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生者のざわめく世界で 磯前 順一(著) - 木立の文庫
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生者のざわめく世界で (セイジャ ノ ザワメクセカイ デ) 震災転移論 (シンサイ テンイ ロン)

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発行:木立の文庫
四六変形判
縦188mm 横118mm 厚さ27mm
312ページ
上製
価格 2,700円+税
ISBN
978-4-909862-33-4   COPY
ISBN 13
9784909862334   COPY
ISBN 10h
4-909862-33-1   COPY
ISBN 10
4909862331   COPY
出版者記号
909862   COPY
Cコード
C0014  
0:一般 0:単行本 14:宗教
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年3月11日
書店発売日
登録日
2024年1月26日
最終更新日
2024年5月13日
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書評掲載情報

2024-05-24 週刊読書人
評者: 荻本快
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紹介

大震災。地が人を押しつぶし、海が人を呑み込んだ。そこには原発がある。なぜ、津波の来る所に原発はあるのか? ――本書は今、3.11東日本大震災をふたたび眼差して、人と社会の根源を問います。生はどのように死を受け留めるか? 民主主義のいうところの平等はどのように実現できるか? ――死者と生者の関係を、精神分析の“転移”現象になぞらえ、「感情の絆」の形を、震災十余年を経た《社会の心のざわめき》という視点から論じます。宗教学者が「見えないもの」を語る時、何が聞こえるでしょう…。災害の臨床社会考!

目次

序 幕 それは誰の声か――太陽を盗んだ男

第一幕 石巻 傾聴論――翻訳不可能性
日和山 津波に呑まれて
閖上 声を失う

第二幕 南相馬 死者論――謎めいた他者
六ケ所村 原発街道
南相馬 沢田研二コンサート
松川浦 忘れ去られた記憶

幕 間 秘密の小部屋――謎めいた他者の眼差しのもとで
靖国神社 英霊と花嫁人形
水戸 哀しみをかみしめる
青髭の小部屋 台本への終止符
パンドラの箱 蓋を開ける? 閉める?
ふれあい 躊躇いと恥じらい
青髯と夕鶴 開け閉じ自在の扉
幻滅 無力さを受け容れて

第三幕 双葉郡 戦後民主主義の行方――メドゥーサの瞳
双葉町と大熊町 白い土地
双葉町と富岡町  匿名の展示ナラティヴ
浪江町 姿なく漂う悲しみ
フクシマ からこんにちは

第四幕 いわき湯本 コトドワタシ論――想いを形にして伝える
いわき 内曲する境界線
鳥かごの中の鳥 かごの中を見つめる鳥
イザナキ・イザナミ 生者と死者の境界線
真実の声 それは愛の奥底に眠り
末法の世 裸族が服を着て

終 幕 生者の国で言葉を紡ぐ――どこにもいないあなたへ

前書きなど

【プロローグ】より 

 つい最近まで、私は「傾聴」行為のはらむ難しい問題に気づくことはなかった。 
 ましてや、自分自身が“感情の鳥かご””に閉じ込められているからこそ、あれほど熱心に被災地に通って、被災した人びとに耳を傾けようとしていたことなど、まったくの盲点であった。

 震災を通して明らかになる、世界に対する人びとの信頼(=転移)の感情と、その世界が崩れていくという不安。《転移》という心的過程は、「人間の感情が揺さぶられて、他者の心のもとに吸い取られていく」事態をも招き入れる。転移とはまさしく“心と心のあいだに起きる感染現象”である。それは同時に、他者を自分の心理的な問題構成のなかに巻き込んでいくことにもなる。
 自己と他者のあいだの感情の《転移》現象を通して、それがいずれの方から他方に向かう方向をとるにせよ、自分が当初より抱えている心の問題構成が、鮮明な縁どりのもとに顕現し、その問題がどのようなものであるのかが分析可能な状態に置かれるようになるのである。

……   ……



【エピローグ】より

 人間には制御することのできない、本源的に「悪」と呼ばざるを得ない存在が、本人の意向とはかかわりなく、この世にはあるのだと思う。じつのところ、かれらを排除することでしか、社会は成立しないものでもある。見えないものを見えるようにすることも大切だが、それと同じくらい、「見えないものを見えないままに留め置く」ことも大切な行為なのだろう。この世には、悲しいことではあるが、無力な存在の人間には手出しのできない 禁忌がたくさんあるのが現実である。

 そうであるからには、精神分析的立場から震災以降の日本社会を論じてきた本書としては、社会に生じた「暗部」への禁忌に対して、私たちがいかに目を見開くか、が関心事となる。
 暗部に目を見開くこと。それがまさに「見えないものを見る」「見えないものに形を与える」という学問の責務である。しかし同時に、その光景に緊縛されてはならない。鳥かごに自分の魂を閉じ込められてはならない。

……   ……

著者プロフィール

磯前 順一  (イソマエ ジュンイチ)  (

1961年、水戸市に生まれる。
「見えないものを語ろう」とする癖(へき)が高じて宗教学者に。

東京大学大学院人文科学研究科宗教学専攻博士課程中退。博士(文学)。
海外の大学の客員教授や客員研究員を歴任。
2024年現在、国際日本文化研究センター(京都)教授。
磯前プロジェクト室主宰。

著書に『近代日本の宗教言説とその系譜』〔岩波書店, 2003年〕、
『閾の思考』〔法政大学出版局, 2013年〕、
『ザ・タイガース: 世界はボクらを待っていた』〔集英社新書, 2013年〕、
『死者のざわめき』〔河出書房新社, 2015年〕、
『昭和・平成精神史』〔講談社, 2019年〕、
『公共宗教論から謎めいた他者論へ』〔春秋社, 2022年〕、
『石母田正』〔ミネルヴァ書房, 2023年〕、
『居場所のない旅をしよう』〔世界思想社, 2023年〕など。
外国語に翻訳された書物など多数。

上記内容は本書刊行時のものです。