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奥歯を噛みしめる 詩がうまれるとき
原書: 어금니 깨물기
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2023年11月18日
- 登録日
- 2023年10月3日
- 最終更新日
- 2023年11月24日
書評掲載情報
2024-09-05 |
T JAPAN(The New York Times Style Magazine)
9月27日号 評者: 石井千湖 |
2024-04-06 |
すばる
5月号 評者: キム・ソヨン×文月悠光 対談 |
2024-02-24 |
図書新聞
3628号 評者: 奥間埜乃 |
2024-01-28 |
大分合同新聞
評者: 小池昌代 |
2024-01-28 |
熊本日日新聞
評者: 奥田直美 |
2024-01-12 |
図書新聞
評者: 斎藤佑史 |
2024-01-06 |
西日本新聞
評者: 田尻久子 |
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紹介
心の傷もわかりあえなさも、
すべてを詩にしたとき、母を愛せるようになった――。
この世の痛みの声に耳を澄ます詩人が、
母、父、心の傷、そして回復までを綴ったエッセイ集。
奥歯を噛みしめて耐えること、奥歯を噛みしめて愛すること。
何もできなかったあのころ。それは、詩のうまれゆく時間であった。
生きることそれ自体が、詩になる。
それは特別なことではなく、あなたの人生もまた詩なのだ。
寒さに震える心をそっと包み込む、かぎりなくあたたかな30篇のエッセイ。
キム・ソヨン「日本の読者へ」と、三角みづ紀(詩人)による応答エッセイを付す。
目次
日本の読者へ
はじめに
1
母を終えた母
2
口があるということ
慶州市千軍洞の敵産家屋
振り返らせる
歩いてそこへ行く
少し違うこと
懐中電灯を照らしながら歩いた夜
場所愛 topophilia
間隙の卑しさの中で
祈りをしばしやめること
私を煩わせる「無」
パンと彼女
失敗がきらめく
「積ん読」と「積ん読の対義語」
無能の人
あらゆる者の視点
3
儚い喜び
4
「途方もなさ」について
じたばたのつぎのステップ
音なき岩
皮膚を剥がす
奥歯を噛みしめる
わたしが詩人なら
楯突く時間
得る
二〇三〇年一月一日 火曜日 晴れ
明日は何をしようか
木の箸と木彫りの人形
平和であれ
5
二箱の手紙
応答 忘れないために、手放すために 三角みづ紀
監訳者あとがき たとえ奥歯はすりへろうとも
前書きなど
ここに集められた数々の言葉は、何もできないと感じていた時間の中で書いたものだ。何かを守るために、ひとところにずっとうずくまっていた。しばしばうんざりして、すぐにぐちゃぐちゃになった。それでもわたしが守ろうとしてきたことを猛烈に守りたいと思った。バランスをとるためにしょっちゅう奥歯を噛みしめた。
何もできなかった時間は、歯をくいしばり、いつにもまして一生懸命に生きた時間だったことが、ここに集められた文章を書くうちに分かってきた。耐える心が慈しむ心に変わりゆくことが分かった、とでも言おうか。遥か彼方にあるとしか思えなかった回復が、すぐそこに到着していたことも今は分かる。回復を渇望していた起伏のある時間を、この本の目次に余すところなく収めたかった。疲れた顔で寝入っても、うららかな朝が迎えられるように。晴れている、ただそれだけで疎外感を感じる日もあれば、ただ晴れているだけで感謝の気持ちが生まれる日もあるように。振り返ってみると、よくぞここまでやってきたと、少し嬉しくもある。このような儚い喜びが見知らぬあなたの背中にもすっと染みこんでいきますように。この本がどうかあなたをうしろからそっと抱きしめる、そんな気配となりますように。
版元から一言
『詩人キム・ソヨン 一文字の辞典』(クオン、2021)によって、キム・ソヨンは、静かながらも圧倒的な読者の支持を得ました。
この本は、2022年秋に韓国で出版されるや高い評価を受けたエッセイ集です。
母を介護するなかで綴られた本書には、母の歴史を聞こうとした矢先に、コロナ下で会えないまま、母を亡くしたことも書かれています。
母から受けた傷、母の傷、屋根裏にあった父の手紙、シンボルスカの詩との出会い……。
日常の中の痛みも、春という奇跡のような時間も、キム・ソヨンは詩にしていきます。
生きることそれ自体が、詩になる。
それは特別なことではなく、あなた自身の人生もまた詩なのだ。
だから、あなたの物語を聞かせて。
そんな声が聞こえてくる、30篇のエッセイ。
限りなくやさしくあたたかい、友だちのような1冊です。
同時期に刊行される詩集『数学者の朝』(クオン)と合わせて、キム・ソヨンの世界をお楽しみください。
上記内容は本書刊行時のものです。