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日本料理 淡流の一期一会
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2023年6月30日
- 登録日
- 2023年5月2日
- 最終更新日
- 2024年8月31日
書評掲載情報
2023-07-05 | 神戸新聞 朝刊 |
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紹介
2019年の開店以来、「粋人好み」と評判の日本料理「淡流(たんりゅう)」。
店主・中江悠文の料理とうつわを、禅語とともに紹介するビジュアルブック。
日本料理「淡流」は兵庫県姫路市に店を構え、県内だけでなく東京や大阪からわざわざ訪れる客でいつも満席。なかなか予約が取れないことでも有名だ。
「銀座小十」の元料理長であり、表千家の講師でもある店主。その茶道の精神が店で提供される料理やうつわ、空間づくりなどのすべてに貫かれており、奇をてらわない控えめな佇まいのなかにある奥深い豊かさは客を魅了してやまない。
今もっとも勢いのある新名店「淡流」の魅力がつまった1冊。
目次
・はじめに
・一期一会
・ルーツを知る
・もてなしの心
・削ぎ落とす
・うつわが語る
・直観
・四季を感じて
・淡々として水の流れるがごとく
前書きなど
長い歴史のなかで、日本料理の技術は数多の料理人によって磨かれ、受け継がれてきました。その骨格を崩すことなく自分のものにしたいと、私はこれまで脇目も振らず学び続けてきました。見た目の派手さや流行のパフォーマンスなどに左右されない実直な料理でお客様に真のもてなしを提供したいと、「日本料理 淡流」を開店したのが二〇一九年四月。おかげさまでたくさんの方に愛していただき、今年四周年を迎えました。
一年を通して穏やかな気候に恵まれた播磨地域(兵庫県)に、淡流は店を構えています。北は山々に囲まれ、南は瀬戸内海に面しているため、ここでは山海の旬の素材が豊富に揃います。
東京で料理人をしていた頃は、築地市場で瀬戸内海産の立派な鳴門鯛、ハモ、アワビ、車海老、牡蠣などを仕入れていましたが、いまは潮の香りがする漁港へ出向いて漁師さんの話を聞いたり、魚屋さんと相談したりしながら仕入れができます。野菜は農家さんの畑まで足を運んで、畑で育っている姿を目にし、土の匂いを嗅ぎます。農家さんと会話することでより深く素材を知り、その良さを生かす方法を考えることができます。また、季節になれば店の料理人たちとともに私が所有する里山へ入って、筍やタラの芽、木の芽、わらび、クレソンなどの山の幸を自分たちの手で摘みとっています。
食材ひとつひとつに時間をかけ、手に入れることで、料理に向かう姿勢も自ずと変わります。私を含め料理人たちの知識の幅もぐんと広がるので、お客様からいただくさまざまな質問にも答えられるようになります。目の前で調理の様子を見ていただきながら、お客様と料理人が会話によってコミュニケーションをとることで、お客様により一層、料理を愉しんでいただけると感じています。
淡流では、陶芸家の盆出哲宣さんのうつわを多く揃えています。二十代半ばの修行時代に盆出さんの作品に一目惚れして、お金がないなかで少しずつ買い集めてきたものです。盆出さんの作品のほかにも、古いものから現代のものまで幅広く「これは」と感じたうつわは手に入れるようにしています。よいうつわと出会うと、導かれるように食材や盛付などをイメージすることができます。しかし、不自然に格好をつけた料理を盛ったり、何度も迷いながら盛りつけたりすると、うつわの表情を見失うこともあります。陶芸家と料理人の思いが同じ方向を向いていなければ、料理をひとつの作品に昇華させることは難しいのかもしれません。うつわと対話し、切磋琢磨することで、料理の腕も磨かれていくのです。
料理とうつわ、店構え、あしらう花や接客等、いまの私が考えられる最大限のもてなしを淡流で表現してきました。まだまだ道半ばの段階ではありますが、ここでひとまず一冊にまとめ、上梓することにいたしました。茶道の精神「一期一会」を大切に、料理のはじまりから締めくくりとして点てるお茶まで一切の妥協を許さず、今後もひたすらに道をあゆんでまいります。
二〇二三年六月吉日
中江 悠文
上記内容は本書刊行時のものです。