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私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE 安達 茉莉子(著) - 三輪舎
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私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE (ワタシノセイカツカイゼンウンドウ ディスイズマイライフ)

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発行:三輪舎
B6変形判
縦174mm 横117mm 厚さ16mm
224ページ
仮フランス装
価格 1,800円+税
ISBN
978-4-910954-00-4   COPY
ISBN 13
9784910954004   COPY
ISBN 10h
4-910954-00-7   COPY
ISBN 10
4910954007   COPY
出版者記号
910954   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年9月15日
書店発売日
登録日
2022年7月27日
最終更新日
2024年8月26日
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重版情報

5刷 出来予定日: 2024-08-06
4刷 出来予定日: 2023-10-25
3刷 出来予定日: 2023-01-24
2刷 出来予定日: 2022-11-10
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紹介

これは、ひとりよがりの贅沢ではない。--ひとの日常、ひとの営みが軽視される日々にあらがう、意地なのだ。

日常において、とても些細なことだけれど、気にかかっていること。タオルやシーツ、ゴミ箱、セーター、靴、本棚……。これでいいやで選んできたもの、でも本当は好きじゃないもの。それらが実は、「私」をないがしろにしてきた。淀んだ水路の小石を拾うように、幸せに生活していくための具体的な行動をとっていく。やがて、澄んだ水が田に満ちていく。――ひとりよがりの贅沢ではない。それは、ひとの日常、ひとの営みが軽視される日々にあらがう、意地なのだ。それが“私”の「生活改善運動」である。

手づくりのZINEとしては異例のシリーズ累計五千部を記録した大人気エッセイ『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』を、5万字の書下ろしとともに再構成。待望の単行本化!

装丁:矢萩多聞(Ambooks)
校正:牟田都子

目次

◉(私の)「生活改善運動」とは―はじめに
 ― (私の)生活改善運動の師匠たち
 ― 人格否定を伴わない生活の改造

◉新しいことが起こるとしたら―新生活編
 ― 住むこと・暮らすこと
 ― 新生活の始まり
 ― 人生は選択の連続?

◉本棚は生活必需品?―本棚編
 ― 本棚をつくろうと思ったきっかけ
 ― 理想の本棚とは一体なんだろう
 ― 本棚づくり、実践編
 ― できあがった本棚、DIYをすることの意味
 ― 本棚が家に来てどうなった?
 ― 「こころの底ふかく沈むもの」

◉食べることは生きること?―食事編
 ― 食は私から自由を奪う?
 ― 変化と水筒
 ― 器を買う
 ― 私を自由にする料理
 ― 自由になるとは
 ― おいしいと感じること
 ― 食べること、生きること

◉魂の一番外側―服にまつわるロスト&ファウンド編
 ― 「ボロ」とはなんだろう
 ― で、何を着ればいいんだろう
 ― 「良い生地」の服
 ― 服が好きなひとたち
 ― 買いもの行動を変える
 ― そしてアナザーワールド
 ― 服をつくる
 ― 完成へ
 ― 自分の手で美しいものをつくる

◉砕けた欠片、小さな旅、楽園―生活〝回復〟運動編
― ブロークンミラー(文字どおり)
 ―部屋からの逃避
 ―「浄化」
 ―母の生活
 ― 生活“回復”運動
 ― “制作”改善運動
 ― 楽園・壊れた欠片を拾って

◉幸せなほうを選んでいく―おわりに

◉日々の化石―あとがき

前書きなど

 ふと部屋にいて、「私はいまここにいて幸せだ」と感じることがある。
そう思えることは、幸せなことだ。

 小さなダイニングキッチンのある、七畳の木造アパート。遠くに横浜ベイブリッジが見渡せる小高い丘のてっぺんにあり、強い風が吹くと窓ガラスがガタガタ揺れる。カラカラと窓を開けてその風を迎え入れると、部屋の空気がさっと一新される。坂道を上り汗だくになった体でシャワーを浴びて部屋着に着替え、ダイニングに置いた、新しく買った革張りの椅子に座ってその風に吹かれているとき、私はただ静かな幸福感に包まれる。旅先の旅館の窓辺で温泉上がりに涼んでいるときのように、小さなころに田舎の家の畳の上で、田んぼの薫りを含む風にただ吹かれて、蟬の声、祖父母、父、母、弟、妹の声、退屈なテレビの音、柱時計の音を聴いていたときのように。
 横浜、妙蓮寺。上京してからずっと中央線沿線に住んでいたが、コロナの影響で突如勤め先がなくなったことをきっかけに十年以上住んでいたマンションを出た。千葉に住む妹夫妻宅での居候生活を経て、二〇二一年の二月にこのまちに越してきて、生活をつくり始めた。引っ越し荷物を運び、家具を置き、調味料を揃える。ここを私の場所にしていかなければならない。確かな、私の居場所に。
 新しい生活をつくっていくこと。それは、私にとっては一大プロジェクトであり、大きなチャンスだった。千葉に引っ越したときに、家具はほとんど手放していた。人生でここまで身軽になることはもうないんじゃないかというくらい、まっさらな状態から部屋と生活をつくっていくことになる。
 どんな部屋、どんな生活にしていくのがいいだろう?
 絶対に、絶対に譲りたくなかったことがある。
 それは、そこが幸福が生まれる場所となるかどうか、ということだった。

