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ワーク・ライフ・バランスと生涯学習
すべての働く人々のために
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年9月10日
- 書店発売日
- 2024年9月3日
- 登録日
- 2024年5月23日
- 最終更新日
- 2024年8月30日
書評掲載情報
2024-12-09 |
日本教育新聞
2024年12月9日 評者: 浅田和伸(長崎県立大学学長) |
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紹介
ワーク・ライフ・バランス社会を実現するためには,その対象を子育てや介護を担う人に限定されるものではなく,すべての働く人々へと広げていくことが求められます。また,子育てや介護に加えて,生涯学習にとって重要な要素である学習活動・地域活動・ボランティア活動を充実させていく必要もあります。
本書は,主にワーク・ライフ・バランスについて学ぶ大学生・大学院生や生涯学習の関係者を対象としていますが,企業のワーク・ライフ・バランスやダイバーシティ&インクルージョンを担う方々にとっても,関心をもっていただける内容となっています。
【執筆協力】大原奈緒(補論1)・佐藤 歩美(補論)・寺西 知也(補論3)
目次
序章 なぜ,ワーク・ライフ・バランスに目を向けるのか
1 ワーク・ライフ・バランスとは
2 ワーク・ライフ・バランスに注目する理由
3 なぜ今,ワーク・ライフ・バランスが必要なのか
4 諸外国におけるワーク・ライフ・バランスをみる必要性
5 本書の構成
第1部 ワーク・ライフ・バランスの源流をたどる
第1章 日本企業におけるキャリア開発の概念とその展開
1 キャリア開発―ワーク・ライフ・バランスのはじまり
2 キャリア開発の沿革とその背景
3 日本企業におけるキャリア開発の諸相
4 キャリア開発研究の展望
第2章 キャリア発達理論の生成とその展開―キャリア開発との関連で―
1 キャリア開発の教育学的な考察をめざして
2 キャリア発達の概念
3 キャリア発達の諸理論
4 キャリア開発研究の新たな方向と今後の課題
5 概念の整理
第2部 ワーク・ライフ・バランスの現状を探る
第3章 ワーク・ライフ・バランスの概念とその展開―国の施策を手がかりとして―
1 キャリア開発からワーク・ライフ・バランスへ
2 ワーク・ライフ・バランス施策の生成と展開
3 ワーク・ライフ・バランス概念の意義
4 ワーク・ライフ・バランス施策の今後の役割
5 企業におけるワーク・ライフ・バランスの取組を捉えていく視点
第4章 ワーク・ライフ・バランスの取組に関する考察―大企業を中心として―
1 3 つの側面からみる企業のワーク・ライフ・バランス
2 次世代育成支援対策推進法が企業に与えた影響
3 ワーク・ライフ・バランスの取組状況の一端
4 ワーク・ライフ・バランスの取組を妨げるコストの問題
5 取り組むべき今後の作業
第5章 ワーク・ライフ・バランス施策の検証―育児休業制度と育児休業取得率の観点から―
1 ワーク・ライフ・バランスのコアに迫る
2 育児休業にかかわる制度の変遷
3 育児休業取得率の推移
4 育児休業取得の壁
5 ワーク・ライフ・バランス施策の検証
終章 ワーク・ライフ・バランスと生涯学習
1 すべての働く人々を対象としたワーク・ライフ・バランスをめざして
2 ワーク・ライフ・バランスと学び
3 ワーク・ライフ・バランスと地域活動
4 ワーク・ライフ・バランスとボランティア活動
5 すべての働く人々のために―議論すべきこと―
補論 実社会のリアルな実態や課題
1 誰にでもある「アンコンシャス・バイアス」
2 女性活躍推進法とは何か
3 男性の育児休業
巻末資料 より深く学ぶために
1 諸外国におけるワーク・ライフ・バランス
2 少子化対策の取組
3 研究・実践に役立つウェブサイトや文献
前書きなど
はしがき
「専門演習の紹介―ワーク・ライフ・バランスの世界へようこそ―」,2021年に,青山学院大学のオンラインオープンキャンパスのために,このようなタイトルのゼミ動画を作成した。慣れない動画編集に挑戦した日々を,今でも鮮明に覚えている。あれから, 3 年の月日が流れて,ワーク・ライフ・バランスに関する書物を世に送り出すことができる。感慨深いものがある。
2007年12月,「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定され,官民が一体となってワーク・ライフ・バランス社会の実現がめざされるようになった。それ以降,ワーク・ライフ・バランスに関する多くのメッセージが,国から国民に送られるようになった。ワーク・ライフ・バランスという言葉も日本社会に徐々に浸透していき,持続可能な社会を構築していくうえでは,欠かすことができないキーワードの1 つになってきている。評価すべきことである。
しかし,ワーク・ライフ・バランス社会の実現に少しずつ近づいてはいるものの,その達成にはまだまだ程遠い状況があるということも事実である。なぜならば,ワーク・ライフ・バランスは,すべての働く人々を対象としているはずなのに,その対象は,子育てや介護(とくに子育て)を担う人に限定される傾向にあるからである。すべての働く人々へと対象を広げていくためには,子育てや介護に加えて,生涯学習にとって重要な要素である学習活動・地域活動・ボランティア活動を充実させていく必要がある。すべての働く人々のワーク・ライフ・バランスの実現をめざしていくためには,生涯学習はきわめて重要な役割を果たす。ワーク・ライフ・バランスという概念に目を向けはじめた頃から,ずっと思っていることである。そんな思いから,『ワーク・ライフ・バランスと生涯学習―すべての働く人々のために―』というタイトルが固まっていった。もっと魅力的なタイトルにしたほうがいいのではと,思いめぐらすこともあった。しかし,もともと考えていたことやずっと考えていたことをシンプルかつダイレクトに表現することは,最も重要であると思いを固めた。
