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狂気のイメージ
シュニッツラー、デーブリーン、ツヴァイク
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年3月15日
- 書店発売日
- 2024年4月1日
- 登録日
- 2024年2月22日
- 最終更新日
- 2024年3月15日
書評掲載情報
2024-07-27 |
図書新聞
2024年8月3日/3650号 評者: 杉山有紀子 |
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紹介
20世紀初頭、狂気を称揚する表現主義的表象に疑いのまなざしを向けた作家・作品を読みなおし、「正常」と「異常」の境界を撹乱するオルタナティブの狂気イメージを探る。
目次
序章 ドイツ語文学における「狂気」表象の変遷―モダニズムの時代まで
1 はじめに
2 「理性主義」の時代
3 市民社会と狂気
4 ロマン主義の時代と二分法
5 リアリズムの時代における狂気モチーフの衰退
6 変質論と「人生の精神医学化」
7 再接近する芸術と狂気
8 モダニズムの時代とその後
第1章 表現主義文学とナチス・ドイツ―「精神疾患」イメージの類似性
1 はじめに―表現主義の狂気表象とナチス・ドイツ
2 精神医学の歴史とナチス・ドイツ
3 表現主義文学における狂気表象の検討
4 「表象=代理」批判を受けて
5 本書の試み―シュニッツラー、デーブリーン、ツヴァイク
第2章 アルトゥル・シュニッツラー『闇への逃走』における精神医学批判―「体系」へ逃走する精神医学
1 はじめに―シュニッツラーの精神医学批判とラインバッハ
2 先行研究の状況―「自由主義」対「決定論」の図式の限界
3 見逃されてきた転換点
4 ラインバッハ再考
5 おわりに―「普通の人」が狂うことの意味
第3章 シュニッツラーの医学テクストにおける「健康」と「病」―クラフト゠エビングとロンブローゾへの懐疑的見解
1 はじめに―精神医学と侵食される自由意志
2 アルトゥル・シュニッツラーと精神的な「健康」と「病」
3 クラフト゠エビング『性的精神病質の領域における新しい研究』に寄せた書評
4 ロンブローゾ『天才論』に寄せた書評
5 おわりに―病人は怠け者か
第4章 アルフレート・デーブリーン『たんぽぽ殺し』と精神医学―理解可能の「精神疾患者」と理解不可能の「健常者」
1 はじめに―「社会に貢献する健康な人間」のモデル
2 『たんぽぽ殺し』と表現主義的狂気観―「称揚」か「軽蔑」か?
3 『たんぽぽ殺し』成立の背景
4 『たんぽぽ殺し』読解
5 『ベルリン・アレクサンダー広場』との対比
6 おわりに―ホッヘのモデルの否定
第5章 シュテファン・ツヴァイクの枠物語とフロイトの精神分析―話を聴く語り手
1 はじめに―ツヴァイクの要らない「枠」とフロイトの精神分析
2 フロイトの勇気、フロイトの理論
3 類似と違い
4 主体性をめぐって
5 おわりに―剥奪される医師の特権と遍在する狂気
終章 無謬の解は存在するか
註
あとがき
参考文献一覧
人名索引
前書きなど
「マイノリティには特殊な才能がある」という言説を至るところで耳にする。発達障害の人には才能がある、LGBTQ+には才能がある。あるいは、心の病を抱える人は繊細だから他の人と違ったものの見方ができる。近年は、発達障害の人と「ギフテッド」と呼ばれる人が似た特徴を持っているという話もよく聞く。しかしそこには暴力が潜んでいないだろうか?
マイノリティ属性と才能を結びつける言説の源流の一つに、20世紀初頭のドイツ語文学がある。本書が扱うのはこの時代のドイツ語文学における「狂気」のイメージである。
上記内容は本書刊行時のものです。