既刊と新刊
あまり景気のいい話を聞きませんが(いや、うちもスゴくいい!とは言えませんが)、最近とてもありがたいと思うことがあります。既刊が売れていくことです。
以前から、「出版社にとって、既刊は資産」という考え方は知っていました。一方で、出版不況が叫ばれているなか、経営的視点重視の在庫管理もあるようです。返品をすぐ全部捨てるわけではなくても、在庫を抱えるための売れ行きの判断基準は厳しくなっているかもしれません。
それはともかく、うちの既刊です。タイムリーな内容の本を避けてきたこともあり、まあ、数年経ったからって、必要と思ってくれる読者はなくならないと思っています。
でも、わざわざうちの本を探し出して注文を下さるということに対して、最近特にありがたく感じるようになりました。新刊の配本数が減ったりとっとと返ってきたりすると、流通だけがその原因でないにしろ、既刊の売上は本当にありがたいです。売上とか経営とかいうことでなく、心があたたかくなります。本は出会いだって言うな〜、という感じです。
インターネットのおかげで、検索に引っかかってくることもあります。これは本当に大きいと思います。
例えば、『ダンナがうつで死んじゃった』という本は、うつ病患者の家族が患者にどう接するかという本ではありません。家庭内の患者に対してストレスを抱えて、悲劇的最後を迎えてしまった主婦のエッセイ。うつ病患者や医師、支援団体などの側の観点からすると、救いのない内容です。
でも、うちのHPでのアクセス数も常に多く、コンスタントに注文をいただけます。本屋さんで買うのは気が引けても(どのみち、もう市場在庫はゼロですが)、うちへ直接メールをいただいたりオンライン書店を経由したりして、ぽつぽつと売れていきます。
本屋さんからの客注もあります。みなさん、ネットで検索して、本屋さんに注文に行きますか? 私の場合、本によって違います。この件に関しては、「町の本屋さんをどうのこうの…」とか「オンライン書店も本屋さん」とか、いろいろ言いたいこと(言えないこと?)はあるのですがそれはそれとして、ネットとは無関係に本にたどり着いてくれたと思われる注文もあります。例えば、『あるばむ』という高齢者向けの絵本です。
読者によってそれぞれ違うにしろ、何らかの方法でうちの本にたどり着いて注文をくれたんだな〜と思うと、この寒さも乗り切れる!という気になります。
でも、新刊も出します。この1月に出たのが『いじめはなくせる』。前に作った本を読者に届けるのも楽しいし、新しく作るのも楽しいからです。出版業を続けられて本当に幸せと思います。