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光聴
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年3月25日
- 書店発売日
- 2021年3月25日
- 登録日
- 2021年1月21日
- 最終更新日
- 2023年3月14日
書評掲載情報
2021-05-01 |
現代詩手帖
5月号 評者: 福田若之(俳人) |
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重版情報
2刷 | 出来予定日: 2021-04-10 |
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紹介
第11回小野市詩歌文学賞受賞の前句集『記憶における沼とその他の在処』より、約3年ぶりの著者新句集。
◉
この作者は、目に映り、耳に聞えるものを、ふつうの感受のしかた以上に克明かつ分析的に捉え、それをやや理屈っぽくも見える、解像度の高い言葉遣いで再構成する。だが、決して「言葉だけで遊んだ俳句」ではない。
生身で受け止めた世界の手応えを、徒労すれすれの誠実さと、いくぶんかの不器用さと生硬さをもって一句に仕上げる。その句はしばしば、今まで見たことがなかったような物事の相貌を見せてくれる。
--岸本尚毅(本書帯文より)
◉
疎に椿咲かせて暗き木なりけり
空に日の移るを怖れ石鹼玉
闇を瞠るや冷房の幻聴に
可笑しいと思ふそれから初笑
菊吸や茎に微塵のひかり入れ
人と舟秋解纜にひとつ影
返り花川は巌の段に急
仮初に涼しと詠みて徐々に情
鵯の山雨をこゑに私す
目次
描線
解纜
こゑ
あとがき
前書きなど
本作は第4句集です。
前作『記憶における沼とその他の在処』上梓以降、現場の理想化前の僅かな驚きを書き留めること、些末を恐れず分明判断を超えてものを見ること、形而下の経験的認識が普遍性に近づくその瞬間を捉えること、イメージを具象的言語表現で伝えることなどは山険しけれど古い方法ではなく、現代の俳句を切り開く方法の一つになり得ると思うようになりました。
「描線」は2018年、「解纜」は2019年、「こゑ」は2020年作です。この間、新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、自分がどう向かい合うべきかを考える日々でした。加えて、持病の幻聴がもたらす生きることの困難さと闘う日々でした。古今の俳句などに親しむことによって自分の俳句観が大きく変わっていくのを実感した時期でもありました。前作までは採らなかった編年体を、若干の構成も入れつつ、今作で採ったのは、この疫禍を挟み俳句をどう書いたのかの「私」の標が要るように思ったからです。「記録」ではなく「書くことを書く」という俳句を記せていたら幸いです。
(「あとがき」より)
上記内容は本書刊行時のものです。