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エトセトラ VOL.11
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2024年5月28日
- 登録日
- 2024年4月4日
- 最終更新日
- 2024年6月20日
紹介
110年ぶりとなった2017年の性犯罪刑法改正と、
根幹的な変化があった2023年の再改正。
その7年のあいだ、現場を見てきたライターの小川たまかとともに2つの刑法改正をふりかえり、日本で性暴力とたたかい、改正を成し遂げた当事者、支援者、フェミニストたちの活動を記録に残す。
法曹、ジャーナリズム、研究、医療、性教育、表現、運動…etc.それぞれの場で社会を変えようとしてきた声を集めた特集号。エッセイ、インタビュー、座談会、読者投稿など。
目次
特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年
特集のはじめに
【座談会】
池田鮎美✕岩田美佐✕早乙女祥子「性被害者当事者たちの刑法改正とこの7年」
解説:2017年と2023年の刑法改正とは?(作成・小川たまか)
【寄稿】
寺町東子[法律に埋め込まれた家父長制・男尊女卑の地雷を掘り起こしてひっくり返す話」
仲岡しゅん「20年前の性暴力、闘い勝訴した女性とその弁護士の記録 」
河原理子「あなたに知ってほしいこと」
安田菜津紀「日本で、世界で、『支配する力』に抗うこと」
宮﨑浩一「男性の性暴力被害を研究して見えてきたもの」
池田祐美枝「性暴力のない世の中を目指して~産婦人科医から見える性暴力を取り巻く社会の遍歴~」
清水美春「一点突破、全面展開。びわこんどーむレボリューション。」
【対談】
太田啓子✕安發明子「子どもを守れていない、日本の社会を変えるために」
村田沙耶香✕小川たまか「私と誰かの性被害を書くときに、小説にしかできないこと」
【インタビュー】
方清子「いまに続く性暴力の出発点として――日本軍「慰安婦」への連帯運動を知る」
高里鈴代「沖縄で基地・軍隊の性暴力とたたかい続ける、被害者の声を聴き続ける」
上野さやか「沖縄がつなぐフラワーデモ」
【読者投稿】
あなたが「セックスとはなにか」を知ったのはいつですか?
特集のおわりに
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【寄稿】
金城美幸「ガザ・ジェノサイドと女性への交差的暴力」
ナッタニチャー・レッククラー(福冨渉・訳)「わたしたちの愛が、家父長制を元首とする異性愛規範に飼い慣らされるのではなく、革命の如きものになりますように――同性婚法案制定直前のタイから」
【フェミ・レポート】
冷君暁「絶望と希望:中国の女権主義」
【エッセイ】
下村 沙季マリン「私たちのバーベルを強く握る方法」
【連載】
「編集長フェミ日記」2023年9月~2024年4月
「祖母の話」/#3 紀愛 「きっと最高の討論相手になってくれたであろう함매(ハンメ)へ 」
「寝た子を起こして、仲良くごはん」川﨑那恵/第一回「春、大和川の思い出にあそぶ」
「アート・アクティビズム」北原恵/〈99〉「飯山由貴に聞く――国立西洋美術館での展示と抗議行動」
「北京会議の前と後~SRHR30年の足跡を探して~」福田和子/第二回:ヌエックに集まった女性たちと北京会議
アーティストのフリースペース:とれたてクラブ
私のフェミアイテム:macca
NOW THIS ACTIVIST :村上麻衣
etcbookshop通信
前書きなど
特集のはじめに 小川たまか
「罠だよ! 結婚って罠! 結婚すると女は全部男に権利を奪われて、離婚も自由にできないって、誰かに教えてもらった? 教えてもらってないよね!」
現在放送中の朝ドラ『虎に翼』の中で、主人公の猪爪寅子はこんな風に憤る。当時の法律では結婚した女の財産は夫の管理下に置くとされていた。
これは昭和初期、1930年代の話だが、私は2016年に同じことを思った。罠だよ!と。
ねえ、性交同意年齢が13歳って知ってた?
13歳になれば自分が誰とセックスするのか自分で決められると法律では見なされている。もしも13歳の児童が誰かから性交渉を望まれたとしたら、ちゃんと自分で判断して、嫌だったら目に見える形で抵抗や拒否をしないとダメ。驚いて黙ったり、体が固まって言われるがままになってしまったら、性交を了承したと判断されかねない。こんなこと、誰かに教えてもらった? 教えてもらってないよね!
