たかが獄中記、されど獄中記
はじめまして。彩図社に入社して2年目になります、編集部の吉本と申します。小社は『裏のハローワーク』をはじめとする、いわゆるサブカルチャー本を中心にビジネス書、旅行書、ノンフィクションなどを発行しております。
突然ですが、皆さんは「労役」という言葉をご存知でしょうか。スピード違反や交通事故の罰金を払わない者を、刑務所などに留置し、罰金額に応じた労働を課す制度のことです。
私が担当いたしました、森史之助著『労役でムショに行ってきた!』は、その制度に従って労役に従事した筆者が著した異色の〝獄中記〟です。元新聞記者の筆者が、25万円の罰金を50日にわたるムショ生活(1日5000円換算)で返済するまでが描かれています。
懲役ではない獄中記という物珍しさからか、サンケイスポーツやエキサイトニュースなどでも取り上げて頂きました。
先日、本書を読んだ読者の方から、質問のお電話を頂きました。
「友人がこれから労役に従事するかもしれないのだが、罰金徴収係は『刑務所内で労働に従事しない土日は留置日数に換算しない』と言っている。貴社の『労役でムショに行ってきた!』では土日も含まれるとのことだが、どちらが正しい情報なのだろうか?
私は「もちろん含まれます。現に筆者は25万円の罰金を課せられて、50日で出所いたしました」とお答えしました。
「労役」という制度は、あくまでも対象者を留置するための制度でありますので、働いていないからといって休日が留置日数から除かれることはありません。件の徴収係がどういうつもりで「水増し」をしたのかは定かではありませんが、個人的な推測では、対象者に刑務所行きではなく、罰金を支払っての返済をさせたかったのだと思われます。
その電話をくださった方の友人にしてみれば、土日が「労役」として換算されるかどうかは、囚人として扱われる日数に直結する重大な問題です。
こちらとしては「毛色の変わった獄中記」として提供させて頂いた書籍でも、受け取る読者の方によっては「死活に関わる情報源」と成り得る。改めて一冊の書籍が持つ可能性と、責任の重大さを勉強した一件でした。
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