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〈転生〉する川端康成 Ⅰ
引用・オマージュの諸相
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年11月24日
- 書店発売日
- 2022年11月24日
- 登録日
- 2022年10月26日
- 最終更新日
- 2022年11月23日
紹介
優れた小説家は何度でもよみがえる。
大正から戦後にかけて活躍し、『雪国』や『伊豆の踊り子』をはじめ、かずかずの作品を世に送り出してきた小説家・川端康成(1899-1972)。その作品だけでなく、日本で初めてノーベル文学賞を受賞した作家として、現代においても高い知名度を誇ります。
「美的」・「抒情的」・「伝統的」といった固定的な、古めかしいイメージで語られがちな川端の文学作品ですが、しかし、彼の小説の受け止められ方は一様ではなく、後代の作家の創作にもさまざまなかたちで刺激をもたらしてきました。いったい川端の何が多くの作家たちを刺激しつづけるのでしょうか。
本書ではとりわけ後代の作家らによる川端文学の引用・オマージュの世界をたどります。それらを通じて川端のイメージが従来のものであることを再認識することもあれば、意想外の受けとめられ方をされてきたことも見えてきます。
川端の文学がいかに作家たちによって創造的に受容され、創作の源になったか。本書を通じて新たな意味を持つものとして生まれ変わる川端と後代の作家らによる文学作品を読み直します。
執筆は、仁平政人/原善/藤田祐史/西岡亜紀/三浦 卓/髙根沢紀子/李 雅旬/平井裕香/見田悠子/坂元さおり/李 哲権/深澤晴美/大石征也/髙畑早希/東雲かやの/菅野陽太郎/熊澤真沙歩/奥山文幸/谷口幸代/崔 順愛/高橋真理/杉井和子/青木言葉/永栄啓伸/長谷川 徹/内田裕太/劉 東波/原田 桂/田尻芳樹/李 聖傑/姜 惠彬/恒川茂樹/小池昌代/小谷野 敦/乗代雄介
【川端文学のオマージュ・引用やアダプテーションは、固定した川端のイメージをなぞり補強することもあれば、川端作品の持つ意想外の特性を照らし出すことも、あるいは批評的に変形することを通して、その潜在的な可能性を浮かび上がらせることもある。いずれにしても、これらは川端の文学をただ一方向的に受容するものではなく、それぞれの文脈のもとで(また多様なファクターとのかかわりのなかで)作り変え、生まれ変わらせるものに他ならない。そして、このような川端文学の多様な〈転生〉のあり方に光をあてることは、現代の文学・文化における「川端康成」の位相を捉え直し、また川端作品を新たに再読する視点を得ることにもつながると考えられる】……「はじめに」より
■本書の特徴
▼川端康成の文学がいかに後代の作家の創作の源になったか、各作品を徹底分析。
▼巻末には「川端康成〈転生〉作品年表【引用・オマージュ編】」を収録。
■本書で取り上げられた川端作品
雪国、伊豆の踊り子、心中、叩く子、片腕、美しさと哀しみと、虹いくたび、古都、山の音、弓浦市、死者の書、眠れる美女、浅草紅団、有難う、たんぽぽ、掌の小説、千羽鶴、みづうみ、十六歳の日記
■本書で取り上げた作家
恩田陸・梶井基次郎・松本清張・福永武彦・小池昌代・石田衣良・小川洋子・原田マハ・乗代雄介・ガブリエル・ガルシア=マルケス・朱天心・李昂・中里恒子・瀬戸内寂聴・大庭みな子・清水義範・荻野アンナ・西村京太郎・笹倉明・多和田葉子・吉本ばなな・祐光正・川上未映子・花房観音・綿矢りさ・彩瀬まる・田中慎弥・井上靖・三浦哲郎・カズオ・イシグロ・莫言・金衍洙
目次
はじめに
本書の目的/本書の構成
Ⅰ 引用・オマージュによる〈転生〉
【恩田陸・梶井基次郎】
1 オマージュの照らしだす力――総論にかえて……原善
I 生誕一〇〇年の喧騒/生誕一二〇年・没後五〇年の静謐/II 先行からの影響/後進への影響/III 〈夜の底〉にこだわる恩田陸/IV 恩田陸が照らし出す川端康成/V 梶井基次郎がオマージュを捧げた「心中」/VI 〈解釈〉としてのヴァリエーション/VII オマージュの力/後進による読みの更新
【松本清張】
2 〈転生〉する「伊豆の踊子」――松本清張「天城越え」とトラベルミステリ……藤田祐史
I はじめに/II 「伊豆の踊子」から「天城越え」へ/III 「伊豆の踊子」から推理小説へ/IV 「日本近代文学」から推理小説へ
【福永武彦】
3 雪と鏡と二人の女――『雪国』と『死の島』を結ぶフィクションの文法……西岡亜紀
I 「末世の人」に写る反橋/II 『雪国』におけるフィクションの文法:雪と鏡と二人の女/III 『死の島』の雪:フィクションに辿り着くフィクション/IV 『死の島』のミッション:歴史性と芸術性の追及/V おわりに
