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デジタルおしゃぶりを外せない子どもたち ウッラ・デュアルーヴ(著) - 子ども時代
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デジタルおしゃぶりを外せない子どもたち (デジタルオシャブリヲハズセナイコドモタチ)
原書: Faa styr paa dit barns digitale verden

教育
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発行:子ども時代
A5判
縦210mm 横148mm 厚さ22mm
重さ 450g
296ページ
並製
価格 2,600円+税
ISBN
978-4-9912293-0-5   COPY
ISBN 13
9784991229305   COPY
ISBN 10h
4-9912293-0-8   COPY
ISBN 10
4991229308   COPY
出版者記号
9912293   COPY
Cコード
C2037  
2:実用 0:単行本 37:教育
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年6月14日
書店発売日
登録日
2022年2月22日
最終更新日
2023年7月14日
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受賞情報

作者監修のドキュメンタリ番組が、教会&メディア功労賞を受賞。

書評掲載情報

2023-07-21 SBC信越放送モーニングワイドラジオ    2023年7月21日
評者: 書肆朝陽館、荻原英記さん
2023-03-07 群像    2023年4月号
評者: 枇谷玲子「親子関係と「デジタルおしゃぶり」を考える」
2022-10-24 子どもの本棚  2022年11月号
2022-10-24 子どもの本棚  2022年11月号
2022-07-27 HugKum(はぐくむ)  
評者: 日下淳子
2022-07-14 新文化    2022年7月14日号
評者: 新文化、三浦俊介
2022-07-07 YAA!YAA!YAA!  23号
評者: 翻訳者による寄稿
2022-06-18 exciteニュース  
評者: BOOKウォッチ編集部
2022-03-17 小説すばる    4月号
評者: 夢見るお皿のコーナーで訳者が本書についてのエッセイを執筆
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紹介

 デンマークで心理士として働く著者は、近年、デジタル世界とどう付き合えばいいか悩む親子の声を頻繁に耳にするようになってきた。せっかくの家族団欒の時間に、ゲーム機や携帯電話の画面をのぞき込んでばかりいる子、SNSに投稿した写真や動画の反応が気になっていつも上の空で、家族とろくに口をきかない子、ゲーム依存に陥り、部屋に閉じこもって不登校になる子……。

「電源を切ってしまえばいいじゃないか」と世間の人は言うのかもしれないが、ことはそう単純ではない。子どもたちの多くが、学校の授業や家での宿題にタブレットの使用が必須になってきている今のデンマークでは、デジタル機器の使用を禁じるのはかつてほど容易でなくなってきているのだ。
 
 子どもたちがデジタル世界に興味を持つきっかけとなっているのは実は親であると著者は指摘する。親が1日に何度も画面をのぞき込む様子を目にしながら育った子どもたちが、「あれはとても面白いものなんだな。もしかしたら自分たちより大事なんじゃないか」と思うのも無理はない。

 さらに著者は、子どもを1人、デジタル機器で遊ばせたままにして、わが子がデジタル世界上の何に興味を持っているのか、知ろうとしない親が増えてきている、と警鐘を鳴らす。

 子どもたちのデジタル・ライフに親が興味を持ち、ともにわくわくしながら会話し、楽しみ、子どもの心に寄り添うにはどうすればいいのか、ICT教育先進国デンマークの心理士が実例とともに示す。

目次

はじめに 親は子どものデジタル世界と、どう向き合うべきか
第1章 子どものデジタル世界に親も参加しよう
第2章 デジタル世界と家庭
第3章 デジタル世界の幼い子どもたち
第4章 子どもはインターネットで何を見ている?
第5章 子どもがゲームをしたがる理由を知ろう
第6章 ソーシャル・メディアと上手に付き合おう
終わりに 子どもともっといっしょにいよう

前書きなど

はじめに  親は子どものデジタル世界と、どう向き合うべきか

 この本の執筆に当たりに、Facebookにこんな投稿をしてみました。「お子さんがいらっしゃる方に質問です。お子さんのデジタル・ライフについて、疑問や悩みはありますか? 具体的な内容も、よければお聞かせください」
 するとものの数分で、コメント欄がこんな質問で埋め尽くされました。

●子どもが携帯やゲームの画面を見てよい時間を定めた方がいいのでしょうか? もしそうなら、どの時間帯に、1日何時間まで見てよいことにすればよいですか? 制限することで、弊害は生じるものなのでしょうか?

