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哲学者と北のアーティストたち
表現に至るまでの道のり
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年9月30日
- 書店発売日
- 2024年10月10日
- 登録日
- 2024年10月1日
- 最終更新日
- 2024年10月21日
紹介
なぜ私たちは表現活動をするのであろう。
そして、自分の中から生まれてくるものを表へ現わすきっかけは何か。
哲学者の問いかけに、北海道にゆかりある表現者4名が集結。表現活動に至るそれぞれの背景や経緯を自ら文章に綴った。
常の活動とは異なる、書き記すという手段で表現について振り返り、見つめ、描写された表現者たちの道のりが、本というひとつの舞台にとりまとめられて結実。語られたそれぞれの人生を通じて、表現活動へ臨む人たちへの道しるべを示唆する一冊。
目次
はじめに
01 川上雄大
50歳からの音楽活動 良いこともあれば悪いこともある
はじめに/歌との出会い/小学校二年生の二月のある寒い日に/
中学生時代、人前で初めて唄った経験/高校生時代、横山直樹先生との出会い/
受験浪人の下宿時代/大学生時代の札幌と函館では/社会人になり音楽活動をやめる/
ススキノでのアルバイト時代/夜の仕事を辞めるひとつの決断/昼の社会へ復帰/
一緒に組んで仕事をすることの難しさ/自分のパソコンスクール開業/
頼まれて入った会社だったが/アメブロ時代/音楽活動の再開/
ユーチューブに投稿したことがきっかけで/今度は自分が音楽に恩返しをする番/
再開した音楽活動の仕方/北海道作詩家協会に入って/私の曲の作り方/
プロの道へ入るきっかけ/モナコ国際映画祭への参加/新型コロナ蔓延時代/
ファンクラブ結成/シャンソン歌手のマサシさんとの出会いと別れ/
北海道のベテラン歌手・中村明さんと/作詞家・蒔田俊明先生との出会い/
支えてくれる仲間たち/最後に
02 中島杏子
表現者として生きること つづけることで見えてきた景色
楽器との出会い/音楽への目覚め/専門の道へ/芸大受験のこと/東京での大学生活/
世界へ向かうきっかけ/プロへの険しい道のり/留学/ドイツの音大受験/
晴れて大学院生に/ヨーロッパでクラシック音楽を学んで感じたこと/帰国/
日本での演奏活動/子育てとの両立/わたしが演奏する意味/
ライフワーク『教えるということ』/今後の展望/長くお世話になった先生の思い出/
引退について考えること/続ける覚悟/からだのこと/音楽家に才能は必要か/
表現者として生きること
03 堀きよ美
最高の道草 遠まわりして還ろ
はじめに/言葉で伝えるって大事/い場所の変更は自分をいかす/
『化粧』上演の挨拶/人生つくづく塞翁が馬/生きていること、感動すること/
おわりに
04 西岡裕美子
表現すること、生きること 好きなことを続けるために必要だったこと
はじめに/テレビの中のピアニスト/見たことのない世界への憧れ/
全肯定してくれたピアノの先生/ピアノに向いていた自分の性格/
融通の利かない性格/家族の応援/「ピアノやめて後悔しないの?」/
悩める中学生時代/「ピアノだけが人生じゃないよ」/「あなたはどう思うの?」/
「どんな人になりたいの?」/どんな景色が見えるのか知りたい/
「ピアノを習わなきゃいけない理由ってあるんですか?」/おわりに
05 船木祝
哲学と自分との対話 原点への回帰に関する自問自答
哲学志望/ドイツ留学/日本への帰国/個人と共同体/孤独/自己の真の考え/
自己受容/苦悩/緊張の道と寛ぎの道/心を開くことと閉ざすこと
おわりに
執筆者紹介
前書きなど
はじめに
私たち人間はさまざまな表現活動をする。また、表現にはそれぞれ読者、観客などの対象がいる。その読者、観客は日本の世間のなかに置かれている。本書は、次の二つの問いを軸とする。
一つは、なぜ私たちは表現活動をするのであろう、という問いである。自分の表現がクオリティーの高いもの(感動するもの)として対象に受け取られることが喜びであるからなのか。しかし、それと同時に批判を受けることも避けられない。場合によっては、後者を多く引き受けなくてはならないこともあるだろう。自責の念を振り払えないまま、また新たな表現の場を求めていくことさえある。そこまでして表現活動を続けるのはなぜなのか。それは世間に生きる人々への感動のためなのか、癒しのためなのか。
そして、自分の中から生まれてくるものを表へ現わすきっかけは何か、というのが、もう一つの問いである。日常生活を生きる中で、イマジネーションを抱きしめている人から、それを解き放す人(表現者)へ変化するきっかけは何か。加えて、表現者であり続ける原動力は何なのか。それには、個人の経験、葛藤、希求、モデルなどさまざまである。私たちの日常における経験の中で、表現活動に結びつきうる事象にはどのようなものがあるのだろうか。
(中略)
この二つの問いをもとに、北海道にゆかりある表現者が集結して、表現に至るそれぞれの背景や経緯をとりまとめようとしたのが本書である。それぞれの成果(失敗も含め/笑)に至る背景や経緯を掘り起こすことは、未来の表現者を生み出す重要なひとつの試みと考える。
執筆者は、シンガーソングライター、音楽家(チェリスト)、俳優、音楽家(ピアニスト)、哲学者・倫理学者である。選択した分野で別個に活動する人物たちがそれぞれの表現について、振り返り、見つめ、描写することで、専門横断的な重要な気づきが、読者と執筆者自身にもたらされることを望んでいる。うっかり見逃していた易しく大切な気づきも得られたなら、なお嬉しい。
一見異なったように感じる多種の表現活動の共通点や、意外な相違点が明らかになるに違いない。それらの共通・相違点のつき合わせが新たな視点を開くだろう。
本書を自らの人生に重ねて読まれるだろう読者にあっては、これから表現活動に臨む人や、目下、試行錯誤の最中という人もいるだろう。そうした人たちに、あわよくば、道しるべとして示唆することができれば幸いである。
船木 祝
上記内容は本書刊行時のものです。