【小池昌代】
4 腕をつけかえること、「どうぶつ」になること――小池昌代「左腕」と川端康成「片腕」……仁平政人
I はじめに― 〈転生〉する「片腕」/II 小池昌代「左腕」と川端康成「片腕」/III 「円」と「回」/IV 「翼」を得る、「ケモノ」になる/V 二つの「転生」の文学
【石田衣良】
5 裏返されなかったもの――石田衣良『娼年』と川端康成『眠れる美女』……三浦卓
I 『眠れる美女』を「裏返した」作品/II 〈ぼく〉の自分探しの物語/III 祝福できない〈転生〉
【小川洋子】
6 小説家として生きること――川端康成と小川洋子……髙根沢紀子
I いちばん好きな作家― 「眠れる美女」と「ミーナの行進」/II 部分と全体― 「片腕」と「バックストローク」/III 見えないものを見る― 「たんぽぽ」と「人体欠視症治療薬」
【原田マハ】
7 絵画小説としての『異邦人』――川端康成との関連性に触れて……李雅旬
I はじめに/II 『異邦人』の文体/III 絵画小説としての『異邦人』/IV 川端康成の京都小説との関連性/V おわりに
【乗代雄介】
8 スパイより愛を込めて――「最高の任務」と川端文学……平井裕香
I はじめに/II 「最高の任務」の記憶と風景/III 川端文学の記憶と風景/IV (小説を)書くことと愛すること/
【ガブリエル・ガルシア=マルケス】
9 『眠れる美女』以後のガルシア=マルケス――紡がれる文学の糸……見田悠子
I はじめに/II 孤独とは愛(=連帯)の欠如/III エレンディラとデルガディーナ/IV 世界への解/V 『眠れる美女』と『わが悲しき娼婦たちの思い出』、紡ぎ合わされる思考の糸
【朱天心】
10 〈引用〉による共振――朱天心『古都』と川端文学……坂元さおり
I はじめに/II 朱天心「古都」が書かれる背景/III 朱「古都」と川端文学〈引用〉による共振/IV さいごに
【李昂】
11 毒を盛られたオマージュ――李昂の『眠れる美男』を読む……李哲権
I オマージュと父殺し/II 川端康成の文体 李昂の文体/III 結び
Ⅱ 現代作家と川端康成の〈対話〉
12 極悪について……小池昌代
13 川端康成と立原正秋と「通」……小谷野敦
14 単なる比喩でないような空虚……乗代雄介
Ⅲ 作家の〈交流〉/作品の〈変異〉
【中里恒子】
15 「生涯一片山水」の覚悟/「夢幻の如くなり」――中里恒子における川端康成、或いは川端文学……深澤晴美
【瀬戸内寂聴】
16 川端を語りつづけた寂聴の京――冬の虹がむすぶもの……大石征也
【大庭みな子】
17 〈記憶〉の揺らぎをいかに描くか――大庭みな子と川端康成……髙畑早希
【清水義範】
18 〈抒情〉を更新する――清水義範のパスティーシュについて……東雲かやの
【荻野アンナ】
19 「雪国の踊子」の踊りっぷり――荻野アンナの川端理解の卓抜さ……菅野陽太郎
【西村京太郎】
20 焼き直された〈駒子〉たち――西村京太郎『「雪国」殺人事件』……熊澤真沙歩
【笹倉明】
21 『新・雪国』の新しさ――笹倉明のパスティーシュ……奥山文幸
【多和田葉子】
22 テクストの中の遊歩者――川端康成と多和田葉子……谷口幸代
【吉本ばなな】
23 エスニック歌の響き――吉本ばなな「ちんぬくじゅうしい」……崔順愛
【祐光正】
24 「そんな街や、そんな時代があった」――祐光正『浅草色つき不良少年団』……高橋真理
【川上未映子】
25 「雪国」の〈世界〉を四字熟語で飛翔する――「わたくし率 イン 歯ー、または世界」……杉井和子
【花房観音】
26 〈男〉を知らぬ片腕、あるいは〈女〉のすみずみまでを知る片腕――花房観音「片腕の恋人」……青木言葉
【綿矢りさ】
27 悪夢という異界――綿矢りさ『手のひらの京』の連想……永栄啓伸
【彩瀬まる】
28 片腕との〈暮らし〉――彩瀬まる「くちなし」が描く愛執の辺境……長谷川徹
【田中慎弥】
29 飛翔する〈言葉〉――川端康成と田中慎弥……内田裕太
【井上靖】
30 川端康成文学の振興に力を尽くした井上靖――鬱然たる大樹を仰ぐ……劉東波
【三浦哲郎】
31 〈短篇の名手〉を保証する存在――書簡と川端康成文学賞にみる三浦文学の礎……原田桂
【カズオ・イシグロ】
32 「まごついてしまうほど異国的」?――川端康成を読むカズオ・イシグロ……田尻芳樹
【莫言】
33 「秋田犬」と「白い犬」――莫言が読んだ『雪国』について……李聖傑
【金衍洙】
34 韓国現代作家は川端をどう読むか――川端康成と金衍洙文学における表現論の考察……姜惠彬
執筆者一覧
川端康成〈転生〉作品年表【引用・オマージュ編】……恒川茂樹
上記内容は本書刊行時のものです。