●子どもたちが学童保育や課外活動でデジタル機器を使うことについて、保護者はどういう立場をとればいいのでしょう? 他の家庭と必ずしも意見を合わせる必要はないですよね?

●デジタル世界は、子どもたちの社会性に長期的、短期的に、どう影響するのでしょうか?

●犠牲者の見えづらいネットいじめを防ぐためには、オンライン・ゲーム上の人付き合いについて、どのような道徳的、倫理的ルールを定めるべきなのでしょう?

●子どものプライバシーの尊重と、児童保護とのバランスをどんな風にとればいいのでしょう? 例えば、お友だちとのメッセージのやりとりを、親がチェックしてよいと思いますか?

●世の中には、子どもたちの幸せを必ずしも願わない大人もいて、そういう大人がネット上で子どもになりすますこともあるということを、どう説明したらいいでしょう? 説明次第で、大人への不信感を抱かせはしないでしょうか?

 心理士の仕事をする中で私は、社会階層も、子どもの年齢も、住む地域も実に様々な親と対話してきました。その親たちは、皆共通して、デジタル社会という荒波に、親も子も飲みこまれないようにするために、どうしたらいいか分からないと悩んでいました。あなたが親として、子どもを教育するに当たり、科学技術の発展とどうどう向き合ったらよいか確信が持てないのも、無理はありません。この疑問に行き当たった親のほとんどが、分からずにいるのですから。そしてそれには十分な理由があります。世界中で巻き起こっているこの一大現象は、驚くことに、ほとんど認識されずにいるからです。また、発表されている調査結果が、利権に左右されていないとも言い切れないからです。
 デジタル世界にまつわる問題は、絶えず複雑化が進み、それゆえ親がパイロット役を果たすのがますます難しくなってきています。私自身は子どもが小さい頃、いくらせがまれても、ゲーム機を与えませんでした。急いでいる時や、せっかくの家族団欒の場で、子どもたちがゲーム機を手放さなくなるのが嫌だったからです。現在では子どもたちの多くが、学校の授業や家での宿題にタブレットを使わなくてはならなくなってきているので、電子機器の使用を禁じるのはかつてほど、容易でなくなってきています。なので、別の基準を設ける必要性が生じてきているのです。今の親はかつてない問題とジレンマに直面しているのです。私たちの世代は、YouTubeやNetlix、ソーシャル・メディアやコンピュータ・ゲーム、ネットいじめやリベンジ・ポルノについて、子どもたちのパイロット役を果たさなくてはならない初の世代なのです。それでも、世間は子を持つ親に、どう振る舞うべきか、訳知り顔で、あれこれ指図してくるでしょう。「電源を切ってしまえばいいじゃない」というのがよくあるアドバイスの1つですが、残念ながら、ことはそう単純ではありません。
 デジタル世界についての保護者の知識が十分でないと、境界線を定めるのも、自分がどうしてそのような決断を下したのか、子どもに伝えるのも難しいでしょう。子どもと大人共通の家庭内ルールを定めるのは、ただでさえ難しいのに、科学技術の可能性と限界について、親が十分な知識を持ちあわせていないと、なおさらです。知識不足は、親の心に不安をもたらします。そしてその不安は、子どもたちにたちまち伝染し、さらに家族内に広がりかねません。不安は強烈な無力感へと変容し、家族皆がデジタル機器に際限なくアクセスしてしまうことになりかねません。ビーチや森、レストランや観光地に、子どもたちがタブレットを持っていくのをつい許してしまうでしょう。子どもたちが無制限にゲームをしたり、ブログやYouTubeチャンネルに投稿してばかりいることで、現実世界での活動に支障が生じかねません。社会生活や学習、幸福や健康に、テクノロジーが長期的にどう影響するのか、子どもたちにはまだ分からないということを、忘れてはなりません。将来を見据え、長期的に考え、子どもたちが健康的な環境で成長できるよう、正しい決断を下せるのは、大人だけであり、大人の責任で、決めなくてはならない事柄がいくつかあります。
