書店員向け情報 HELP
出版者情報
書店注文情報
在庫ステータス
取引情報
マレーシア映画の母 ヤスミン・アフマドの世界
人とその作品、継承者たち
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年7月25日
- 書店発売日
- 2019年7月31日
- 登録日
- 2019年6月19日
- 最終更新日
- 2019年7月31日
書評掲載情報
2020-01-15 | ASIAN POPS MAGAZINE 143号 |
2019-12-15 |
キネマ旬報
12月下旬号/1828 評者: 暉峻創三 |
2019-11-15 |
nippon.com
評者: 野嶋剛 |
2019-10-26 |
i-D VICE
評者: 月永理絵 |
2019-08-16 |
GQ Japan
評者: 野中モモ |
MORE | |
LESS |
紹介
伝説の映画監督が遺した珠玉の作品群を読み解く――
『細い目』『グブラ』『ムクシン』『ムアラフ』『タレンタイム』『ラブン』等の作品を通じて「もう一つのマレーシア」を描き、世界に感動をよんだ不世出の映画監督ヤスミン・アフマド。彼女が遺した長編映画6作品と短編1作品を、民族、宗教、言語などの社会的背景を踏まえて多角的に読み解き、その特徴と魅力、より深い愉しみ方を紹介します。
ヤスミン作品を支えた映画人・舞台人、ヤスミンの遺志を継ぐ者たちの情報や、役者名・登場人物名一覧、上映データと劇中に登場する食べ物、音楽、詩などの参考情報等も収録。没後10年を経てなお人びとを魅了し続ける混成的・多層的・多義的な物語世界=「ヤスミン・ワールド」の全貌に迫ります。
読めばヤスミン作品の新たな姿が立ち上がり、マレーシア社会の姿がみえてくるとともに作品を観たくなる――そんな映画と世界の読み解きガイドです。
目次
■はじめに――現実と切り結ぶ「映画の力」を珠玉の作品群にみる
■第1部 ヤスミン・アフマド作品の混成的な特徴と魅力――演出、情報提示、脚本、翻訳の視点から
第1章 演出しない演出─演技させるのではなく物語を引き出す
第2章 綿密に計算された情報の提示─余白の解釈を託しつつ常識を揺さぶる
第3章 脚本に見る物語の継承と多層化─マレーシア映画史におけるヤスミン
第4章 文化的基盤の読解と翻訳を希求する作品世界─背景の読み解きと多色字幕
■第2部 多層的・多義的物語世界の愉しみ方――長編六作、短編一作を読み解く
●①オーキッド三部作『細い目』/『グブラ』/『ムクシン』
◆内容紹介
◆「もう一つのマレーシア」を美しく描く……山本 博之
◆約束と父性――オーキッドの「結婚」……山本 博之
◆共同体の決まり――「いなくなる」こと……山本 博之
◆オーキッドとジェイソンの物語のもう一つの結末……山本 博之
◆許しはいつも間に合わない……野澤 喜美子
◆ジェイソンの母が照らす「もう一つのマレーシア」……篠崎 香織
◆夢の中のあなた――夢中人と愛の期限……及川 茜
◆マレー人少女の心をつかんだ金城武と『ラヴソング』……宋 鎵琳・野澤 喜美子
◆「歌神」サミュエル・ホイの歌による予感と鎮魂……増田 真結子
◆ジェイソンが本名を名乗らなかったわけ……増田 真結子
◆「上海灘」が流れるとき……増田 真結子
◆ヤスミン作品を支えるタイ音楽のフィーリング……秋庭 孝之
◆タゴールの詩にみえる普遍的な人間愛……深尾 淳一
◆マレーシアのガザル音楽……山本 博之
◆ヤスミンとオートバイ……山本 博之
