近況報告
近年、小社で出版する本に厚い本が増えた。
本来小社は、地方にあり極小規模、そんな立場でやれる隙間産業的な出版を目指してきた。すなわち、小規模出版である。本の形でいうと、文庫・新書・四六判などで、頁もあまり厚くない方がよい(250頁以内が好ましい)。そのかわり、表現者や研究者などの著者が、人生や仕事の節目節目に一冊の本にまとめることができる。そうして、次につなげることができる。そんな出版を基本としていた。
が、ここにきて、A5・B5・はたまたA4とサイズが大きいものが増え、頁も400、500、ついには850頁という本までできてしまった。
理由はわかっている。創業より26年、初期の頃からつきあってきてくれた著者達もそれだけの歳月を経て、定年を迎えるなど、そろそろ来し方を振り返る節目の時期。ここでこれまでの仕事の集大成をしておきたい、というわけである。普通なら、持ち込まれた分厚い原稿を、削りましょう、整理しましょう、というところだが、彼らの場合、そうはいかない。すでに整理し、削り、でもこれだけの分量なのだ。これまでのつきあいでそれがわかるだけに、今回は、できるだけ著者の希望に適う本にしよう、と気持ちを切り替えてかかる。
出来上がった本を、彼らは実に愛おしそうに眺め、なでる。紙の塊、文字の羅列が、本の形となった喜びを、彼らは満面の笑みで伝えてくれる。
電子図書とは別物だな・・・。ふと思う。
紙が限りある資源、と意識されるに従い、台頭してきた電子メディア。うちのような、出版業界の端っこにいる者にとっては、今はまだ、暗中模索の状態だが、いずれは多くの紙媒体にとってかわるだろう。本もしかり。出版社そのものの存在の可能性も含め、電子図書とどうつきあっていくか、喫緊の課題である。しかし、今、現実にうちから本を出そうとしている著者達は、形有る紙の本でなければ納得しないだろうな、と思う。増刷になった場合に電子図書に、というのならあり得るだろうが。
ここ数年は、こうした形有る本への憧れの実現としての出版が続きそうである。
さて、私たちが仕事に関われるのはあと5、6年、どんなに頑張ったところで十数年。そう思うと、電子図書への移行という世の中の動きが気になりつつも、リアル本の制作・出版で追われるうちに、私たちの時代は終わるのかも・・・・と思っていたら、娘が帰ってきた。
夫婦でやっている自営の出版社である。娘からみれば、家業、やはり跡を継がねば、と思ったようだ。こうなると、話は変わる。次世代は、電子図書とのつきあい方を視野に入れずしては、とてももたない。これは確実だろう。はてさてどうしたものか。電子図書とのつきあい方、やはり、当面の課題として考えねばならないようである。
創風社出版 の本一覧