 デジタル化が深刻な結果をもたらしうることは、否定しようがありません。影響は、すでに現れはじめています。心理士として私は、デジタルとの関係性が完全に常軌を逸してしまっている子どもや家族を、たくさん目にしてきました。睡眠障がいを抱えていたり、落ち着きがなく、集中力を欠いたりした子どもと、毎日のように話をしてきました。子どもが恐怖やストレスを抱えているようだと親から相談されたり、孤独にさいなまれ、最終的には不登校になってしまった子どもたちの話を耳にしたりする機会も増えてきました。ゲーム依存に陥り、自力で抜け出せなくなった子どもとも会ってきました。そのような子どもたちは、親を見つめ、こう言うのです。「何も好きこのんで、四六時中、画面の前に座っているわけじゃない。そうせずにいられないんだよ」私はネットいじめやリベンジ・ポルノのもたらす深刻な結果を、身をもって体験した人と、これまでたくさん出会ってきました。いじめ自体が深刻な問題ですが、それがデジタル世界に場所を移すと、ますます子どもたちを守り切れなくなります。今の子どもたちは学校にいる時だけでなく、四六時中、常に、数千、数万、いえ、さらに多くの会ったこともない人から、いじめを受けうるのです。更衣室で知らない間にか撮られた動画が突然、「見て見て、汚い背中!」というコメントとともに投稿されることもありえます。私は、こういった体験により、自尊心がすっかり傷つけられた子どもや若者に会ってきました。自分の姿を誰にも見られたくないと閉じこもり、恥の意識にさいなまれ、生きる意欲をも失ってしまった子たちに。自分の子どもがそのような侮辱をしたか、またはされたかに拘わらず、親として、これらの問題に大なり小なり向き合う必要があります。
 子どものデジタルメディアの利用について知りたければ、何よりまず、子どもたちのデジタル世界の入り口が、タブレット・ゲームではないことを理解してください。子どもたちは、親や他の大人を観察することで、デジタル世界をはじめて知るのです。ヘッドセットをつけ、歩きながら、誰も人がいない方向に話している大人は、小さな子どもの目に、どう映るでしょう? 親が1日に何度ものぞきこむ画面について、子どもたちはどう思っているのでしょう? 親が写りのよい写真を選ぶため、画面を真剣に見つめる姿を目にした子どもたちは、あれは自分よりずっと面白いものなんだ、と思うことでしょう。やがて子どもたちは、家庭という安全でプライベートな空間で繰り広げられていたとばかり思っていた物事が、実はもう何年も前から、ソーシャル・メディアで共有されていたことに気付くでしょう。デジタル化により、家庭と外の世界の境界線の多くは消失してしまったのです。夜の家族団欒や休暇中や週末に、仕事のメールが携帯電話にポンと入ったり、学校との連絡アプリに、宿題や学校内であった喧嘩の情報が送られてきたり。
 今の子どもは、インターネットやタブレットやテレビ・オン・デマンドがなかった時代を、知りません。私は88歳の老人が、10~12歳の子ども20人と博物館で出合った時の話を聞いたばかりです。老人が「普段、何をして遊んでいるんだい?」と尋ねると、子どもたちは、「いつもタブレットばかり見ていて、それ以外ではほとんど遊ばない」と答えたそうです。その老人が、子どもだった頃にどんな生活を送り、どんな遊びをしていたのか話すと、子どもたちは興味津々。昔の子どもがどんな暮らしを送っていたのかその時はじめて知ったようだったと老人は言っていました。「テレビもタブレットも携帯電話もコンピュータもなかった時代の子どもは、一体、何をして過ごしていたの?」子どもたちはほんのささいな物事にも興味を示すものです。大人が説教じみた退屈な話をせず、自分たちとともにくつろぎ、いっしょに世界を知ろうとする限り、いっしょにいたいと願ってくれるでしょう。
 1日に2~3時間、インターネットを切ることで、皆さんの無力感や多くのジレンマがなくなればよいのですが、きっとそれだけでは解決策として十分ではないでしょう。デジタル化がもたらした、目に見えない変化とともに生きるため、まずはお子さんにデジタル世界について教えましょう。これには、子どもといっしょの時間を過ごす必要があり、インターネットを切るよりも骨が折れます。この世の中には、親子で楽しめる豊かなアクティビティがたくさんあるのに、あなたは見逃してしまっていませんか? あなたが親として子どもと過ごす時間を確保し、あなたの子どものデジタル・ライフに関心と好奇心を示し、子どもに寄り添うことが必要なのです。
 デジタル世界とそれに伴う行動、しつけについて指針が築かれる前に、インターネットが使われるようになってしまいました。私はあなたが親としてあなたのお子さんのデジタル世界とどう向き合うべきか、具体的なアドバイスを示したいと思っています。デジタル世界に向き合うのは、子ども1人でなく、親子でなのです。

