元気な純国産製品
相変わらず元気のない日本であるが、日本製で世界的に大きな支持を得ているものがIT産業にもある。DVDとユビキタス(情報家電)である。この2つはコンピュータと家電という異なる分野を結びつけ、新しい市場を創出している。
DVD の規格は日本で作られ、英訳されてアメリカに渡り、ハリウッドで高い評価を得て、国際的な規格となった。ほとんどのDVDハードウェアは日本メーカーがイニシアティブをとり、出荷台数はテレビやファックスを上回る速度で急増している。ユビキタスという言葉自体は、ゼロックス・パロアルト研究所のマーク・ワイザー博士が1991年に提唱した概念であるが、ユビキタスのルーツは、それよりも前に開発されたトロン(坂村教授が開発したOS)にある。
今年初め、ワーナー・ホーム・ビデオのアジア総代表の長谷さんにお会いする機会を得た。長谷さんは東芝のDVD事業部長としてDVDを育て上げた功労者である。DVDという新しい技術がユーザーに受け入れられるかどうかという不安に苛まれながらも、新しい技術にチャレンジしていくことに興奮した過去10年を私に熱く語ってくれた。NHKの『プロジェクトX』のような話しである。
『プロジェクトX』といえば、坂村教授を取り上げた番組が4月15日に放映された(私の友人も映っていた)。トロンはMS-DOSが産声を上げた頃に開発された純国産OSであるが、政治的な理由でバッシングを受けた。パーソナル・コンピュータでは、Microsoft、Unix、Appleが主要なOSとして使用されトロンのユーザーは少ないが、多くのロボットや家電製品にはトロンが採用されている。キヨスクや情報端末の撤去が進む中、トロンとJavaを融合したOSで動く携帯電話の躍進は凄まじい。
利便性と引き換えに我々は個人情報保護という困難な問題に直面している。デジカメ携帯や監視カメラで顔写真を撮影し、犯罪者リストと照合(バイオメトリクス認証)したり、その人の過去を検索することが可能な時代が到来している。ジョージ・オーウェルが警鐘を鳴らした近未来に我々は既に足を踏み入れてしまったようだ。プライバシーは守られなければならないが、個人情報保護を間違った方向で法制化しようとする国があるのも困ったものである。