「再販原理主義」のゆくえ
三月二十三日に公取委から一応の結論が出て、とりあえず再販維持が決まった。ご同慶の至りである。
しかし、これからどうするのかと言う点では出版界の合意がとれているわけではない。むしろこれからのほうがかえって各論続出なのではないか。
まずなすべきは現状把握である。新古書店の増加、ポイント制の導入など変化は激しい。私が驚いたのは生協へのバックペイがかなり一般化していると言う事実。さる業界団体では生協書店でフェアをやったら、最初から5%とか10%あるいはそれ以上のバックペイはジョーシキだという。(私がこれまで属していたところではまったくそんなことはなかった。)生協は普段の生協価格よりそのぶんだけさらに割引して読者に販売するという。
ことが生協だから、そんなことはアタリマエだと言う人も多いかもしれない。でも、私にはどうも腑に落ちない。生協がそのタテマエとしてきた生活防衛の意義はとっくに崩壊しているのは当事者がはっきり認めている。あとは法律があるから、それが例外的に認められているから、ということになる。
しかし、法律論議をするなら、再販制は独禁法で原則禁止であって、出版物の再販制はその例外として認められたもの。生協がまたその例外ならば、例外の例外で、今の生協のやりかたが本来のものということになってしまわないか。
「再販原理主義」を貫こうと言うなら、ポイント制を導入している書店には出荷しない、生協へのバックペイは拒否する、私がこの前この欄で提案した時限歩安納品(=歩安返品)も拒否ということになる。
果たしてそれを貫徹できるのだろうか。これも結構大変だ。
結局のところ、口では「再販原理主義」、行動としては何もしない、ということに終わってしまうのではないか。
版元ドットコムに誘ったさる版元いわく「送料無料で読者に本を送るなんて、再販制の原則に反するから参加拒否です」と。