書店大競争時代
「書店の面積が岡山県は全国一」ということを、昨年、最初に知ったときには実感がありませんでした。岡山では去年の夏、東京に本社のあるS書店が岡山駅構内に、広島に本社のあるF書店と、CDレンタルと書店を兼ねて大手フランチャイズのT店2店が郊外にオープンしました。そしてこの3月、福山市に本社のあるK書店が岡山県最大の店舗面積700坪で郊外型店をオープン。さらに5月には、それを上回る900坪で神戸本社のK書店が岡山駅前にオープンします。地元新聞社も、「市場規模が縮小する中、売り上げ増を狙う県外勢が、豊富な品ぞろえの大型店を相次いで出店」と、「書店大競争時代」を書き立てました。
このような大型店のオープンが続くと、「書店の面積は全国一」というのが実感できます。出店にともない、小社にも出品依頼が来て、ほぼ全点の出荷をするようになります。
大規模な駐車場を備えた郊外型書店は次々にでき、小さな書店は姿を消していきます。今回の大型店の開店と同時に、閉店した書店も実際にあります。日本書店商業組合連合会の加盟店数が20年前をピークに減少し、半数以下になっているといわれますが、慣れ親しんだ書店が廃業していくのは寂しいものがあります。
書店だけではなく家電や食料品などの大型量販店なども、次々に郊外に開発した大型商業施設や駅周辺の大型店に出店しています。こうした大型店の出店競争にも限界があり、景気の後退もささやかれる中でそろそろピークを迎える時期が来るように思うのですが…。次々続く出店が書店の多様化になり、新たな本の購入者を増やしてくれることを望むばかりです。
小社は今年で14年目。これまで営業活動が十分でなかったため、昨年秋から新規の販売窓口を増やすことと同時に、書店での販売を見直す方針を立てました。中小の書店も回っていると、大型店の間に挟まれ、悲鳴のような声を聞くことがありますし、ベストセラーの本が回ってこないなどといった取次店への愚痴を聞くこともあります。中小の書店も大型店もみんなたいへんで、売り上げが伸び続けているという店があるとは聞きません。
そんな中で、ほとんどの書店が郷土本のコーナーを設けてくれています。ありがたいことですが、背表紙が変色した本が並び、その本の上にはホコリをかぶっているという店も少なくありません。書店にとって郷土本の棚は設けたけれど、ほとんど動かないコーナーとなっているのでしょう。この状態では、お客さんも欲しい本を求めて訪れても買う気にはならず、店にとっても出版社にとっても不都合なことです。地元出版社としても反省して、変色本の返品を要請し、新たな書籍の注文をもらい、小社のプレートを掛けて棚を刷新しています。久しぶりに訪問する書店での棚の整理は、やりがいがあります。
こうした棚の管理が十分でない店は市街地から車で30分以上はかかる郊外店に見られ、書店員さんも忙しくて手が回らないのでしょう。お店の状態が気になるところですが、お客さんの求める本がその手に渡るような努力や工夫をする余地は、出版社にも書店にもまだあるようです。