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「てにはドイツ語」という問題 安田敏朗(著/文) - 三元社
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「てにはドイツ語」という問題 (テニハドイツゴトイウモンダイ) 近代日本の医学とことば (キンダイニホンノイガクトコトバ)

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発行:三元社
四六判
454ページ
定価 3,500円+税
ISBN
978-4-88303-529-8   COPY
ISBN 13
9784883035298   COPY
ISBN 10h
4-88303-529-8   COPY
ISBN 10
4883035298   COPY
出版者記号
88303   COPY
Cコード
C1081  
1:教養 0:単行本 81:日本語
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2021年5月
書店発売日
登録日
2021年4月22日
最終更新日
2021年4月22日
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紹介

日本医学と「言語的事大主義」。
いまは忘れられた、ドイツ語を日本語の語順でならべて助詞などでつなげた「てにはドイツ語」とは、ドイツ語で医学教育がおこなわれるという、きわめて特殊で限定的な場で発生し、流通した言語変種といえる。「てにはドイツ語」による教科書も出されている。この言語変種をめぐって、日本医学界ではいかなる議論がなされたのか。「医学のナショナライズ」「ナショナリズムの医学」「日本医学」「大東亜医学」、敗戦後の「アメリカ医学」=アメリカ英語への転換、それは、近代日本語のあり方のみならず、学知のあり方までをもうかびあがらせるものである。

目次

序 章 近代日本と「てにはドイツ語」 1
 1 「てにはドイツ語」とはなにか 2
 2 専門的・特権的な「てにはドイツ語」 5
 3 医学とドイツ語――「上品ナ隠語」とその問題 11
 4 現在の医療従事者がつかうドイツ語起源の隠語 13
 5 近代日本語と「てには」――和辻哲郎の議論から 17
 6 本書の内容 19
  注 24

第一章 「てにはドイツ語」の発生 27
 1 はじめに 28
 2 ドイツ医学の導入 32
  2―1 東校の講義―通訳 32
  2―2 ドイツ語による教育へ 35
  2―3 日本人による教育へ 39
     ドイツ語での教育の意図 39/お雇い外国人の功績 43/学問の「ナショナライズ」とお雇い外国人からの脱却 44
 3 お雇い外国人からの脱却のあとに 48
  3―1 入沢達吉の回想―大沢謙二・高橋順太郎の場合 48
  3―2 田代義徳の回想 50
  3―3 志賀潔の回想―田口和美の場合 53
 4 日本語で医学教育はできたのか 55
  4―1 正則と変則、本科と別課 55
  4―2 帝国大学のそとで 59
     大阪医学校 59/仙台医学専門学校 62/済生学舎 63
 5 おわりに 66
  注 68

第二章 問題化する「てにはドイツ語」とエスペラント――一九一〇年代後半における医学界の言語問題 79
 1 はじめに 80
 2 大沢岳太郎・村田正太論争の概略 82
  2―1 発端―田代義徳「米国ニ於ケル医学会ノ状況」 82
  2―2 大沢岳太郎「医学と語学」―「日本の医学語」 83
  2―3 医学界批判の雑誌『刀圭新報』について 87
     『刀圭新報』とは 87/『刀圭新報』と言語問題 89
  2―4 村田正太「医学用語問題」―批判 92
     「国辱」としての「てにはドイツ語」 92/「属国的根性」と病床日誌問題 95/医学の「支那扶植」問題 100/穂積陳重への言及―nationalとinternationalのあいだ 103
  2―5 大沢岳太郎「医界用語問題」―反批判 105
  2―6 村田正太「前号所載『医界用語問題を読んで』大沢教授の明答を求む」―再批判 107
 3 『刀圭新報』の立場―医学界批判としての暉峻義等の援護 110
 4 村田正太におけるエスペラントの「発見」 122
  4―1 「医学用語問題」をふりかえって 122
  4―2 村田正太とエスペラント 126
  4―3 医学界とエスペラント 128
  4―4 『医人』とエスペラント 132
 5 おわりに 136
  注 139

第三章 浸透する「てにはドイツ語」 151
 1 はじめに 152
 2 印刷されない「てにはドイツ語」 155
  2―1 日本のローマ字社と「てにはドイツ語」―池田孝男『我国の医学語を如何すべきか』 155
  2―2 国語協会について 160
  2―3 「てにはドイツ語」の実例①―加茂正一『外来語について』 161
  2―4 「てにはドイツ語」の実例②―東京慈恵会医科大学の場合 165
 3 印刷される「てにはドイツ語」―熱い需要のもとで 168
  3―1 茂木蔵之助『新撰外科総論』『茂木外科総論』をめぐって 168
     一九二〇年初版 169/一九二六年改訂『茂木外科総論』 170/一九二八年『茂木外科総論』第三版 172
  3―2 小川蕃『簡明外科概論』と本名文任『新外科学』の「日独混合文」 174
  3―3 『茂木外科総論』の「転向」 177
     一九三九年『茂木外科総論』第一六版 177/ハンセン病の記述 181
 4 おわりに 183
  注 184

