えどふみ−思わず「がんばれ!」と言いたくなる面白さ
「えどさん”&ふみいち」。このコンビの面白さをどう伝えたらよいか。
この1年間、そればかり考えてきました。
結論から言うと、えどさん”&ふみいちはとても面白いコンビです。
しかし、その「面白さ」が独特なため、なんとも言葉で伝達しがたい側面があるのです。
インターネットの動画投稿サイト、ニコニコ動画に、ゲーム実況というジャンルの動画作品を発表していた彼ら。
その活動を事業化し、現在はニコニコ動画以外にも、専門のゲーム番組をもったり、ゲームメーカーの公式ゲームプレイヤーになったりと、まるで一昔前の高橋名人のような活躍ぶりを見せています。
現在でもニコニコ動画に行けば彼らの動画作品を見ることが可能です。しかしそれは一見すると、作品というイメージのものではない印象を持つかもしれません。
いい年をした大人が2人、ゲームと格闘してる姿がそこには映っています。
彼らには16連射も、闘劇優勝の肩書きも、「新宿の○○」の通り名もない。ただ、彼らほどゲームそのものを自分の身体全身で受け止めるプレイヤーもなかなかいないのです。
例えば、FFCC実況動画という彼らの代表作があります。
(現在は著作権の問題でFFCC動画は一時凍結中)
これは10年ほど前にスクウェア・エニックスから発売された、ファイナルファンタジークリスタルクロニクル(FFCC)というゲームを、えどさん”とふみいちの2人がひたすらプレイしていく動画です。
RPGなだけに、クリアするまでには何十時間もかかります。
その間、彼らはひたすら、ゲームをしながら数十時間をしゃべり続けます。
ゲームにまつわるあれこれ、自分が子供の頃どんなゲームをしていたか、果ては彼女と別れた話とか、最近ヨガにはまってるとか、ガンプラがどうのこうの…
初見の方は、全然ゲームの実況になってないじゃないか、と思うかもしれません。しかし、動画をひととおり見終えた時、何故か、自分がどっぷりゲームをしたあとの気分になっていることに気づくのです。
私自身はパソコンのモニタの前で、えどふみのおしゃべりを聞いていただけなのに。
その時、動画を見た人の心中には、確かな充足感と、或いは、ちょっとした感動すら芽生えていることでしょう。
人生のうちの何十時間という時間を、えどふみと楽しく共有できたという共通経験が、自分の中に体験として腑に落ちるのです。
「ああ、楽しかった」と。それは、テレビの向こうの高橋名人を、ポテチ食いながら眺めているのとは決定的に違う。
思うに、えどふみの面白さというのは、彼らの飾りっ気のないところや、日常性の部分にあるのだと思います。
今回、とびら出版から、えどさん”&ふみいちの本を出すにあたり、彼らと直接会い、何回も打ち合わせを重ねました。
会って驚くことは、ニコニコ動画の中のえどふみと、現実のえどふみは、ほとんど差がないことでした。
動画内そのままの日常会話や、人間関係が、そっくり現実で行われています。
もちろん彼らは演劇やドラマにも出演している本職の役者だから、私という他人に対して、多少外面を演じている部分はあるものの、それを差し引いても、掛け値なしのえどさん”とふみいちが、そこに実在します。
(くさかべさんも、あのまんま正真正銘のドMです)
それは、動画をみている人ならば、あの会話から滲み出る人間性がそうそう表層的なとってつけたフリなどではないことは分かると思います。
裏をかえせば、人間性が滲みでるような会話をしゃべり続けるから、えどふみは面白いとも言えます。
なので、今回出版した『えどふみ滅』では、彼らの日常生活を描くという手法をとっています。
私たちがニコニコ動画で見ているえどさん”&ふみいちは、膨大な日常生活のごく切り取られた一部です。
その日常部分を、『えどふみ滅』を読んでくれる人と共有したいと思いました。
体験を共有することが、えどふみを楽しむ一番の極意だからです。
彼らの面白さは、その背景に広がる、日々の普通の暮らしや、交友関係、生い立ちに支えられていて、それらをひっくるめたえどふみの人間性が分かってくると、次に動画を見る時の楽しさがまた倍加します。
また、えどふみは定期的に、直接、読者やリスナーと触れ合う機会も設けています。
会おうと思えば、誰でも直接会ってしゃべることだって可能です。
そのくらい、えどふみは間口が広いのです。
これほど、開かれた「友だち」は貴重な存在です。
ゲームを通じて楽しくしゃべる。
この単純にして根本的なエンターテイメントを、等身大で提供できるコンビこそが、えどさん”&ふみいちである。私は彼らの魅力を、そう感じています。
まだ、えどさん”&ふみいちを知らない人は、是非今のうちに触れ合ってみて、友だちの席を一枠増やしてみてはいかがでしょうか。