◆一二歳の旅――ヤスミン映画と児童文学……西 芳実
●②『ムアラフ』
◆内容紹介
◆ブライアンは「改宗」したのか……山本 博之
◆ロハナとロハニが唱える数字……山本 博之
◆相対化で変わりうる「改宗」の意味……光成 歩
◆「家路」の旋律が表すもの……増田 真結子
◆『ムアラフ』に登場するムアラフと再誕……山本 博之
●③『タレンタイム』
◆内容紹介
◆「月の光」、そして「もう一つのマレーシア」……山本 博之
◆翻訳可能性と雑種性――『タレンタイム』に集う才能たち……山本 博之
◆死による再生と出発――ヤスミンを送る映画……山本 博之
◆届かない歌に込めた祈り……野澤 喜美子
◆茉莉花の物語……及川 茜
◆ビッグフットを求めて――ヤスミンが描く家族のかたち……西 芳実
◆一七歳の試練――SPMを控えた少年少女の群像……金子 奈央
◆「ライラとマジュヌン」――『タレンタイム』に至るイスラム文学の系譜……山本 博之
◆『タレンタイム』にみるマレーシアのインド系世界……深尾 淳一
●④『ラブン』
◆内容紹介
◆都会暮らしに慣れたマレー人も……山本 博之
◆心の庭に招き入れる寛容さ……野澤 喜美子
◆見えざるものを見る力――ヤスミンとユーハンをつなぐもの……西 芳実
●⑤『チョコレート』
◆甘くて苦い決意……山本博之
■第3部 ヤスミン・ワールドを支える人びと――先行の映画人・舞台人たちの物語
◆ハリス・イスカンダル(スタンダップ・コメディアン/俳優/監督)
◆アイダ・ネリナ(女優)
◆トー・カーフン(脚本家・監督・俳優/ジャーナリスト/書店経営者)
◆ナムロン(俳優/監督)
◆ミスリナ・ムスタファ(女優/芸術家)
◆ラヒム・ラザリ(俳優/監督)
◆イェオ・ヤンヤン(女優)
◆アゼアン・イルダワティ(女優/歌手)
◆ジット・ムラド(脚本家/俳優/スタンダップ・コメディアン)
◆スカニア・ベヌゴパル(女優/演劇人)
■第4部 伴走者・継承者たちの歩み――約束を守り遺志を継ぎ伝える者
◆ジョビアン・リー――生涯を捧げてヤスミンのメッセージを伝え続ける永遠の「パートナー」
◆ホー・ユーハン――映画という絆で結ばれた唯一無二の「盟友」
◆シャリファ・アマニ――見出され開花した才能が期待を集める美しく強き「娘」
■資料
①長編監督作品 上映基本データと参考情報
②ヤスミン・ワールド人名一覧(演者名・役名索引)
③ヤスミン・アフマド年譜
参考・参照文献一覧
あとがき
編著者略歴
版元から一言
ヤスミン・アフマド(1958~2009)は、多民族・多言語・多宗教の混成社会マレーシアにおける多文化共生の理想と現実とのギャップを、どこまでも優しく、ときに冷徹に、かつウィットとユーモアを込めて描き出した映画監督です。
『細い目』『グブラ』『ムクシン』『ムアラフ――改心』『タレンタイム~優しい歌』『ラブン』という長編6作品を通じてマレーシア映画の魅力を世界に知らしめ、マレーシアの映画界に新しい風を吹き込んだことから「マレーシア映画の母」とも称されます。
ヤスミン作品の特徴として、マレーシアを描くがゆえの混成性と、ヤスミン自身が作品に込めた多義性・多層性が挙げられます。こうした特徴を踏まえて、マレーシアの社会的背景を理解したうえで物語を観ると、ヤスミンが作品に込めた様々なメッセージがみえてきます。
それらを読み解きながら物語を愉しむことは、混成性が増すこれからの世界と日本をどのように理解して、どのように生きていくかを考える参考にもなり得ると考えています。
上記内容は本書刊行時のものです。