私は2015年に痴漢被害の問題から性暴力を取材するようになった。けれど当時は自分が刑法について何か物申すなんて考えたこともなかった。最初に性犯罪刑法の改正が検討されていることや、それがいかに自分ごとであるかを教えてくれたのは、当時刑法を変えるためのアクションをしていたフェミニストアートグループ「明日少女隊」のメンバーだった。
2017年の性犯罪刑法改正は、実に110年ぶりの大幅な改正と言われた。それから多少のマイナーチェンジはあったものの、量刑の引き上げや「強姦罪」の処罰範囲が拡大され「強制性交等罪」に名称変更されるといった大幅な改正は2017年までかかった。
そして2023年の再改正は2017年よりも大きかった。2017年の改正で見送られた「性交同意年齢の引き上げ」や「公訴時効の延長」が叶い、さらに「強制性交等罪」「準強制性交等罪」は処罰要件を明確にした「不同意性交等罪」に変わった。
性犯罪の構成要件が「不同意性交」であるイギリスを2018年に視察した際、私は日本でこれができるのは、あと30年後だと思っていた。
この再改正を推し進めたのは間違いなく、当事者、支援者、フェミニストたちの力である。「社会にはまだ問題が山積みであるけれども、いったんはこの改正と再改正を祝いたい」、そうエトセトラブックスの松尾さんと話した。
女たちの地道な運動は、『プロジェクトX』のような番組で取り上げられることがなかなかない。性犯罪刑法の改正も、そのために国内で行われた運動も、運動をする女たちに向けられた冷笑や嫌がらせも、マスメディアの男性の多くはほとんど関心を持たないだろう。そうであるならば、自分たちで記録に残しておくしかない。
特集タイトルの「ささやかな」には、多少の皮肉を込めた。女性運動はいつも小さく扱われるから。ただ、未来にさらに大きな前進があると信じて、この7年を「ささやか」と思いたい気持ちもある。
特集編集を任せていただけたので、寄稿者を自分で決めることができた。2017年頃からの7年間で出会った方々に原稿をお願いすることができて、私はとてもうれしい。うれしいのでちょっと一人ひとり紹介したい。
寺町さんは、刑法改正を求める当事者たちにずっと寄り添ってくださった弁護士。座談会の祥子さん、鮎美さん、岩(がん)ちゃんは、刑法改正のためのロビイング団体Springで出会った人たちだ。彼女たちと一緒に食べるごはんはいつでも楽しくておいしい。
仲岡しゅんさんは、トランスジェンダー差別に立ち向かう姿を知っている人が多いと思うが、私は彼女が担当した民事訴訟の印象が鮮烈で、これを書いていただきたいと思った。
元朝日新聞記者の河原さんは、私が高校生の頃に読んで忘れられなかった性暴力の記事「こわい夢」*を書いた人。性被害の勉強会で初めて河原さんに会ったとき、とてもうれしかった。【 *『犯罪被害者』(平凡社新書)所収】
安田菜津紀さんは国内外の問題に広く通じていて、しかもそれぞれのトピックへの注力に差がないのがすごい。その視点から考えるところを書いていただきたいと思った。
宮﨑浩一さんは一瞬だけ流行った音声SNS・Clubhouse で出会い、その後2022年に私が京都に引っ越してから再会した。産婦人科医の池田さん、びわこんどーむの清水さんも京都で出会ったお友達で、よく食べたり飲んだり遊んだりしている。
安發明子さんは宮﨑さんに紹介していただいてパリでお会いし、その後京都でも大勢でごはんを食べた。太田啓子さんとは、もう何が最初の出会いだったかわからないぐらい、さまざまな難問を共有していると思う。
村田沙耶香さんからは予定の3倍の文字数の原稿が届いて結局対談となったのだが、ますます好きになった。
「日本軍『慰安婦』問題・関西ネットワーク」共同代表の方清子さんとは大阪で韓国料理を、レジェンド・高里鈴代さんとは那覇で沖縄料理を食べた。彼女たちが先輩として頼もしいのはいつも仲間に囲まれていることだ。そして上野さやかさんとはオリオンビールを飲んで、この特集のタイトルには「さやか」が入っているとドヤ顔で伝えた。
なんだか食べ物の話ばかりしている。でも気の合う人たちと一緒に飲み食べするのが好きだからこれでいい。何の話をしていたっけ。とりあえず、自分の友達を探すつもりで気軽にページをめくってみてください。
上記内容は本書刊行時のものです。