本への想いを伝える
はじめまして総和社の佐藤です。私が編集担当をし、3月7日に出た新刊『警察官の本分―いま明かす石巻署員がみた東日本大震災』の営業をしていて、本を売り込むということに対し、改めて感じたことがありましたので、それを書きたいと思います。
その前にこの本を出版することになった経緯を簡単にお話します。
身内の話で恐縮ですが、私の実家は宮城県石巻にあり、東日本大震災で被災しました。幸い親族も全員無事で、石巻署の警察医だった父は安否確認がとれぬ震災直後から警察署員とともに検視(遺体の死因と身元を特定する)業務に従事しておりました。父は警察官を「戦友」と称し度々私にその献身ぶりを話していましたが、私自身企画を思い立ったのは震災より自衛隊が撤退し、1年が経過しようとするなかにあっても警察官による行方不明者捜索、検視業務が相変わらず続いていることを父から聞いたときでした。
それから1年越しにできたのが本書ですが、警察の協力をどこまで得られるのかもわからぬままスタートし、取材を重ねるたびに本の形は変わり、宮城県警本部の恐怖の「検閲」が待っていました。終わってみれば、全面協力といっていいほど石巻署はこちらの要望をかなえてくれ、県警本部による「検閲」も誤字脱字や用語の修正が殆どで、内容変更は一切ありませんでした。警察に遠慮する必要のない著者が書いたにもかかわらずです。私自身は実際のところ警察のガードがどれだけ固いのか知る由もありませんでしたが、警察関係の雑誌を出している版元の方と話すと警察を取材して本にするという発想自体がなかったというほどなので、今のような形にできたのは尋常のことではなかったのだと思います。
以上が本書を出すまでの大雑把な経緯ですが、私は営業というと、本の内容を伝え類書との差別化を示すことだとばかり考えてきました。しかしそれ以前になぜこの本を作ろうと思ったか、想いを伝えることも必要だと改めて感じました。もちろん、ある程度話ができる時間があってのことですが、想いにはエピソードがあり、エピソードがあるこあらこそ、共感しやすいのではないか。共感してくれた人は動いてくれました。それは石巻への想い、警察への想いに限らず、きっと共感してくれた人たちもそれぞれに想いを抱えているからなんだと思います。
そんなことを愚考しました。
総和社のTwitterアカウント @sowasha