フランクフルト・ブックフェア出展体験
こんにちは。まむかいブックスギャラリーの木村由加子です。
新型肺炎で大変な折、みなさまの体調、仕事の進行は、大丈夫でしょうか。
深刻な事態が、はやく、ぶじに、おさまるよう、私も日々、切に祈っています。
さて弊社にとって、版元日誌は、
2012年4月「出版営業が楽しくて」
2014年12月「東京絵散歩「どの風景が好きですか?」
についで、3回目の投稿となります。
版元ドットコム事務局の寺門さんからお声をかけていただいたとき、「今回パスすると、次に順番がまわってくるのは3、4年くらい先ですよー」と聞きました。
参加会員が約360出版社になったので、単純計算でも、全社一巡するのに、7年くらいかかるとのこと。
弊社が入会させていただいた2008年頃は、たしか120社だったと記憶しているので、この10年で、会員社がなんと3倍に!!!
これは貴重なチャンスだと思い、元気なうちに(笑)、書かせていただくことにしました。
まだお目にかかっていない会員社のみなさま、紙面をかりて、よろしくお願いいたします。
☆
この日誌のテーマを考え始めた頃、ちょうど「フランクフルト・ブックフェア2020」の出展説明の案内が届きました。
・2020年の会期は10月14日(水)~18日(日)
・会場は例年と変わらず、メッセ・フランクフルト
https://www.buchmesse.de/en/exhibit
・ジャパンブースは昨年と同様、書協が運営し、トーハン海外事業部が実務協力
・出展の説明及び問い合わせは3月初旬より開始
・出展の申込締切は4月24日(金)予定
とのこと。
フランクフルト・ブックフェアは、あまりにも有名なので、通われている方、出展経験のある方も多数いらっしゃると思いますが、弊社のような ”ほぼひとり出版社” も出展できたという一例として、2019年の出展体験を、少しお話したいとおもいます。
フランクフルトへの出展を決めたのは、弊社の英文トラベルブックシリーズの4アイテム目「CONNECTING YOU TO WONDERLANDS japan」を、2019年3月に刊行したのがきっかけでした。
それまで北米と東南アジアでは、企画前のリサーチや、刊行前後のマーケティングで、日本への旅行に関心のある人々の声を、一定程度拾うことができていたのですが、欧州へのアプローチは、まったく手つかずの状態。
そこで、新刊を含めた4アイテムをフランクフルトに持ち込み、会場を訪れるお客様の意見を聞いてみたい、と思ったのです。
「出品」(ジャパンブース内の出品コーナーでの展示。1アイテムから申し込み可能で、会期中に現地に行かなくてもOK)ではなく、「出展」(ジャパンブースの中に自社の棚を設け、自社のスタッフを派遣する)を選んだのは、一つに、現地の人々と直に話したかったから。そして、ありがたいことに、出展費用の一部の助成を受けることができたからです。
とはいえ、出展して渡航するとなると、実質持ち出しでもゆうに50万円かかります。
当然ながら、費用相当分の結果を出すことを検討しました。
フランクフルト・ブックフェアは、会期前半がB to B いわゆる出版社・エージェンシー間の版権交渉で、会期後半がB to Cとなり、ヨーロッパ各地から、本の好きな人々が約28万人来場します。
そこで弊社は、次の2項目を達成目標としました。
1.会期前半は、版権交渉10社以上、うち3社以上と具体的に話を進める
2.会期後半は、ジャパンブースを訪れるお客様のうち、日本への旅行に関心のある人100名にアンケートを実施する。うち特に日本が好きそうな人10名に、15~30分程度のインタビューを行う
具体的なアクションとしては、1.の版権交渉の準備では、7月頃から約3か月かけて、私たちがミーティングを行いたいと思う各国の出版社に、メールや電話でアポイントメントをとりました。
各国の出展社リストは、会期の数か月前から、フランクフルト・ブックフェアの公式サイトに掲載されます。そこには各出展社の特徴や得意なジャンル、公式サイトなどが掲載されているので、自社と刊行ジャンルが近く、交渉がかないそうな出展社を、ある程度、絞り込むことができました。
