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食人の形而上学
ポスト構造主義的人類学への道
原書: Metaphysiques cannibales: Lignes d'anthropologie post-structurale
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2015年10月
- 書店発売日
- 2015年10月26日
- 登録日
- 2015年10月13日
- 最終更新日
- 2024年8月1日
書評掲載情報
2015-12-11 |
週刊読書人
評者: 堀千晶=仏文学者 |
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重版情報
2刷 | 出来予定日: 2016-06-15 |
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紹介
『アンチ・オイディプス』から『アンチ・ナルシス』へ。
ブラジルから出現した、マイナー科学としての人類学。
レヴィ=ストロース × ドゥルーズ+ガタリ × ヴィヴェイロス・デ・カストロ。
アマゾンの視点からみれば、動物もまた視点であり、死者もまた視点である。
それゆえ、アンチ・ナルシスは、拒絶する――
人間と自己の視点を固定し、他者の中に別の自己の姿をみるナルシス的な試みを――。
なされるべきは、小さな差異のナルシシズムではなく、多様体を増殖させるアンチ・ナルシシズムである。
動物が、死者が、人間をみているとき、動物が、死者が、人間であるのだ。
目次
第Ⅰ部 アンチ・ナルシス
第1章 事象への驚くべき回帰
第2章 パースペクティヴ主義
第3章 多自然主義
第4章 野生の思考のイマージュ
第Ⅱ部 人類学的視点から読む『資本主義と分裂症』
第5章 奇妙な相互交差
第6章 多様体の反‐社会学
第7章 すべては生産である ―― 強度的出自
第Ⅲ部 悪魔的縁組
第8章 捕食の形而上学
第9章 横断するシャーマニズム
第10章 生産がすべてではない ―― 生成
第11章 システムの強度的条件
第Ⅳ部 食人的なコギト
第12章 概念のなかの敵
第13章 構造主義の生成
文献一覧
訳者あとがき ┃ 山崎吾郎
『アンチ・オイディプス』から『アンチ・ナルシス』へ ――『食人の形而上学』解説 ┃ 檜垣立哉
索 引
前書きなど
「 私は以前より、自分の専門分野の観点から、何らかのかたちで、ドゥルーズとガタリへのオマージュとなるような書物を著したいとおもっていた。『アンチ・ナルシス――マイナー科学としての人類学』と呼ばれることになる本がそれである。同時代の人類学を貫く概念的緊張を特徴づけることが、その目的となるはずであった。しかしながら、タイトルを決めるとすぐに、問題が生じることとなった。私はすぐに、このプロジェクトが矛盾をひきおこすことに気がついた。つまり、下手をすれば、アンチ・ナルシスという主題の秀逸さにはるかにみあわない虚勢のようなものしか書けないことに気づいたのである。
こうして私は、この書物をフィクションの作品、あるいはみえない作品――その最良の解説者はボルヘスであった――にしようと決めた。多くの場合それは、眼にみえる書物そのものよりも、ずっと興味深い。というのも、優れた盲目の読者による解説を読みながらそれを理解することができるからだ。その本を書くというよりは、まるで他人がそれを書いたかのようにして、その本について書いたほうが的を射ていることがわかったのである。本書『食人の形而上学』は、したがって、『アンチ・ナルシス』と名づけられたもう一つの書物についての紹介である。その本は、何度もずっと構想されてきたのだが、とうとう世にでることはなかった――正確にいえば、以下の頁のいたるところにそれは現れているのかもしれないが。
『アンチ・ナルシス』の主要な目的――私の専門分野のいい方をすれば「民族誌的」現在――は、つぎの問いに答えることにある。人類学が研究対象とする民族にとって、概念的に人類学といえるものは何であるべきか? こうした問いの含意は、真逆の問いについて考えてみれば、おそらくさらにはっきりするだろう。人類学理論の内部にある相違や変動は、おもに(もっぱら歴史‐批判的な観点から)人類学者が属している社会形態、イデオロギー論争、知的世界、学問的なコンテクストの構造や局面によって説明されるのだろうか。それが唯一の妥当な仮説だろうか。人類学理論によって導入されるもっとも興味深い概念、問い、実体、エージェントが、説明しようとする社会(あるいは民族、集合体)の想像力にその源泉をみいだしていることを示すような、パースペクティヴの転換をすることはできないだろうか。人類学の揺るぎないオリジナリティはそこにあるのではないだろうか。「主体」の世界と「客体」の世界からうみだされる概念と実践のあいだの縁組――つねに多義的であるが、しばしば多産的でもある――にこそ、人類学のオリジナリティはあるのではないだろうか。」(本書の冒頭より引用)
版元から一言
「人類学は本当に力を失ってしまったのだろうか。とりわけ哲学に対する、あるいは哲学というヨーロッパ的な知に内側から抵抗する力強いあり方をなくしてしまったのだろうか。実はそんなことはない。エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロという、ブラジル・リオデジャネイロの人類学者、英語圏にも仏語圏にも属さず、またかつては人類学の的探求の象徴であったアマゾンの国から出現した人類学者の存在は、あらためて人類学の理論についての可能性を開いている…。[中略]ではわれわれ日本は、どうして人類学のこの状況においついていけなかったのだろうか。[中略]では日本は? ジュリアンの中国ともさらに異なる日本は? それに答えるのはもはやカストロではなくわれわれであるだろう。」(訳者解説より引用)
上記内容は本書刊行時のものです。