「アマゾン、日販バックオーダー発注中止に思うこと」
4月28日に通達があったアマゾンのバックオーダー発注停止通告問題で、GW中も頭を抱えていた水曜社・佐藤です。
ちょうど版元日誌を書くことになりましたでこの問題の感想などを書いてみたいと思います。
簡単に言えば日販に在庫されていない商品についてアマゾンは今後e託以外で発注しないということに要約されるわけですが、水曜社書籍の日販Web倉庫在庫状況を再確認してみました。
日販三芳倉庫の4/21付在庫によると水曜社の登録書籍点数は296点。在庫ゼロは74点。
そのうちステータス32もしくは33は合計38点。
ステータス21=在庫僅少は6点。
ステータス11=在庫有にも関わらず在庫されていない商品は30点、その内13点は過去12ヶ月の稼働数が5冊以下。
更に過去12ヶ月の稼働数6冊以上の商品のうち毎月1回の補充リストに入っていたものが5点。
したがってステータス11にも関わらず補充されなかった商品は12点となります。
弊社は日販と大阪屋栗田にWeb用在庫があるので何とかなるかなと思っていたのですが、今回の件でアマゾンの商品ページを詳細に調べてみると、すでに新品カートが無い商品を何点か確認。すでにおおごとになっているかもしれません…。
問題の解決方法としては二つ。
一つ目は取次に全ての商品を在庫してもらう。でも毎年約20冊刊行としても、新たに32もしくは33になるのは年平均1点以下。増え続ける書籍点数を考えても現実的ではないでしょう。
二つ目はアマゾンe託と契約する。取次と同条件なら問題はありませんが正味が大幅に下がってしまうこと、将来の取引条件改悪の危険性を考えると二の足を踏んでしまいます。
では取りあえず何ができるのかを考えてみると
1.ステータス管理の徹底
基本中の基本ですがステータスの再確認と徹底。弊社はVAN受注なのでステータス管理はお任せ状態ですが、それでも時々不一致が発生します。疑問に思ったらとにかくステータスを確認。以前はエクセルファイルを大阪屋へ送ったり結構手間でした。
2.取次在庫の拡充
取次に可能な限り在庫拡充を依頼する。弊社は月1の在庫補充をしていますが意外と補充漏れも多い。考えられるのはステータス11で且つ年間6冊以上稼働している商品についてでしょうか。このくらいなら何とかなりそうな気もします。あくまで取次が協力を得ることができればの話ですが。
3.アマゾンe託
取次に在庫拡充の協力が得られた場合、e託契約はできる限り先延ばしを考えています。やはり正味を含めた取引条件の悪化と改悪の危険性が大きいので…。ただ将来的には契約せざるを得ないかなと漠然と考えています。
4.他のオンライン書店への誘導
アマゾンへの一極集中から紀伊國屋BookWEBや楽天ブックス、hontoへの分散誘導を図りたいのですが正直うまい方法が見つかりません。取りあえず水曜社Webサイトのネット書店選択欄でアマゾンを4番目に下げてみました(笑)
5.個人注文の誘導
カート落ちしやすいものはマーケットプレイスに登録しています。採用品など一時的にアマゾンへの注文が集中する商品に対しては非常に有効ですが、将来的には自社Webサイトにもカートを設置する必要があるかもしれません。
ここまでまとまりの無い文章を書いてきましたが、結局は出版業界が今まで長い間ないがしろにしていた部分を突きつけられた感じがしているわけです。注文した物が「いつ入荷するか」「希望部数が満数入荷するか」「本当に在庫があるのか」などの不満に対して自分自身も「こういう業界だから仕方がない」と考えていたのではないか。また客注取り寄せの敷居の高さなど様々な問題点を先送りにして、そのツケを書店とエンドユーザーに回していた結果かもしれません。
一般書店であれば棚にどのような書籍を並べるかは店の専権事項であり、これは客注の取り寄せも同じ。だとすれば今回のアマゾンのやり方を強権とか一方的とか言うのも…、と考えたりします。6年前の新刊委託の総量規制とか無茶ぶりを思い出すと、一概に日販擁護の気持ちにもなれないのが正直なところです。
これをきっかけに大きな正味問題に発展するのだけはイヤですけど。
すでにネット上では多くの方が正味問題、業界再編について、また過去の経緯を交えながらアマゾンとe託契約の今後の戦略などを分析をされています。
しかし不満があるとは言え、これからも既存の流通プラットフォームを使っていかなければならない出版社としては「出来ることを確実にやる(実は意外と出来てない)」を続けていくしかないですね。なんだか消極的な結論ですが。
最後にアマゾンは色々言われますが、ことあるごとに説明会・講習会を設けて取り組みを理解してもらおうとする努力は見習うべきところだと思います。これは本来取次やナショナルチェーン店がやるべきことでは…(弊社にお呼びがかからないだけかもしれない)
あと日販は仕入窓口以外は皆優しいのはなぜでしょう(笑)
取りあえずは5/17にアマゾンの説明会参加。それから日販、大阪屋栗田の担当者へ。そして再度対策を検討するなどめまぐるしい5月になりそうです。
ネット通販の台頭により地域差が縮小し、ますますエンドユーザーの利便性を考えた商取引を模索していかなければならない時代、皆さんはどういう対応を取られるのか、またすでにe託を取次と並行活用されている版元さんがおられましたら、状況を教えていただければぜひ参考にさせていただきます。