
新刊時の起票、倉庫とのやり取りなど :3日間程度
②請求書の作成、送付 :毎月2~3日間程度
③入金の入力、その他金銭管理 :毎月3日間程度
これを“大変”と捉えるかどうかは微妙なところかと思いますが、直取引を始めて、取引店舗数がそれほど多くない時期は、作業時間ももっと少ないですし、他の業務と並行してやることも、十分可能だと思います。
そして、営業事務から見た、直取引の良いところなのですが、上記のような業務を日々行っていると、体感として、各書店との関係性の強弱の変化や、商品の売行き状況が把握できるということがあります。
ここでいきなり自社の本の話に飛びますが、ミシマ社では1月に、『小商いのすすめ』という書籍を刊行しました。「小商い」は、顔の見える人との関係や、手触りを大切にする、身の丈に合った生き方、といった意味をもっています。
たとえば、各書店別・書籍別の売上データや、請求金額のデータは、キーボードをたたけばすぐに出すことができます。それでも、日々の受注を入力したり、請求書を1枚1枚確認して送る作業をすることから得ている情報には、打出したデータだけからは読みとれないものが含まれています。データを見るのではなくてスリップを数えることで売上を把握する書店員の方の感覚と、似ているのではないかなと思います。
そういった、営業事務の作業をする中で得た感覚や情報を、営業や編集と共有し活かしていくことは、「小商い」をしている会社にとって、とても大切なことのような気がするのです。
以上、直取引に興味があるけど事務が大変そう、と尻ごみされている方の、ご参考になれば幸いです