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絶対に解けない受験世界史4
悪問・難問・奇問・出題ミス集
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年4月12日
- 書店発売日
- 2024年4月12日
- 登録日
- 2024年3月15日
- 最終更新日
- 2024年9月13日
紹介
センター試験廃止、大学入学共通テストに変更
学校推薦・総合型選抜増加で一般入試縮小
大学の高校科目入試を制作する能力が大幅低下か?!
×大半が設問と関係ない『ジョジョの奇妙な冒険』のリード文(東京都市大 2022年)
×引用文献を大幅改変、変換ミス、挙句の果てに著者名を誤植(名古屋大 2023年)
×中学生でも気が付く「勘合貿易開始時に足利義満は将軍」ミス(早稲田 2023年)
×範囲外から出題して盛大に誤植するというクソダサ行為(慶應大学 2021年)
×センシティヴな問題で「歴史にif」を答えさせる(産業能率大 2021年)
×大河ドラマに掛けて「麒麟」の絵画を出すも問題が崩壊(大阪大 2021年)
……等などヘンな問題を徹底的に調査・検証・解説・糾弾!
「新科目「歴史総合」が誕生するまで」「話題になった他科目の出題ミス」「センター試験地理 ムーミン・ヴァイキング炎上事件」等のコラムも
目次
■ 序文 2
2023年度早慶 11
2023年度国公立 53
■コラム1 世界史用語の変化&高校世界史に見られる誤謬 77
2022年度早慶 81
2022年度国公立 128
2022年度私大その他 139
■コラム2 話題になった他科目の出題ミス・難問 236
2021年度早慶 251
2021年度国公立 276
2021年度私大その他 306
■コラム3 『「センター試験」を振り返る』を振り返る 385
■コラム4 2021年度大学入学共通テスト騒動の記録 397
■コラム5 新科目「歴史総合」が誕生するまで 402
■終章 最後にちょっと,まじめな話を 410
■あとがき 415
前書きなど
■■■序文■■■
『絶対に解けない受験世界史』シリーズは4冊目を刊行することになった。出版ごとにこの序文では近年の受験世界史の概況を述べているが,本巻の大きなトピックとしてはセンター試験から大学入学共通テスト(以降は共通テスト)への切り替わりが挙げられる。共通テストの地歴公民では,史資料をふんだんに用いて,単純に知識を問うだけではなく,読解力や思考力をも問うという高い目標の下で工夫が凝らされた出題が初年度以降続いている。一方で,やはり目標が高すぎたのか,センター試験と比べると少し荒れた出題が登場してしまう。そうした問題は本編で取り上げた。また,この制度変更自体も調べてみたらかなり面白かったので,コラムにまとめておいた。お読みいただければ幸いである。
前巻から続くトレンドとして,入試で世界史を課す大学・日程が減少する傾向がある。より正確に言えば,高校科目に出題が制限されないので作問しやすい「総合問題」に流れ,英語や国語ごと科目の入試を廃止する傾向が強まっている。もはや教員に高校科目を勉強させて高校科目入試を作らせるだけの体力が大学から無くなりつつあるのだろう。さらに言えば一般入試の定員が年々縮小されており,学校推薦型選抜や総合型選抜(旧称AO入試)の枠が広がっている。これ自体の是非は本書では問わないが,高校卒業程度の学力を問うのに高校科目の枠組みが無視されるというのは本末転倒の感がある。
以下は前著にも書いた内容であるが,繰り返しておきたい。なぜ出題ミスや悪問が許されないかと言えば,端的に言って公正さを欠くからである。より具体的に言えば受験生の努力を無に帰す行為である。作問者の大学研究者からすると単なる厄介な年次行事でも,受験生からすると一生のかかった大事な試験だ。無論,「大学入試が人生の全てではない」のだが,それとこれとは別の命題であり,一生がかかっていることには違いない。問題を解くことに膨大な勉強時間を費やしてきたからこそ,どうがんばっても解けない問題を出すのは出題側の不始末であり,指定した範囲から逸脱するのもルール違反だ。範囲に関しては明確なルールが存在しないとはいえ,「高校生として必要な知識・教養を問う」というのが大学と受験生の間の紳士協定であろう。
また,多くの悪問は知的怠惰と傲慢さから生じているものであり,避けがたいケアレスミスではない。ここは非常に重要なところで,前者と後者には天と地ほど開きがある。作問者も人間であるから,どれだけ注意をしていてもミスを起こすことはある。そのためにクロスチェックをするであろうが,複数の人間が見落とすことも稀にある。そういった場合にはミスの存在を発表し,適切な措置をとれば,責任は相当に軽くなる話なのである。少なくとも私はなんら糾弾しないし,私自身しばしば誤字脱字を起こすのでむしろ同情したくなる。
