「変」な絵本がスマッシュ・ヒット
長崎出版営業担当の小尾と申します。
小社では2年ほど前より、児童書の出版に力を入れています。ロングセラー商品が大いにハバをきかす、新規参入は難しいジャンルといわれる児童書ですが、従来に「ちょっとない」カラーでもって市場に受け入れられた(と思いたい)小社のヒット商品をご紹介したく思います。
絵本シリーズ第一弾として、「こびとづかん」という絵本を刊行しました。絵本をつくるのは初めての、新進イラストレーター・なばたとしたか氏の手になるものです。
www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=10469
どぎつい色彩感覚とキッチュな人物像で「サブカル絵本=児童向けではない」と評され、刊行当初大手書店では児童書売場に置かれない時期が続きました。そんな中、いち早く本書の「不思議な魅力」を感知し、各店ご担当者が競うように強力なレコメンドポップを書いて大展開くださったのが、ヴィレッジ・ヴァンガードでした。
全国津々浦々のヴィレッジ・ヴァンガードから毎日のように大口の追加注文が入る一方で、大手書店からは相変わらず門前払い(少々大げさですが)を食う日々が一年以上続きました。
しかし、ぽつぽつと送られてくる読者はがきに目を通していると、「わが家の3人の子どもたちは、みんな『こびとづかん』が大好きです」「学校での読み聞かせに使ったところ、大好評でした!」といった内容のものが多いのです。読んでいるうちに、この絵本の読者は若者層に限られるものではない、という思いを強くしました。
絵本の紹介雑誌「MOE」(白泉社)に大きく書評が掲載されたことをきっかけに、大手書店への再販促をかけました。リブロ池袋本店では「カラーが合わない」という理由で長く陳列を断られてきましたが、読者はがきを抜粋したポップを持参し、「一度だけ、試しに」とご担当に頼み込み、平積みにしていただきました。
しばらくして再度お伺いしたところ、「売れました~」の嬉しいお言葉。その次に伺ったときにはなんと、『私は苦手なんですが…売れてるんです』という、なんとも素敵なコピー入りのお手製ポップが設置されていました。いやがうえにも興味をそそられるポップによって動きは加速し、その時期に70部ほど販売いただき、その後も同店では定番商品として置いていただいています。
おかげさまで、「こびとづかん」「みんなのこびと」は部数を落とすことなく、じわりじわりと売れ続け、順調に版を重ねています。
「絵本を読むのは子どもだが、財布を持っているのは親御さん」という構造上、とかく親御さんウケする内容や絵柄が好まれるジャンルではありますが、はたして子どもが真に喜ぶものは何かと考えるとたぶんその傾向とイコールではなく、案外そのあたりにこれからのニーズがあるんではなかろうか、などと、結果論的に思うこの頃なのです。