版元から一言

 近年ヒットした『スマホ脳』をはじめ、デジタル機器が人間に及ぼす影響について、北欧の研究が日本でも大いに注目されています。
 ICT教育先進国デンマークでは、日本以上に、子どもたちのデジタル依存が深刻化しているようです。そんな子どものカウンセリングを行ってきた心理士が実例を示しながら、デジタル依存から抜け出すメソッドを示します。
 子ども時代は『キュッパのはくぶつかん』『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』など70冊以上の作品を訳してきた訳者がはじめた北欧専門の出版社です。
 今回の作品では、翻訳者自らイラストレーターに依頼をし、多数のイラストをつけてもらうことで、専門的な内容を、ビジュアルで示し、分かりやすくしました。また校正も2名に依頼したりと、長い時間をかけ、丁寧に作った思い入れのある作品です。
 ご注文をお待ちしております。

著者プロフィール

ウッラ・デュアルーヴ  (ウッラ・デュアルーヴ)  (

 1966年、グリーンランドで生まれ、小学2年生の時にデンマークに移り住む。
 1999年に大学の心理学部を卒業後、スクール・カウンセラーに。2006年、カウンセリング会社を共同設立。講演、カウンセリングなどを行っている。
 2013年、デンマーク国営放送のドキュメンタリ番組『制御のきかない若者たち』に、2016年、『遅すぎることはない』に出演、監修。
 2019年に出演、監修した番組『デジタル・メディアが家族を支配する時』に対し、教会&メディア功労賞を授与される。
 2014年、『子どもたちのパイロットになろう』で作家デビュー。2015年、『プロのハグ――専門家の皆さんへ』『巣立ち――大人になる手助けをする』(いずれも未邦訳)、2018年、本作『デジタルおしゃぶりを外せない子どもたち』を発表。

ナシエ  (ナシエ)  (イラスト

 イラスト・コミックエッセイ・絵本・キャラクターを制作。子ども、女性、ファミリーを中心に明るく優しいイラストを得意とし、雑誌、書籍、教材、Web、広告、絵本、壁画等で活躍。
 北欧好きが高じて旅行や文化をテーマにした本を4冊出版。最新の著書は「子どもと旅する北欧フィンランド-エストニアにもショートトリップ-」(主婦の友社)。北欧関連のイベントでトークやワークショップ、自身のイラスト展を行うなど、北欧の魅力を広めるため活動中。

【WEBサイト】http://www.nashie.com 【Twitter】@nashie748
【Instagram】nashie_illustrator

枇谷 玲子  (ヒダニ レイコ)  (翻訳

 翻訳家。1980年、富山県生まれ。デンマーク教育大学児童文学センターに留学(学位未取得)。大阪外国語大学(現大阪大学)卒業。翻訳会社でオンサイトのチェッカーの経験を経て、翻訳専業に。
 『キュッパのはくぶつかん』(福音館書店)、『カンヴァスの向こう側』(評論社)、『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』(岩崎書店)、日本翻訳大賞ノミネート作、『きのこのなぐさめ』(共訳、みすず書房)『MUNCH ムンク』(誠文堂新光社)、ベストセラーになった『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など70冊以上の訳書を手がける。

上記内容は本書刊行時のものです。