本書は,主にワーク・ライフ・バランスについて学ぶ大学生・大学院生や生涯学習の関係者を対象としているが,企業のワーク・ライフ・バランスやダイバーシティ&インクルージョンを担う方々にとっても,関心をもっていただける内容となっている。後者の方々には,実践において参考になる情報の宝庫となっている補論の「実社会のリアルな実態や課題」も読んでいただきたい。さらに,昨今,高等学校家庭科において,ワーク・ライフ・バランスが取り上げられていることをふまえ,その科目を担当する教員の方々にも読んでいただきたいと考えている。授業のリアクションペーパーを通じて,高等学校家庭科の授業で,ワーク・ライフ・バランスについて学んだという大学生が増えていると感じることがある。高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説のなかで,ワーク・ライフ・バランスを図ることの重要性について示されており,そのような背景があるのだろう。社会環境の変化のなかで,高等学校家庭科の内容も随分と大きな変化を遂げている。これまで軽視されてきたワークが、注目されるようになってきているのである。
本書には,タイトルに込めた思いがもう1 つある。本書が,ワーク・ライフ・バランスと生涯学習の架け橋となることである。ワーク・ライフ・バランスに興味・関心をおもちの方には,生涯学習にも興味・関心をもっていただきたい。そして,生涯学習に興味・関心をおもちの方には,ワーク・ライフ・バランスにも興味・関心をもっていただきたい。本書が,ワーク・ライフ・バランスと生涯学習の架け橋のような存在になれば,それは喜ばしいことである。
あとがき
本書は,著者のこれまでの研究成果がもとになっている。ただし,ワーク・ライフ・バランスをとりまく状況は,著しく変化している。その変化をきちんと捉えて,これまでの研究成果に大幅な加筆・修正を行った。ここで,本書のもとになった論文を紹介しておく。
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序章:書き下ろし
第 1 章:「 キャリア開発の概念とその展開―企業内教育の一環として―」『産業教
育学研究』第26巻第2 号,1996,pp.8-15.
第 2 章:「 キャリア発達理論の生成とその展開―キャリア開発との関連で―」『生
涯学習・社会教育学研究』(東京大学大学院教育学研究科生涯教育計画
講座社会教育学研究室)第20号,1996,pp.61-70.
第 3 章:「 ワーク・ライフ・バランスの概念とその展開―ワーク・ライフ・バラ
ンス施策を中心として―」『教育研究』(青山学院大学教育学会紀要)第
53号,2009,pp.197-211.
第4 章:「 ワーク・ライフ・バランスの取組に関する考察―大企業を中心として
―」『生涯学習・社会教育研究ジャーナル』第3 号,2009,pp.1-15.
第5 章:「 ワーク・ライフ・バランス施策の検証―育児休業制度と育児休業取得
率の観点から―」『教育研究』(青山学院大学教育学会紀要)第54号,
2010,pp.185-198.
終章:書き下ろし
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長い道のりを経て,やっとここまでたどり着くことができた。ワーク・ライフ・バランスも生涯学習も,とにかく範囲が広い。大海原で釣りをしているような感じで,掴みどころがなく,途方に暮れることも多々あった。こうして1冊の本としてまとめあげたことが,次の段階に進んでいくための貴重な一歩になると確信している。
とはいえ,多くの課題も残されている。すべての働く人々のなかには,ひとり親世帯,しょうがいのある方々,性的マイノリティーの方々,外国籍の方々,専業主婦/主夫の方々なども含まれる。上述した多様な人々のワーク・ライフ・バランスについて,もっと目を向けていく必要がある。さらに,ワークから切り離されている状態にある若年無業者などには,ことさら目を向けていく必要がある。本書では,すべての働く人々へと対象を広げていくために,生活の多様性を重視してきたが,今後の研究においては,人の多様性も意識したものでなければならないと考えている。
ワーク・ライフ・バランスをとりまく状況の著しい変化に関しては,先に述べたとおりである。この著しい変化について,ここで示しておかなければならないことがある。2024年5 月24日,国会で審議されていた次世代育成支援対策推進法と育児・介護休業法の1 部を改正する法律が,本書執筆後に成立したことである。したがって,第3 章第2 節と第5 章第5 節において述べた,「次世代育成支援対策推進法の10年間の延長」「男性の育児休業の数値目標設定や公表義務」「テレワークの追加など」に関することは,予定ではなく確定ということになる。また,補論の「男性の育児休業」は,2024年の育児・介護休業法改正前に執筆されたものであることも,ここで明記しておきたい。目まぐるしく変わる制度を目の当たりにして,いかに重要なテーマに取り組んでいるのか,今,改めて考えさせられているところである。
本書は,多くの方々の支援によって完成した。今後も,まだまだ研究は続いてゆくが,これまで著者の研究活動を支えてくださったすべての方々に,感謝の気持ちを伝えたい。
版元から一言
本書は,ワーク・ライフ・バランスについて学ぶ大学生・大学院生や生涯学習・社会教育に携わる関係者,さらに企業においてワーク・ライフ・バランスやダイバーシティ&インクルージョンの推進を担っている関係者に最適なテキストです。
日本および諸外国での政策や取組を系統的に示し,具体的な事例をあげながら丁寧にわかりやすく記述しています。
すべての働く人々それぞれの立場に立って,これからの日本におけるワーク・ライフ・バランス社会の実現と生涯学習の充実を目指すための基礎的な知識と今後の課題を提示しています。
上記内容は本書刊行時のものです。