第四章 再問題化する「てにはドイツ語」――一九三〇年代から一九四〇年まで 187
 1 はじめに 188
 2 下瀬謙太郎「医学用語に関する世上の声」などから 190
  2―1 「てにはドイツ語」の再問題化 190
  2―2 木下益雄「医学上の言葉の改良を望む」 192
  2―3 宮川米次・佐竹清・西成甫・福田邦三・神部信雄――「国辱」か「万能」か 195
 3 国語愛護同盟医学部と『日本医事新報』 201
  3―1 国語愛護同盟医学部例会と「てにはドイツ語」 201
  3―2 『日本医事新報』について 209
  3―3 『日本医事新報』と「てにはドイツ語」 211
    「奴隷的医学教授用語テニハ独逸を排す」――一九三五年一一月 211/「国辱的テニハ独逸を排せよ」―一九三八年七月 214/愛国者パスツール 216
 4 一九四〇年の「てにはドイツ語」問題 219
  4―1 「「テニヲハ」独逸語の一掃を期せ」――一九四〇年二月 219
  4―2 「「テニヲハ」独逸語の再検討」――一九四〇年四月 221
  4―3 国語協会と「てにはドイツ語」――「てにはドイツ語の問題」一九四〇年七月 226
     専門学校以上の講義用語に関する委員会 226/南弘 228/下瀬謙太郎、および佳木斯医科大学・台北帝国大学 228/志賀潔 232/木下正中 233
  4―4 「医育刷新問題」座談会と「てにはドイツ語」問題 235
  4―5 日本語による医学について―緒方富雄 240
 5 おわりに 246
  注 248

第五章 医学用語統一への道と医師試験用語問題 257
 1 はじめに 258
 2 医学用語の統一へ 259
  2―1 医学界と国語愛護同盟での議論 259
  2―2 日本医学会総会の決議とその後のうごき 268
  2―3 敗戦による断絶 276
 3 日中医学用語統一論 278
  3―1 同文の問題 278
  3―2 同文よりもエスペラント 280
  3―3 エスペラントよりも日本語――中華民国医学会での使用言語問題 281
  3―4 「日支医学用語を共通にすることの可否」 284
 4 医師試験用語問題 288
  4―1 医術開業試験から医師試験へ 288
  4―2 医師試験規則――試験免除校の補完として 290
  4―3 医師試験の変容――受験者数の激減と外国人受験者の存在 294
  4―4 医師試験合格外国人の横顔―試験用語問題にふれつつ 296
  4―5 問題化する医師試験用語 299
  4―6 一九四五年の医師試験――歯科医師から医師へ 304
 5 おわりに 308
  注 309

第六章 「大東亜共栄圏」のなかの「てにはドイツ語」 319
 1 はじめに 320
 2 「国語国字統一問題とテニヲハ独逸語問題」――一九四一年三月 321
 3 第一一回日本医学会総会と「てにはドイツ語」問題――一九四二年 325
  3―1 「日本医学会総会迫る 外国語廃止問題解決されんか」 325
  3―2 「「テニオハ独逸語」に就て」―批判 330
  3―3 「頑迷なテニオハ独逸語論者」 333
 4 第一一回日本医学会総会の総括 334
  4―1 「日本医学会総会聴講記」 334
  4―2 「書く場合にも外国語を廃止せよ」 336
  4―3 日本医学会総会副会頭・宮川米次の総括 336
 5 大東亜医学へ 338
  5―1 宮川米次「大東亜医学に就て」・「大東亜建設と日本医学の使命」 338
  5―2 東亜医学会 342
     第一回東亜医学会 342/第二回東亜医学会 348/第三回東亜医学会 354
  5―3 「大東亜共栄圏」と医学用語 357
     「共栄圏の医学用語」――一九四三年二月 357/「テニオハ独逸語」を封ぜよ――一九四四年三月 359/「いわゆる「てにをは」ドイツ語の廃止に関する建議」――一九四四年九月 360
 6 おわりに 365
  注 366

終 章 「てにはドイツ語」の終焉――ドイツ語から英語へ 373
 1 はじめに 374
 2 敗戦をまたぐ『日本医事新報』 377
  2―1 敗戦直前の『日本医事新報』 377
  2―2 敗戦直後の『日本医事新報』――アメリカ医学と実用米国語 379
     一九四五年九月一五日号の論調 379/一九四五年一〇月一日号以降の論調 386
  2―3 「アメリカ式黄金万能主義」が「羨まし」くなるまで 388
     サムス「訓辞」などの掲載と『アメリカ教育使節団報告書』 388/「米国留学の準備」 390
  2―4 第一二回日本医学会総会 392
 3 敗戦後の『茂木外科総論』――「日独混合文」から「日英混合文」へ 398
  3―1 『茂木外科概論』その後――「てにはドイツ語」からの離脱 398
  3―2 『簡明外科総論』――「日英混合文」へ 401
 4 「言語的事大主義」という批判 406
 5 おわりに 411
  注 416

 あとがき 423
 人名索引 I
 事項索引 VIII

著者プロフィール

安田敏朗  (ヤスダトシアキ)  (著/文

現在 一橋大学大学院言語社会研究科教員。
[著書]
『植民地のなかの「国語学」』(三元社)、『帝国日本の言語編制』(世織書房、以上1997年)、『「言語」の構築』(三元社)、『〈国語〉と〈方言〉のあいだ』(人文書院、以上1999年)、『近代日本言語史再考』(2000年)、『国文学の時空』(2002年)、『脱「日本語」への視座』(2003年)、『日本語学は科学か』(以上、三元社、2004年)、『辞書の政治学―ことばの規範とはなにか』(平凡社)、『統合原理としての国語』(三元社)、『「国語」の近代史』(中公新書、以上2006年)、『国語審議会』(講談社現代新書、2007年)、『金田一京助と日本語の近代』(平凡社新書、2008年)、『「多言語社会」という幻想』(三元社)、『かれらの日本語』(人文書院、以上2011年)、『日本語学のまなざし』(三元社、2012年)、『漢字廃止の思想史』(平凡社、2016年)『近代日本言語史再考Ⅴ』(三元社)、『大槻文彦『言海』』(慶応義塾大学出版会、以上2018年)、『「国語」ってなんだろう』(清水書院、2020年)

上記内容は本書刊行時のものです。