最初にリストアップしたのは約80社、実際にアポイントメントをとったのは約50社、メールの返事が来たのが14社で、そのうちの10社と、会期前までに、会場内外でのミーティング日時を決めることができました。
他業界の展示会に出展しなれた知人のアドバイスで、この方法を採ったのですが、「展示会の成功は、事前準備で9割決まる」という知人の言葉通り、事前に日程をしっかりかためることができたおかげで、現地到着後から時間のむだなく、密に動くことができた点が、よかったと思います。
会期中は、ノーアポイントメントの名刺交換も含めて、B to Bで約30社と話しました。そのうちの3社とは、いまもメールのやりとりが続き、版権売買、共同出版の話が進んでいます。
2.のアンケートについては、旅行業界のトラベルショーで「CONNECTING YOU TO WONDERLANDS japan」を紹介してもらった折に、ブース隣の旅行会社がおこなっていた、「プチプレゼントつきアンケート」をヒントにして、試みました。
アンケートはA4 1枚、質問は5項目に抑えるようにし、最初3項目を選択式、最後2項目を記入式にしました。冒頭には、EUの個人情報保護を遵守する1文を書き添えました。
そのアンケートシートを、英語とドイツ語、フランス語の、3言語のバージョンで用意し、各自が望む言語のシートで回答できるよう、それぞれ十分な枚数を用意しました。
プチプレゼントは、日本旅行で人気のおみやげ、キットカット抹茶味や、てぬぐい、寿司マグネットなど。百円ショップは、海外向けのプチプレゼントの宝庫でもあります。
結果は、ジャパンブースのみなさんの協力も得て、3日間で10名へのインタビュー、100人へのアンケートがかないました。
実際に使ったアンケートシートは、ドイツ語が約60枚、英語が約40枚、フランス語が1枚でした。
ヨーロッパは2~3ヶ国語を話せる人が大変多く、「ドイツ語、英語、どちらのシートでもいいですよ」という声多数。中には、6ヶ国語を使えるというウィーン出身フランクフルト在住の女性もいて、彼らの学びの広さに、しばしば驚きました。
アンケートシートに日本語で、「アニメ」「かまくら よかった」などと答えてくれる若者もいました。
「日本のまんがを好きで、何が書いてあるかを知りたくて、日本語を勉強するようになった」という話を、よく聞きました。
コミックやキャラクター系の本を目当てに、ジャパンブースを訪れる人も大変多かったです。
会期中の会場の様子などは、弊社のフェイスブックに、リアルタイムでアップロードしたタイムラインが残っていますので、よろしければのぞいてみてください。また、出展を考えていて、ちょっと知りたいことがあるという方は、弊社でわかることはお答えしますので、お気軽にご連絡ください。
https://www.facebook.com/mamukai.jp/
最後にジャパンブースに参加してよかった点を。
申込から当日までにおこなうべき作業のタイムテーブルは、事務局で組まれて、都度、案内や指示があるので、出展社は自社の準備に集中できます。
また、フライトやホテル、通訳などの手配も、出展社側の必要に応じて、事務局を介してお願いできます。
出展社はブースや棚の設営にも気をもむ必要がなく、現地に着いたら、自社の棚に、自社の本やパンフレット類を並べ置けばOK。あとは会期中、どっぷり営業に集中できます。
弊社はこの出展が、ブックフェアへの初出展でもありましたが、なにかとわからない点を、事務局に相談しながら進められたことが、とても心強かったです。
「フランクフルト・ブックフェア2020」は、ちょうど、出展申し込みが始まったばかりです。出展のご案内も配布中とのことなので、興味のある方は、お問い合わせされてみては、いかがでしょうか。
日本書籍出版協会(樋口さん・吉野さん)
yoshino@jbpa.or.jp TEL.03-6273-7061
(2020年3月1日付情報です)
世界中のコロナの収束を願いつつ—―。