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歌集 宇宙時刻
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2024年9月5日
- 登録日
- 2024年7月1日
- 最終更新日
- 2024年8月29日
紹介
昭和期に活動していた謎多き口語自由律の歌人、小関茂。
彼が生前に遺した、諦念とニヒリズムに満ちた不思議な魅力を放つふたつの歌集をひとつにまとめて復刻。
栞(小冊子)付き、執筆者はphaさん、東直子さん、町田康さん。
【代表歌】
風が飛んでくる、風を裂いてゆけば、森の上のコンクリートタワー
自分がちっぽけにちっぽけになって歩いてるいちめんの麦の芽の中を
なんといふたのしさだ、なんといふさびしさだ、なんといふ長い橋だ
にんげんが原っぱの中から出てきたよ、みんなすゝき持ってこっち見たよ
こんなことが、こんなことが、生きていることだったんだ。こんなことが
笑った。むざんにも笑った。弁解しないために俺は笑った
俺は俺に唾を吐きかけた。だがやっぱり俺を抱きしめていた
俺はあぶなく茶碗をわるとこだったので、窓から茶をぶちまけた
ヨーヨーをやってみた。誰も満足に出来ないのでみんなそれで満足した
橋のむこうを見ていたが、そうだ、幾年も俺はふせぐことばかり考えてきた
ひとりでに頭を低れ、だれにとも知らず、ただゆるされたいとねがう
おまえそれは何かを捧げ尽くそうとして捧げきれなかった悲しみなのか
一人の俺は野垂れ死んで夜通し唄っていたばかの方は生きてるらしいな
夢も見ずに眠れるんだからそりゃたしかに悪はしてないんだね
三年間食うや食わずでためたのに殖産金庫でフイでさと豆腐やは笑う
おやここにも腰ぬけ人生よしなよ坊やと手をふる親父もインテリか
意味もなく一本のマッチ燃えるまで見ているというそれだけのこと
愛とか恋とか生活とかいってもしょせんは餌と子孫のための五十年です
猫にもノイローゼがありまして家の餌よりはごみためが好きなんです
こんな夜も人工衛星は回っているのねうん彼も自然の一部になったからね
煙草の火をじっと凝視めることもある人が見てなきゃ硝子ぐらい割るさ
目次
小関茂歌集Ⅱ
第1部
橋
秋
くもり日
硝子の列
早春の自然
街はずれ
夜の火
自然への氾濫
郊外
河と曠野
利根河口
恐ろしき無為
夜・その他
煙突
真昼の街
独居
河
笑った
乱酔
夜々
春の日に
転機
失業
浴槽
新しい性格
猫
母
第2部
青年
船・港
熊 (1)
理三のこと
熊 (2)
月へ
夕陽の街
新年
河のほとり
夜中の男
トマト潔
灯火管制の夜
心理学
山霊
早春心象
その内なる世界
六月
八月・九月
四月・五月
梧桐
第3部
らっきょう
光る幹の下で
晩春
夜の橋
山の日記
男
旗
生きるはじめ
時間・空間・生命
早春
雨の坂路
無題
電車
麦と月
萬有の眼
痴呆のように
屈折異状
河
落日
涼秋
眼
あとがき(小関茂歌集Ⅱ)
小関茂歌集Ⅲ
墜落1
墜落2
谷間
豚妻愚夫
春のころ
夏の偶話
ふしぎな季節
炎熱の季節
それだけのこと
わらい
春と血
いびつ
宇宙と人間
命なき記憶
てのひら
滅びずにあれ
垂直の世界
大脳組織学
落ち葉のころ
きわまりて
肉体1
肉体2
肉体3
一瞬
そやつ1
そやつ2
そやつ3
そやつ4
そやつ5
そやつ6
内部視野の歌
あとがき(小関茂歌集Ⅲ)
版元から一言
小関茂は口語自由律短歌を得意としていた歌人です。
歌集全体の雰囲気としては、諦念やニヒリズムといった要素が強く、種田山頭火や尾崎放哉に似た雰囲気があります。様々な職を転々としながら、歌を詠んでいたようです。
上記内容は本書刊行時のものです。