日本編集者学会のすすめ ※「Editorship(エディターシップ) 」総目次付
初めまして、田畑書店の今須です。
“創業51年目”を謳う田畑書店ですが、経営や編集の体制が一新された“第4期田畑書店”としては実質3年目。最近はメンバー(経理担当)もひとり増え、3人になりました。九段南のサンバルカンと呼んでください。
田畑書店は、出版活動と並行して、日本編集者学会という学会の事務局も兼ねています。会員には現役の編集者や元職の方、メディア論や出版史、文学研究者、デザイナーが参加しています。
年一回「Editorship(エディターシップ) 」を発行すること、学会主催のセミナーを開催すること、機会があれば親睦し、お互いを助け合うなど、一般学術学会より緩やかな集まりです。
セミナーは、日本編集者学会ならではの企画を行い、その成果が「Editorship(エディターシップ) 」にまとめられます。なので、総目次を見ていただくと、編集者学会こんな感じなのか、うむうむいいぞとわかっていただけると思います。総目次は最後に並べますので、ご確認ください。目次やリスト、目録が好きな方は我慢せず先に見てください。
たとえば一昨年初めに開催した「少年社員のいた時代」というセミナー。
かつて“丁稚(でっち)”という職業身分があり、そう呼ばれる人(子供)がたくさんいました。出版社にも、若年者入社制度としてその名残がありました、つい最近まで。通称「少年社員」です。大正期より始まったこの制度は戦後へ続き、復興期出版業の大きな礎となります。
さてその少年達はどのような子供で、どのようなかたちで採用され、どのように学業と社業を両立し、どのような出版人へと育っていったのか…。それではご当人様に登場いただきましょう、どうぞ!という会です。熱い会になりました。一般的には地味なテーマですが、当事者が語る秘話(秘蔵の写真)は、やはり凄まじいわけです。
セミナーは、出版や編集の歴史だけでなく、出版と地域、実務的なものや、現在をテーマにしたものも多く開かれます。“沖縄とジャーナリズム”や、先日開催された“雑誌出版の危機”などは、見過ごせないテーマの基本的な視座、見通しを立てる場となっています。
日本編集者学会はもろもろよい会なのです、出版人にとって。
別のよい面もあります。それは、「Editorship(エディターシップ) 」への寄稿です。会員は「Editorship(エディターシップ) 」へ寄稿することができます。普段編集作業に関わる中で、あるいは出版活動の中で、考えていること、テーマをもって調べていたことを発表する舞台としての学会誌「Editorship(エディターシップ) 」です。ある種のテーマを深め、あるいは技芸に長け、もしくは長の付く仕事をして、それを出版以外の場面で役立てる、必要とされるときがあるかもしれません。そのときひとつ、日本編集者学会の学会誌への(論文など硬い文章の)寄稿という実績があったとしたら、あなたの活動を後押ししてくれる要素になる。そういう場としての「Editorship(エディターシップ) 」の活用の仕方もあります。もちろん学会員であることもアドバンテージになるかもしれません。
以上のことだけではありませんが、出版編集に関わる人間の親睦と発表、またセミナーや寄稿を通しての記録と継承を行う場としての日本編集者学会には、まだまだ“可能性”や“新しい使われ方”があると思われます。
ご興味や秘めた野望があるかたは是非、田畑書店までご連絡ください。
Editorship(エディターシップ) 総目次
創刊準備号[2010年2月20日]
特集〈文化における小出版の意義と役割〉をめぐって
出版・編集の現在を考えるために 石塚純一
21世紀にリトル・プレスは可能か 長谷川郁夫
岩波書店内「川上書店」の試み 川上隆志
流通が変われば、本作りが変わる 中嶋廣
言論の自由は誰が守るのか 山田健太
時代を画した編集者① 石井恭二 小池三子男[聞き手] 付・現代思潮社出版総目録
地方小出版の力① みずのわ出版 柳原一徳 和賀正樹
すべての本は本である 堀山和子
「洞窟」を出たり入ったりしながら考えたこと 佐藤美奈子
「者」のつく職業 和気元
Vol.1 時代を画した編集者[2011年11月5日]
