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日本林業は世界で勝てる!
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年11月22日
- 書店発売日
- 2024年11月22日
- 登録日
- 2024年11月15日
- 最終更新日
- 2024年11月16日
紹介
日本が誇る人工林を活かしてワールドチャンピオンを目指せ!
目次
刊行に寄せて 3
はじめに 5
第1章 なぜ日本林業は世界で負け続けてきたのか 13
1.日本林業の変遷と現状 14
2.世界の林業の変遷と現状 16
(1)世界の製材品消費量 17
(2)世界の国別千人当たり製材品消費量 20
(3)日本の製材品消費量の変化 23
(4)世界の産業用丸太の輸入と輸出 28
(5)世界の薪炭材を含む木材生産量の変遷と現状 32
第2章 世界の森林はどうなっているのか 39
1.世界の森林資源の変遷 40
2.世界にある様々な森林 42
<コラム>森林と原野はどこが違うのか 45
3.世界の森林蓄積 46
<コラム>スエズ運河のコンテナ船座礁事故から見えたこと 48
4.世界の人工林 50
5.世界の木材生産林 54
第3章 敵を知る─主要林業国の実力─ 57
1.米国 58
(1)米国西部、太平洋沿岸部のベイマツ 62
(2)米国南部のサザンイエローパイン 65
(3)米国東部の広葉樹 68
2.カナダ 70
3.欧州 74
(1)フィンランド 74
(2)スウェーデン 84
(3)ドイツ(スイス) 92
(4)オーストリア 100
4.ニュージーランド 104
5.中国 112
6.ベトナム 117
7.ロシア 122
第4章 己を知る─日本林業の実力─ 125
1.世界の主要林業国の動向と木材需要の見通し 126
2.世界で戦うためには生産コストの削減が不可欠 127
3.ウッドショックから読み取れる大きな変化 131
4.日本の製材業は国際レベルに近づいてきた 135
5.木材流通の構造的変化が進んでいる 143
6.製品市場の縮小とプレカット工場の台頭 153
7.日本国内の木材需要はどうなっていくか 161
第5章 日本林業の課題と可能性 167
1.日本林業が乗り越えるべき2つの課題 168
2.現場から見た日本林業の実力 169
(1)人工林の大部分は大規模施業と機械化に対応できる 169
(2)なかなか上昇しない林内路網密度 171
(3)日本らしい林道と林業機械化の必要性 176
(4)道づくりの実際 179
3.素材生産のあり方を見直す 182
(1)林業機械化の変遷 182
(2)高性能林業機械化の現実 185
(3)九州森林管理局での実践 187
(4)北海道森林管理局での実践 191
(5)素材生産の作業区分別コスト分析 196
(6)素材生産コスト削減のポイント 197
4.再造林のあり方を見直す 201
(1)肥培林業の試み 201
(2)最適な造林樹種と早生樹の可能性 203
(3)苗木生産の現状とエリートツリーの可能性 205
(4)保安林と造林補助の現状 207
(5)普通林と造林投資の現状 209
第6章 世界の主要林業国は何を目指しているか 213
1.最近の円安が意味していること 214
2.「スマート林業」の可能性 215
(1)コマツフォレストの取り組み 216
(2)スウェーデンの機械開発コンセプト 218
3.「無人化林業」の実現に向けて 220
(1)機械をフル活用するために必要なこと 220
(2)機械開発目標の明確化と予算措置 223
(3)素材生産を大きく変えたテザーシステム 223
(4)今後に向けた機械開発の課題 226
(5)ICTを活用した効率的な流通システム 227
4.日本林業改革試案 231
(1)日本の素材生産に求められること 231
(2)日本の再造林に求められること 234
第7章 日本林業は世界のトップに立てる 239
1.私の生い立ち 240
2.絶えざる挑戦によって国際競争力を獲得する 242
3.ビックデータで競争する時代 244
4.日本林業の未来像 245
(1)林業機械化の理念と方向性 245
(2)日本林業の将来モデル 247
山田壽夫の年表 250
おわりに 253
前書きなど
刊行に寄せて
本書を著した山田壽夫さんは、いわゆる林野技官の中でも、傑出した異色の人物と言えます。林野技官は、国家公務員試験に林業等の技術職で合格し、国家官僚として林業に関わる公務に就きます。言うまでもなく、林業のプロです。ただその中でも、山田さんのように、生粋の林業人と言える林野技官は、そう多くはありません。異色とお呼びして差し支えないでしょう。
山田さんの実家は、熊本県人吉市の森林所有者で林業を営んでいます。山田さんも、幼少の頃から毎日のように山に通ったと言います。この原体験、そして森林経営者としての視点を持っておられたことが本書の通奏低音となっていることは、ページをめくられれば、直ぐにご理解いただけるでしょう。
鹿児島大学の林学科を卒業した山田さんは、「林業が儲かって儲かって仕方ない」時期に、林野庁に入りました。その頃から日本林業は長期低迷時代に入っていくのですが、その中で山田さんは、林業の振興と再生に一貫して取り組んできました。持ち前の積極性と明るさに、海外視察などで得た広い視野と知見を加えて、新しい政策を次々と打ち出してきました。現在、日本の木材自給率は4割台まで回復し、国産材の用途も国内だけでなく海外にまで広がってきていますが、その根底に山田さんの存在があったことは誰もが認めるところです。
本書の通奏低音となっているものが、もう1つあります。それは、山田さんが恩師と仰ぐ赤井英夫・鹿児島大学農学部教授(故人)の教えです。国内外の木材需給などに精通していた赤井教授は、日本林業の進路について早くから警鐘を発していました。1980(昭和55)年に世に問うた『木材需給の動向と我が国林業』(日本林業調査会発行)では、戦後植林した人工林が成長してきていることを踏まえ、「おそらく将来の市場においては、国産材対外材の競争、木材対代替材の競争、国産材相互の産地間競争等の厳しい市場競争が到来することになるであろう」と予言し、1984(昭和59)年に著した『新日本林業論』(同)では、「今後の日本林業の進路として、木材需給のひっ迫を想定した森林資源の造成から、伐採の増大を軸にした地域林業の形成へと方向を転換することが必要だと考えている」とした上で、「このことは言うはやすく、実行は容易なことではない」と記しました。
この「実行は容易なことではない」ことに果敢に挑み、将来への道筋をはっきりとつけたのが山田さんです。赤井教授から託された課題に全力で取り組み、明確な答えを政策の形で出してきたと言えるでしょう。傑出した林野技官と評価する所以です。
本書の通奏低音について紙幅を費やしてしまいましたが、旋律についても語らなければなりません。主旋律は題名が示すように日本林業が世界とどのように戦うか、さらに言えばどのように勝って行くかです。孫子に倣い、世界を知り、日本を知ることで、百戦殆うからぬようにと筆を進め、今後の進むべき方向を示しています。政策を担当していた頃からも情報収集には定評のあった山田さんですが、最近の情報にアップデートされており、極めて示唆に富む内容となっています。是非、多くの方々に読んでいただきたいと考えています。
2024(令和6)年11月吉日
公益社団法人大日本山林会会長
東京大学名誉教授
永田 信
上記内容は本書刊行時のものです。