しかし,実際に解いて分析してみると,出題ミスや悪問は,単純な怠惰と傲慢さから生まれたとしか思えないものがほとんどである。課すべき出題範囲を把握しておらず,歴史の問題ではあるが,明らかに高校世界史の範囲を逸脱した出題をする。結果,紳士協定は守られない。また,クロスチェックを通していないとしか思えないほど独りよがりな問題を作り,しかもミスを出したところで発表も訂正もしないで,スルーしようとする大学さえある。はっきりと言ってしまえば教育研究機関としてあるまじき態度であり,知的怠惰と傲慢と言われても仕方がない。その実態は案外と知られていないのではないか。センセーショナルに一部の弩級の悪問だけが騒がれ,それ以外は無視されているのではないか。むしろ問題は,センセーショナルではない程度の悪問が跋扈していることだ。こうした現状は,暴露されなければなるまい。
本書の目的
本書の目的はいくつかある。
1.入試世界史の一部大学に見られる,杜撰な作問を明らかにし,糾弾すること。特に,有名大学・難関大学にあぐらをかいている方々の知的怠惰の暴露を最大の目的とする。
2.真摯に作られた問題でも,出題ミスになることはある。そこで,出題ミスを集めることで,出題ミスの出やすい傾向を分析する材料として世の中に提供する。
3.単純に,バカバカしい入試問題をエンターテイメントとして笑い飛ばし,当時の受験生たちの無念を供養することにする。
4.受験世界史範囲外の超難問を収録することで,受験生および一般の歴史好きに対する挑戦状とする。なお,本書を参考書として用いた結果として落ちても著者は責任を取りません。
本書の目的として注記しておくこととして,現行の大学入試制度の批判は目的としていない。要するに「世界史という科目自体の存在意義」ひいては「知識を問う筆記試験という問題形式自体の存在意義」に関する議論は,本書ではしない。それは私の手に余る議論だ。本書はあくまで,「現行の世界史という試験として,糾弾されるべきもの・笑えるもの・特異なものを記録として収集し,分析する」ことだけに特化している。
収録の基準と分類
悪問というものを考えるとき,反対に言って良問・標準的な問題とは何だろうか。私は以下のように定義する。そしてここから外れたものを悪問として扱う。
・世界史という科目の都合上,歴史的な事象ないしそれに関連する地名等を問うもの。
・大学入試という形式上,最低限どれかしらの高校生向け検定教科書に記載がある内容を範囲とするもの。これを逸脱するものは完全なルール違反である。
・また,現実的に考えて受験生が販路の限られた教科書の全種類に触れることは不可能であり他科目への圧迫となるため,可能な限り半分以上の教科書に記載がある内容を範囲とするもの。
・歴史的知識及び一般常識から,「明確に」判断を下せるもの。作問者の心情を読み取らせるものは世界史の問題ではなく,現代文の試験としても悪問である。
以上の条件から外れたものは,悪問として扱えるだろう。しかし,この緩い判定では,あまりにも多くの問題が引っかかってしまうのが現状である。よって,さらにここから厳しい条件を課しつつ,以下のように分類してリストアップすることとした。
出題ミス:どこをどうあがいても言い訳できない問題。解答不能,もしくは複数正解が認められるもの。
悪問:厳格に言えば出題ミスとみなしうる,国語的にしか解答が出せない問題。
奇問:出題の意図が見えない,ないし意図は見えるが空回りしている問題。主に,歴史的知識及び一般常識から解答が導き出せないもの。
難問:一応歴史の問題ではあるが,受験世界史の範囲を大きく逸脱し,一般の受験生には根拠ある解答がおおよそ不可能な問題。
補足説明として。出題ミスは「完全に解けないこと」が条件。少しでも解けそうならば悪問に分類した。難問・奇問の判定基準であるが,基本的に「山川出版社から刊行されている『世界史(B)用語集』(以下カギカッコ無しに用語集と記載)に記載がないもの」は難問・奇問とした。もう少し説明すると,用語集とは高校世界史Bとして検定を突破した教科書に記載されている歴史用語を網羅的に収録した辞書のようなものである。網羅的に収録しているため,この用語集に収録されていないということはどの教科書を見ても載っていないと言ってもまず問題ない。つまり,範囲外である。このうち,一応ジャンル的には歴史になりそうなものは難問,そもそもジャンルが歴史ではないものは奇問とした。
