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日本の原風景99
- 発売予定日
- 2024年12月27日
- 登録日
- 2024年11月11日
- 最終更新日
- 2024年11月13日
紹介
日本の国土は、北海道から沖縄まで凡そ3000kmに広がります。そこには、人々の生業が営々と刻み込まれ、さまざまな暮しの風景が発現されてきました。それは、地上に描いた“人間の落書き”かも知れませんが、いろいろな自然条件や社会条件の下で、自らの生活を賭けた大真面目なものです。この密度の高い原風景に出会うと、心象の琴線に触れ思わず感動します。
景観は10年、風景は100年、風土は1000年ともいわれ、原風景は、何100年かにわたる知恵と工夫の結晶です。どのようにして、このような原風景が生まれたのでしょう。その風景には、ある偶然と次なる必然が、幾重にも折り重なり横たわっています。先人たちのつくり上げた原風景の懐へ、地図を片手に「旅」に出かけ、私たちの糧となるような啓示を探り当ててみませんか。
目次
はじめに
小樽──運河の残照── 北海道
函館──北海道の表玄関── 北海道
黒石──こみせの温もり── 青森県
村田──紅花商人の在郷町── 宮城県
角館──杜に包まれた城下町── 秋田県
増田──内蔵を秘める── 秋田県
酒田──山居倉庫が語る── 山形県
銀山温泉──大正浪漫漂う万華鏡── 山形県
手向──修験道の奥義── 山形県
杉山──仲良く並ぶ蔵── 福島県
喜多方──蔵三昧の在郷町── 福島県
大内──茅葺屋根が整列する宿場── 福島県
栃木──河岸に連なる蔵屋敷── 栃木県
小幡──堰の流れる小城下町── 群馬県
川越──小江戸の店蔵── 埼玉県
佐原──利根川東遷の申し子── 千葉県
佃島──東京湾の原点── 東京都
下関──宿駅の豪農屋敷── 新潟県
出雲崎──切妻妻入の連なる家並── 新潟県
荻ノ島──環状の集落── 新潟県
高田──雁木の連なる町── 新潟県
砺波平野──広がる散居村── 富山県
上大沢──間垣で固める集落── 石川県
東山──粋極まる花街── 石川県
長町──文化香る武家屋敷── 石川県
白峰──白山信仰とともに── 石川県
橋立──日本一金持ちの村── 石川県
大野──等身大の小さな寺町── 福井県
河野浦──北前船主の浦── 福井県
熊川──鯖街道の宿場── 福井県
赤沢──山奥の講中宿── 山梨県
戸隠──修験道の残影── 長野県
稲荷山──北信屈指の在郷町── 長野県
本海野──堰が流れる宿場── 長野県
茂田井──白壁が連なる坂── 長野県
安曇野──点在する屋敷林── 長野県
奈良井──峠下の宿場町── 長野県
木曽福島──屹立する崖家造り── 長野県
妻籠──町並保存の金字塔── 長野県
小野──本棟造りの宿場── 長野県
下栗──天空の山里── 長野県
馬籠──尾根筋の宿場町── 岐阜県
玉井町──和紙問屋の湊町── 岐阜県
美濃──和紙でウダツが揚る── 岐阜県
郡上八幡──水の城下町── 岐阜県
白川郷──合掌造りの集落── 岐阜県
下田──開国の港町── 静岡県
松崎──海鼠壁の町── 静岡県
有松──絞り染めで繁盛── 愛知県
足助──塩問屋の宿場町── 愛知県
関──古代要衝の宿場町── 三重県
松阪──御城番屋敷が残る── 三重県
伊勢──内宮の門前町── 三重県
麻吉──古市遊郭の残り火── 三重県
海津──湖北の古湊── 滋賀県
菅浦──湖北の隠れ里── 滋賀県
五個荘──近江商人の里── 滋賀県
近江八幡──近江商人の町── 滋賀県
坂本──石垣の里坊── 滋賀県
伊根──舟屋と暮らす── 京都府
美山──日本の原風景── 京都府
上賀茂──凛とした社家町── 京都府
祇園──京の花街── 京都府
伏見──酒蔵の町── 京都府
石切──異形の門前町── 大阪府
富田林──河内屈指の在郷町── 大阪府
平福──至福の川端── 兵庫県
番条──環濠が残る集落── 奈良県
今井町──寺内町から在郷町へ── 奈良県
飛鳥──日本の原点── 奈良県
大宇陀──大和の勝手口── 奈良県
五條──夢破れた十字路──奈良県
湯浅──醤油の発祥地── 和歌山県
若桜──土蔵を防火壁── 鳥取県
大森銀山──銀の争奪戦── 島根県
温泉津──温泉湧く湊町── 島根県
倉敷──文化芸術の町── 岡山県
吹屋──赤いベンガラの町── 岡山県
勝山──高瀬舟の終着駅── 岡山県
鞆の浦──屈指の古湊── 広島県
尾道──坂の町── 広島県
竹原──製塩の町── 広島県
御手洗──新興の湊町── 広島県
萩──土塀と夏みかん── 山口県
祝島──白い練塀の集落── 山口県
脇町──藍でウダツが揚る── 徳島県
笠島──水軍のふる里── 香川県
内子──木蝋の町── 愛媛県
水荷浦──耕して天に至る── 愛媛県
外泊──高石垣の漁村── 愛媛県
吉良川──水切瓦の蔵── 高知県
柳川──掘割の城下町── 福岡県
八女──居蔵造りの在郷町── 福岡県
大川内山──秘窯・鍋島の山里── 佐賀県
日田──西国筋郡代の陣屋町── 大分県
杵築──躍動的な坂の町── 大分県
臼杵──宗麟の夢の跡── 大分県
知覧──麓集落── 鹿児島県
竹富島──赤瓦屋根の集落── 沖縄県
原風景の位置図
おわりに
参考文献目録
前書きなど
旅先で出会う風景や空気感は多様性に富んでいます。本書で取り上げた原風景は、人々の暮らしの中で育てられてきた風景の一部に過ぎません。「日本の原風景九十九」の「九十九」は、さまざまな数多くのという意味です。原風景は、どこの風景が一番とかというようなものでなく、優劣つけるものでもありません。もちろん、「絶景百選」とか「三大名園」というように特定すべきものでもありません。
本書の原風景は、私が昭和四〇年代から半世紀余りにわたって歩いてきたものです。ちょうど高度経済成長期の中で、昔のものは古臭く良くないとされ、不要なものとして無残に壊され棄てられていっていました。しかし、その一方で、街並保存の胎動も力強く始まろうとしていました。
当時、私は、地図上に新しい地図を描くような町づくりの仕事をしていたことから、街や村の源流を探ってみたいという思いに駆られ、伝統的な街や村を歩き始めました。掲載した写真は、昭和五〇年代初めから撮ってきたもので、今では壊されて存在しないものもあります。ある町を象徴する写真を一齣でどう撮り切るか、個人の趣向もあり難しい問題です。鳥の目、人の目、虫の目で見ながら、数枚の写真も添えました。
原風景は、心奥にある心象風景で、人によって異なるものかも知れませんが、どこか琴線に触れるものが確かに共有されています。これらの原風景は、人々が暮らしの中で知恵と工夫を出し合いながら、生まれ育ててきた遺産です。そこには、私たちに学ぶべきものがあります。本書では、このような素直な問いかけを、少しでも紐解くことができればと願っています。(はじめにより)
上記内容は本書刊行時のものです。