 元々、住むところには何のこだわりもなかったが、それが永久に変わったのは、いまから数年前のことだった。
 そのきっかけは、知人が何気なく言った、「生活改善運動」という言葉だった。
 あまり馴染みがないかもしれないその言葉を聞いて、思い浮かべるものはなんだろう?片付けや掃除の改善、整理整頓だろうか。栄養状況の改善だろうか。だけどこのエッセイは、片付けや整理術について書くものではない。
 生活改善運動という名前の運動は、日本の歴史のなかで実際にあった運動だ。ただし、このエッセイでは、あくまでも私が自分なりに理解し、個人的に実践してきた定義でこの言葉を使わせてもらいたい。それは、自分にとっての心地よさ、快・不快を判別し、より幸福なほうに向けて生活の諸側面を改善していく自主的で内発的な運動だ。
 タオルやシーツ、ゴミ箱、セーター、靴、家具など具体的なモノから、住居や仕事、人間関係など様々なレベルで、自分にとっての幸せが何なのかを探り、幸せに生活していくための具体的な行動をとっていく。「これでいいや」で選ばないこと。「実は好きじゃない」を放置しないこと。
 生活改善運動という言葉が私の人生に入ってきてから、私は生活のなかの幸福を意識するようになった。片付けが好きかと問われたら苦手だし、そういう話に興味があるわけでもない。私が興味があるのは、毎日の家事や睡眠、部屋で過ごす時間がどうすれば心地よく幸福なものになるのかというその一点だ。
 「活動」と「運動」の違いを調べてみる。
 「活動」が行動や働きを行うことを指しているのに対して、「運動」はある種の目的意識や、働きかけを伴うもののようだ。私の場合は誰かに働きかけているわけではないけれど、確かにひとつの目的意識を持った、継続的で自主的なムーブメントだ。
 自分が心地よいと思うほうに生活を改善していく。ひとに話を聞き、足を運んでみて、偶然出会ったりして、生活が変わっていくことを楽しむ。貴族の遊びのように聞こえるかもしれないし、実際そうなのかもしれない。だけど、自分なりに実践してきてみてわかった。生活を改善するということは、単にクオリティ・オブ・ライフを高めていくだけにはとどまらない。ある種の自己尊厳に関わるものであると気づき始めた。
 生活のあちこちを少しずつ変えてきた。完全じゃないままで、壁のタイルの一部だけを磨くように、投げ出したくなりそうなしっちゃかめっちゃかの混沌に、とりあえず手を差し込んで、その手のひらが届くところだけでも変えていくように、文字どおり〝手を入れる〟ようにして。
 一日一日、一瞬一瞬絶え間なく続いていく生活こそが人生だ。生活を少しずつでも変えていけば、生活は大きく変わる。いつしか自分がまるで違う流れ、違う軌道に運ばれる。
 このエッセイでは、私が実践してきた生活改善運動について綴る。ただの日常の記録でもあるし、ときに、別のひとがつくってきた生活に触れた記録でもある。誰かとそのひとの生活について話をするのは、楽しい。「やかんって使ってます?」という会話だけでも。それは、誰かの生活に触れることだ。誰かがつくっている生活に触れると、私は温かくなる。そのひとの生活を知ることは、そのひとの生きかた、ひとつの人生の片鱗に触れさせてもらうことでもあるからだ。
 私の生活は、雑誌で紹介されているようなハイレベル・ハイクオリティのライフスタイルには到底及ばない。生活の玄人たちがこのエッセイを読んだとき、恐ろしく初歩的なことしか書いていないと怒り出さないか少し心配している。それでも、綴ってみることにする、私が私なりにつくろうとしてきた、「生活」について。そして、そこから生まれてきた「幸福」について。

版元から一言

著者の安達茉莉子さんは2020年12月、本書の版元である三輪舎が横浜・妙蓮寺で開業した「本屋・生活綴方」で個展を開催したことをきっかけに、妙蓮寺に引っ越してきました。本書は、この本屋に集う人々との出会いや他愛のないやりとりのなかから生まれました。

そもそも本書のもととなったのは、「本屋・生活綴方」の出版部門「生活綴方出版部」発行のZINEシリーズ『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』です。ページ数は4~50ページ程度、文庫版の小さな読みもので、初版は200部。印刷は書店併設の印刷工房にあるリソグラフ印刷で、製本はすべて人力。当初からお客様からの反響が高かったものの、小さな本を小さくつくり、自分たちの本屋だけで小さく売っていこうと思っていました。1~2ヶ月に1号のペースで発行していきましたが、号を重ねるごとに全国の書店から注文が相次ぐようになりました。手作りですから一度に作れる部数はたかが知れています。本屋に集う有志たちと一緒にせっせと作り続けてきた結果、増刷につぐ増刷で、Vol.4までの累計で五千部を発行しています。

ローカルなもの、ローカルに根ざした生活が志向されているコロナ禍において、この本にはたくさんのヒントがあると思います。ぜひご一読ください。

※もともとのZINE版のVol.4「ーまちへ、道へ、未知へー」(自転車編)に収録していた内容は、今回の単行本には収録していません。ほぼ同時に刊行される『臆病者の自転車生活』(亜紀書房)に収録される予定です。本書とともにぜひお楽しみください。

著者プロフィール

安達 茉莉子  (アダチ マリコ)  (

作家、文筆家。大分県日田市出身。東京外国語大学英語専攻卒業、サセックス大学開発学研究所開発学修士課程修了。政府機関での勤務、限界集落での生活、留学など様々な組織や場所での経験を経て、言葉と絵による作品発表・エッセイ執筆を行う。著書に『毛布-あなたをくるんでくれるもの』(玄光社)、『臆病者の自転車生活』(亜紀書房)ほか。
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上記内容は本書刊行時のものです。