……という運用で2014年頃までは問題なかったのだが,用語集は2014年10月に新課程の版に改訂された際に,用語を大幅に削減して約20%をカットした(収録用語が約7000語から約5600語になった)。これは検定教科書の冊数が11冊から7冊に減少した影響もあるが,「編者である全国歴史教育研究協議会が不要と判断した用語は教科書に記載されていても収録しない」という新たな方針を採用したという点も大きく影響しており,結果的に用語集の網羅性はかなり下がっている。ゆえに,2014年10月以降の版では「用語集には記載がないが,教科書のうちいずれかに記載がある」という現象がそれなりに見られるようになってしまい,以前より高校世界史範囲内・外の判定が困難になった。一応,用語集に記載がないがいずれかの教科書には記載があるという用語に遭遇した場合,掲載されている教科書のシェアや,常識的に考えて通常の受験勉強で覚える用語かどうか等の観点から総合的に検討して判定した。また,用語集に記載されていても,普通は覚えないもの・覚えようとは考えないものが出題されていた場合は,難問として収録した。そこは実際に解く上での難易度を勘案して柔軟に運用したつもりである。また,分類:難問については,用語集に載っていないものを完全に機械的に収録したため,いくつか良問も含まれている。この種別については収録即悪質というわけではないことを注記しておく。
もう一つ,用語集の説明として。用語集では,収録された用語の横には丸数字がついており,これが検定教科書に載っていた数を示している。たとえば「シュメール人⑦」であれば,7冊の教科書に「シュメール人」という記載があることを示す。なお,7冊というのは最大数であり,シュメール人は全ての教科書に載っているということがわかる。逆に「フルリ人①」は7冊中1冊にしか記載がない。ここからシュメール人はメジャーな用語,フルリ人はマイナーということがわかる。以後,この丸数字は特に注記がない限り用語集頻度を示す数字として扱う。その他,図版や地図を使った問題については,手持ちの何冊かの資料集を見て掲載があるかないか,また私の判断で知名度を勘案し,範囲内・外を判断した。一般的な認識とずれている可能性が無くはないので,この点もご了承いただきたい。
最後に,入試問題については,現物の入手が可能だったものについては現物を参照した。しかし,実際にはほとんど不可能だったので,ほぼ旺文社の『入試問題正解』といわゆる『赤本』,主要予備校の解答速報,Xamを参照した。難問・悪問になってくると各予備校・参考書の解答が割れているものもあって,おもしろい。そこも注目していただければと思う。これらの書誌情報については以下の通り。
[主要な参考文献一覧]
通称『入試問題正解』(本文では『入試問題正解』と表記)
『2022年受験用 全国大学入試問題正解 世界史』旺文社,2021年。
『2023年受験用 全国大学入試問題正解 世界史』旺文社,2022年。
『2024年受験用 全国大学入試問題正解 世界史』旺文社,2023年。
通称『大学入試シリーズ』(本文では『赤本』と表記)
『早稲田大学(法学部)(2024年版 大学入試シリーズ)』教学社,2023年。
『慶應義塾大学(法学部)(2024年版 大学入試シリーズ)』教学社,2023年。
以下,入試問題を収録した大学については,収録された巻を参照した。
解答速報各予備校URL
河合塾 http://www.kawai-juku.ac.jp/
駿台予備学校 http://www.sundai.ac.jp/
代々木ゼミナール http://www.yozemi.ac.jp/
東進ハイスクール・衛星予備校 http://www.toshin.com/index.php
早稲田予備校 http://www.waseyobi.co.jp/index.html
増田塾 https://masudajuku.jp/
※ このうち,全大学の入試解答を出しているのは東進のみ。ただし,早慶等の難関大学以外は「速報」ではなく,かなり遅れてから解答が発表される。しかも会員制であり,かつ解答の精度は高くない。三大予備校はさすがに解答の正確性がどこも高い。頼りになるのが代ゼミ・駿台で,分析がしっかりしている。河合塾は速報が出るのがやや遅い点と,分析があっさりしている点で,他社よりも力が入っていない印象。しかし,河合塾の大きな特徴として,他の予備校は1年分しか掲載していないのに対し,ここは過去2年分(東大・京大に限れば10年分!)掲載があり,この点ではとても重宝する。早稲田予備校は名前の通り,早稲田大のみ。増田塾は私大文系専門塾で,解答速報も早慶とMARCH等の難関私大中心である。増田塾は解説が丁寧だが,発表が入試日から4~6日後であるので「速報」とは言いがたいという欠点がある。
教科書
『詳説世界史B 改訂版』山川出版社,2019年。
『新世界史B 改訂版』山川出版社,2019年。
『世界史B』東京書籍,2019年。
『世界史B 新訂版』実教出版,2019年。
『新詳世界史B』帝国書院,2019年。
参考書
『世界史用語集 改訂版』全国歴史教育研究協議会編,山川出版社,2018年刊行,2020年・2021年・2022年各版。
『山川 詳説世界史図録 第2版』山川出版社,2014年刊行,2017年版。
『詳説世界史研究』山川出版社,2017年刊行。
『日本史用語集 A・B共用』全国歴史教育研究協議会編,山川出版社,2022年刊行。
『最新世界史図説タペストリー』帝国書院,2021年・2022年・2023年各版。
その他使用した参考文献は,本文中使用したページにて書誌情報を記載。
上記内容は本書刊行時のものです。