文芸誌編集覚え書き 寺田博
私の出会った作家たち―吉行淳之介、村上春樹のことなど 徳島高義
恐竜は氷河期をどう生き抜くか 河野通和
人文書の編集者―イメージーリーディング叢書(平凡社)のころ 石塚純一
震災とメディア 山田健太
地方小出版の力② 寿郎社 土肥寿郎 和賀正樹
〈シンポジウム〉書物の現在 そして未来
石塚純一/大槻慎二/川上隆志/小池三子男/佐藤美奈子/堀山和子/和賀正樹
Vol.2 書物の宇宙、編集者という磁場[2013年5月5日]
多様体としてのブックデザイン 杉浦康平
河出書房風雲録・抄 小池三子男
福武書店のころ 大槻慎二
ジャーナリズムは本当に大丈夫か―相次いだ誤報報道とハシシタ問題から考える 山田健太
[日本出版文化史研究]本屋と薬屋―本の隣りにあるもの 石塚純一
地方小出版の力③ 南方新社 向原祥隆 和賀正樹
死と死者の文学① 死者が呼び出す―古井由吉 佐藤美奈子
編集者がつないだ「短歌研究」の八十年 堀山和子
天狗とヒットラー 和気元
編集者が書いた二つの本 中嶋廣
韓国原発行 川上隆志
vol.3 時代の岐路に立つ[2014年6月5日]
文芸誌「海」がめざしたもの 近藤信行
「日本読書新聞」と混沌の六〇年代 井出彰
世代を繋ぐ仕事 柳原一徳
日本でいちばん美しい本が生まれる場所―美篶堂というサンクチュアリ 大槻慎二
鷲尾賢也と小高賢 中嶋廣
私たちはいかにして「開かれた政府」を実現するか―秘密保護法時代に立ち向かう視点 山田健太
[日本出版文化史研究]戦時『FRONT』の東方社と戦後の平凡社 石塚純一
地方小出版の力④ 港の人 里舘勇治 和賀正樹
死と死者の文学②「物語」がはじまる場所―古川日出男といとうせいこうの近作を中心に 佐藤美奈子
偶感-Editorship 千葉俊二
歌集はどこに売っているの? 堀山和子
ハノイ、旧市街の書店にて 川上隆志
煙景のフィリップ・マーロウ 和気元
Vol.4 [2016年3月25日]
特集 沖縄とジャーナリズムのいま
私の沖縄戦後出版事情 川満信一
講演を聴いて 上間常道
沖縄をどう伝え続けるか 宮城修
編集者学会、沖縄へ 川上隆志
メディアと国家権力 青木理
編集者としてのディドロ 鷲見洋一
角田光代はいかにして角田光代になったか 角田光代
「吉田健一」を書き終えて 長谷川郁夫
「雪岱調」の萌芽と挫折 真田幸治
『遠野物語』の出版履歴と社会的評価 佐谷眞木人
シリーズ『本の文化史』を読みつつ考えたこと 石塚純一
地方小出版の力⑤ 南山舎〈石垣市〉 和賀正樹
死と死者の文学③ 小説にとっての他者と言文一致体 佐藤美奈子
ただいま、ちょっと牧水通 堀山和子
劇場煙草往来 和気元
脳卒中のこと 中嶋廣
Vol.5 [2018年3月31日]
特集1 信州と出版文化
岩波書店、筑摩書房、みすず書房、理論社…戦後を代表する出版社や文化人を輩出してきた信州。郷土史・民俗学の宝庫としても知られるこの地において、あらためて出版文化の真義と地域との結びつきを考える。
文化出版人・古田晁と筑摩書房 長谷川郁夫
地域を編む 県立長野図書館館長 平賀研也
「飯田学」を論ずる 伊那史学会主幹 原田望 × 川村湊 × 高柳俊男
特集2 少年社員のいた時代
かつて出版社にも若年者入社制度があった。通称「少年社員」である。大正期より始まったこの制度は戦後へ続き、復興期出版業の大きな礎となる。その少年達はどのようなかたちで採用され、学業と社業を両立し育っていったのか。当事者ならではの秘話を交え伝えられる出版史。
前口上 長谷川郁夫
人生をきめた二つの辞令 元講談社 平澤尚利
谷崎で始まり谷崎で終える 元中央公論社 前田良和
岩波書店における徒弟制度 元岩波書店 今井康之
《特別講演》谷崎潤一郎と編集者たち 千葉俊二
講演を聞いて 千葉俊二 × 長谷川郁夫
満州文藝春秋社の址はどうなっているか 和賀正樹
飯田から善光寺へ―『一遍聖絵』の旅 石塚純一
メディアの公共性と流通の制度的保障―デジタル時代の公共を探る 山田健太
死と死者の文学④ 姿を変えて潜むもの―今昔的世界と近代 佐藤美奈子
久保より江―小村雪岱と泉鏡花の出会いの媒介者として 真田幸治
本をいただく 堀山和子
酒と煙草と志ん生と 和気元