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731部隊全史 常石 敬一(著/文) - 高文研
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731部隊全史 (ナナサンイチブタイゼンシ)

歴史・地理
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発行:高文研
四六判
縦195mm 横135mm 厚さ25mm
重さ 510g
408ページ
定価 3,500円+税
ISBN
978-4-87498-783-4   COPY
ISBN 13
9784874987834   COPY
ISBN 10h
4-87498-783-4   COPY
ISBN 10
4874987834   COPY
出版者記号
87498   COPY
Cコード
C0021  
0:一般 0:単行本 21:日本歴史
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2022年2月15日
書店発売日
登録日
2021年12月10日
最終更新日
2022年1月15日
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書評掲載情報

2022-03-12 朝日新聞  朝刊
評者: 戸邉秀明(東京経済大学教授・日本近現代史)
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紹介

本書は、「731部隊」研究の第一人者である著者が、その四〇余年にわたる調査・研究をまとめた集大成ともいえる1冊で、国内外の様々な史料の実証的な検証と、これまでの数十名におよぶ関係者への聞き取りをもとに731部隊・石井機関の全貌に迫ります。

「満州国」ハルビン郊外の平房に本部をおいた731部隊は、石井四郎が組織した機関、通称「石井機関」の一部で、石井機関は東京の陸軍軍医学校防疫研究室を中心に「軍」だけでなく「産・官・学」を取り込んだ1万数千人規模という巨大なものでした。
特に密接な関わりを持ったのは大学を中心とする医学界で、潤沢な研究費や戦役免除などのメリットがありました。

731部隊は1931年の満州事変を皮切りに勢力を拡大させていきますが、1942年の淅贛(せっかん)作戦で、大規模な細菌攻撃を実行するも失敗に終わりました。部隊は細菌兵器の実戦投入の困難性を認識しながらも止まることができず、そのまま敗戦を迎えます。
研究成果と引き換えに戦犯追及を逃れた731部隊と医学界の共犯関係は総括されないまま、戦後の医学界で影響力を持ち続けました。
近年の「安全保障技術研究推進制度」をめぐり、大学と軍事研究の関係が注目されるなか、戦争と科学の関係を改めて問いなおします。


序章 731部隊:特別な存在
1章 窮地の軍医学校:東郷部隊と石井式濾水機
2章 石井機関:組織者石井四郎
3章 1932年満州コレラ調査:石井機関の原点
4章 平房の本部建物:上意下達の研究体制
5章 「北向け南!」:大失態と新たな情報収集が必要に
6章 切り札PX:人体の兵器化
7章 敗戦:世界は冷戦へ
8章 負の遺産:石井機関と日本の医学界
9章 復活する「消えた細菌戦部隊」:輸血とBCG
終章 科学・技術・社会:歴史・現在・未来

目次

序章 七三一部隊:特別な存在
 敗戦――七三一部隊の日本への引き揚げ
 七三一部隊(石井機関)一五年史:一九三〇年―一九四五年
 軍学共同体
 総合研究(分業)の時代――社会が支える科学技術

1章 窮地の軍医学校:東郷部隊と石井式濾水機
 救世主? 石井四郎軍医
 外国出張の成果
 軍医学校と満州事変
 東郷部隊:情報管理――身内もあざむく秘密組織
 石井式「無菌」濾水機:マーケティング/情報操作

2章 石井機関、組織者石井四郎
 マンパワー(博士の数)と予算
 部隊の人集め:大御所への根回し
 部隊員と学位
 部隊を離れた研究者、とどまった研究者
 京大で部隊のための研究:田部井助教授
 人集め多様なルート
 予算獲得の奥の手

3章 一九三二年満州コレラ調査:石井機関の原点
 実地調査
 細菌謀略
 フォローアップ研究:コレラ菌五〇〇株の分析
 防研本館での仕事始め:毒力分析
 入院を偽装し、秘密保持

4章 本部建物:上意下達の研究体制
 東郷部隊での人体実験:フィージビリティスタディ
 平房:人体実験の地:分業の徹底
 人体実験リスト:石川技師が持ち帰った八、〇〇〇枚のスライド
 健康診断と人体の兵器化

5章 「北向け南!」:大失態と新たな情報収集が必要に
 「北向け南!」
 対ソ戦準備から日米開戦へ:情報収集の方針転換
 石井の更迭

6章 切り札PX:人体の兵器化
 細菌雨下戦法:無謀な企ての付けが回ってきた
 ノミの研究
 PX生産とその「研究」の実態
 「PXの効果略算法」
 石井の宣伝に乗せられたサイパン攻撃計画

7章 敗戦
 八月一五日まで
 八月一六日以降:米国による調査

8章 負の遺産:石井機関と日本の医学界
 軍医学校防研嘱託
 学位

9章 復活する「消えた細菌戦部隊」:輸血とBCG
 GHQ・薬事法
 凍結乾燥装置
 乾燥BCG:結核予防法の切り札?
 乾燥BCGは必要だったのか

終章 科学・技術・社会:歴史・現在・未来
 科学と技術と負の遺産
 医学界と石井機関
 当事者意識の欠如:専門家不在の国
 COVID-19と新たな茶番

資料

著者プロフィール

常石 敬一  (ツネイシケイイチ)  (著/文

1943年東京都生まれ。1966年、東京都立大学理学部物理学科卒業。専門は科学史。
『消えた細菌戦部隊』(海鳴社、1981年)から『医学者たちの組織犯罪』(朝日新聞社、1994年)のころまでは満州731部隊について調べていた。地下鉄サリン事件(1995年)以降、『毒』(講談社、1999年)、『毒物の魔力』(講談社+α新書、2001年)、『謀略のクロスロード 帝銀事件捜査と731部隊』(日本評論社、2002年)、『化学兵器犯罪』(講談社、2003年)までは化学兵器および毒物について考えた。
21世紀に入り、STS(科学・技術・社会)のケーススタディとして『原発とプルトニウム』(PHP新書、2010年)、『結核と日本人』(岩波書店、2011年)、『日本の原子力時代』(岩波書店、2015年)、『3.11が破壊したふたつの神話』(神奈川大学評論ブックレット、2015年)などで科学技術と人間との関係を考えてきた。

上記内容は本書刊行時のものです。