書店員向け情報 HELP
出版者情報
書店注文情報
在庫ステータス
取引情報
江戸時代の呂氏春秋学
山子学派と森鐡之助・新出注釈二種【解説と翻刻】
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2016年6月
- 書店発売日
- 2017年6月19日
- 登録日
- 2017年6月1日
- 最終更新日
- 2017年6月22日
紹介
これまで現存が確認されていなかった山子学派の『呂氏一適』と、近世末の忘れられた学者・森鐵之助の注釈を初めて翻刻。
この二種は、江戸時代における『呂氏春秋』注釈の中で質量ともに最も優れたものに数えることができ、中国思想史はもとより日本思想史にこそ重要である。『呂氏春秋』研究における意義を明らかにする解説を付す。
目次
はじめに
解 説
第一章 日本における『呂氏春秋』の受容
第一節 『日本國見在書目録』以降、室町時代末までの記録
第二節 『呂氏春秋』明版の中国からの舶来
第三節 『呂氏春秋』の和刻本
第四節 江戸時代の『呂氏春秋』注釈書の概要
第二章 『呂氏一適』と森鐵之助の『呂氏春秋』注
第一節 片山兼山著とされている『呂氏一適』
第二節 森鐵之助の『呂氏春秋』注
翻 刻
『呂氏一適』 補『呂子考』抄
森鐵之助の『呂氏春秋』注釈
あとがき
前書きなど
江戸時代における先秦・秦漢の諸子研究は盛んで、『荀子』、『孫子』、『管子』、『韓非子』、『説苑』等には優れた注釈があり、それらの中には刊本のあるものもあり、広く行われた。そのような中で、『呂氏春秋』については比較的手薄で、江戸時代に邦人の注釈が刊行されたものはなく、写本で残されたものも少ない。中にはなかなかに優れた成果もあったようであり、近代中国の注釈家たちによって大いに活用されているものすらあるが、書名のみが伝わるものも少なからず、現存するものが少なく、その実態はとらえがたい。このような状況の中で、本書は、これまで現物の存在が確認されていなかった、従来一般に片山兼山著とされてきた『呂氏一』と幕末明治初期の大和出身の無名の学者森鐵之助の注釈を翻刻し、両者の江戸時代における『呂氏春秋』研究に占める位置を確認するための解説を付するものである。
江戸時代に比較的広く利用されたと思われる荻生徂徠の『讀呂氏春秋』は「審應覽・具備」までで中断されており、全編にわたって注釈が施されているものでも、徂徠をはじめとする若干の先人の説の引用が多くの部分を占めている。その中で、『呂氏一適』と森鐵之助の注釈は、詳細さにおいて、またそのほとんどが自家の説であるという点で、他にほとんど類を見ない。現存が確認されていなかったということ以上に、特にこの点に両者の意義があると考える。
本書は、前編「解説」と後編「翻刻」とに分つ。『呂氏一適』の翻刻には、片山兼山の学統、いわゆる「山子学」の『呂氏春秋』研究の成果をできるだけ紹介するための一助にするべく、片山兼山著・萩原大麓訂補『呂子考』の内容の『呂氏一適』を補う部分を当該箇所に付け加えた。
このような翻刻を行ったわれわれの意図は、従来知られていなかった江戸時代の『呂氏春秋』を紹介することによって、この時代の先秦諸子研究の全貌把握の一助とすることのみではなく、むしろ山子学派および森鐵之助らの『呂氏春秋』注釈が、当代の『呂氏春秋』研究にも十分に貢献しうると判断したからである。このように判断する根拠の一端については、「解説」の第二章第二節(三)および第三節(二)においてやや詳しく述べる。
翻刻の方針の詳細については、後編の凡例にゆずる。翻刻の底本は編者の架蔵本である。
上記内容は本書刊行時のものです。